戦士たち 3
「口数が減ったな爺」
「……油断してっと足元すくわれんぜ」
球体や粘菌をくぐり抜け、やり過ごし、気づけば他の戦士たちの姿はもう周りに見えなくなっていた。
老若の戦士も五体満足とは言い難い。
イクスにはすでに両腕がなく、老戦士は腹に孔を穿たれた。裂傷と擦傷にまみれて彼らは前進する。
予感のある方へ、運命が待つと信じる方へ。
重い体を前へ運びながら、イクスは問う。
「いったいあんたは、何を企んでいた?」
けっ、と老戦士は乾いた笑いを漏らした。
「オレたちの、目的なんぞ、一つしか、ねぇだろうが」
「だったら、俺に絡んでくる必要もなかった」
肩を振って勢いをつけ、一歩一歩、地面に刺すようにしてイクスは歩みを進める。道は管状となり、登り坂となり、どこにも分岐しない。
「いつの間にかあんたの思惑通りに動かされるのに、腹が立つ」
「けっけっ。思惑だの、企みだの、そんな大した話じゃ、ねえ。後続の方が、生き残れそうだから、一人めぼしいのを遅れさせたっていう、それだけよ」
息も絶え絶えに老戦士が応える。
「──礼は言わないぞ」
イクスが足をとめ、はるか眼下を見下ろす。
「そういう台詞は……終わってから言うもんだ」
老戦士のひゅうひゅうとした呼吸の音が、ぜるぜると濁った音に変わる。
口から血の塊を吐いて、老戦士も足を止め、眼下を覗く。
はるかに足元、一粒の泡のような「ミヤ」を背景に漂う黒い点がある。その点へ、老戦士は低く呟いた。
「さすがだよ、イグレーゴ」
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