ことあるごとに「うわァァアアアーーーーーッ!」ってなって死んでしまう『私』のお話。
あるいは、主人公が自分の人生を雑に生きて死ぬ、その繰り返しの物語。いやもう一体なんと言えばいいやら、これ以外にはどうにも説明のしようがないというか、あらすじをまとめるのでさえ難渋します。なにしろニーチェで、それも永劫回帰で、いやタグに書いてあったからそのまま引き写しただけですけれど、でもそう簡単なものではないのはわかります。読後に検索したので。そうかニーチェ……ただ神を死なせただけじゃなかったんだなお前……。
というわけでたぶん「わからん」となっているところがいっぱいあると思うのですけれど、でも実はいうほどわかってないわけでもないというか、だって普通に読んでしまっているんですよ。ただ文字を読んだという意味でなくて、ちゃんとお話を、それも相当にくっきりはっきりした強度で。本当にわからん話はまずこんなスラスラとは読めないんですけど、一体なにがどうなっているのでしょう。
いやこれ本気で感想なりなんなり書こうとしたら、いろいろ前提となる技能や知識が必要になるような気がします。それこそ永劫回帰についてもそうですし、あとどうしても批評の側面が出てくる。とても無理なので呑気に個人的な趣味の話に徹したいのですけど、このお話の一体なにが好きかって、やっぱり終盤(というか最後)の展開だと思います。
最終話。ここだけ明らかに手触りが違うというか、手前である種のネタバレを済ませた後の、ようやくの本番というような。ただし状況は最悪も最悪、これまでどんどん悪化してきたそれが今更ながらに重くのしかかってきて、そこからの逆転の道は果たして見つかるのか否か。この際ですのできっぱり言ってしまうと、その結末が最高でした。拍子抜けするくらいに短い終わり方で、でもしっかりと確かなハッピーエンドの感触。最後一文なんかもう感動しました。説明するのは難しいけど、でもすごく素直な感動。
キャラクターが好きです。主人公も班長も。どこかふわふわと浮ついているのに、なんだかしっとりした人間味みたいなものがある。とても魅力的で、どうしても引きつけられてしまう。なんででしょう。主人公なんかはわりとあかん子というか、序盤から中盤ほとんどふざけ倒してるのに。むしろだからこそなのか、どうにも説明に困るのですけれど、でも魅力的。
あと終盤手前までの世界の壊れ方も好き。大事なものが少しずつ剥がれ落ちていくかのような、このなんとも言えない薄気味の悪さ。迫ってくる驚異の実態が大きすぎてわからないところ。どういうものを食べたらこんなものが書けるようになるやら、本当に気になって仕方ないです。やっぱり何度考えても説明のしようがない、不思議な魅力の詰まった作品でした。
ニーチェの永劫回帰を下敷きに、独自の回帰する世界を描き出した怪作。元となる永劫回帰を付け焼き刃でググった程度にしか理解できなかったので、あまりそっち側には踏み入らないように読んだ。今作では「志々見九愛」がエピソードごとに異なるシチュエーションで、時には古典的な死亡フラグをなぞりながら死亡するという展開を繰り返しながら、『副作用のある』云々と説明される不可思議な変化に巻き込まれていく。
永劫回帰の果てにあった場所は、彼・彼女たちにいかなる結末を示したのだろうか?
まあぶっちゃけニーチェがとか言われると僕には少々難解すぎた部分もあったので、ニーチェを勉強し直してきます。