蘭の君 3

 なんてじれったく、もどかしいのだろう。

 

 ミヤから天を仰いでも、ただ薄紅の空が見えるばかりだ。

 どこで何が起きているのか、私には伺い知る術がない。

 可能性だけあっても、それに近づく手段がないならいっそ運命は訪れないと誰かに告げてもらいたい。

 そうすれば、こんな気持ちにはならず、ただ静かに紅い奔流に流される時を待つだけでよいのに。


 ふとため息が漏れる。

 その時、天の門から黒い滴が尾を引いて零れた。

 私は思わず立ち上がる。


 ──来た!


 鋭くきりみ回転しながら落ちてくる黒い流星。


 私の運命が、来た。

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