「水を張っておいてください。野菜を洗うので」


「うん」


「お肉も、俺が切りますね。出して置いておいてください」


「大丈夫なの、彼」


「さっきの子ですか?」


「私とあなたを見て、縮みあがってたけど」


「大丈夫だと思いますよ」


「根拠。あと、野菜はたくさん食べたい」


「わかりました。たくさん切りますね。さっきドアを開けたとき」


「うん」


「彼、俺の気配に気付いて一瞬早く防御姿勢をとりました」


「うん?」


「みどころがあります」


「いや、防音設備が微妙なんじゃ」


「いいえ。扉を開けた瞬間に気配を察知して、飛んだんです。俺は気配消してたのに」


「レーダーみたいね」


「ええ。だからこそ、地方を回るのに良い人材です」


「えいっ」


「ちょっと。料理中」


「こういうことしても、外には気付かれない?」


「そのための防音設備でしょうに」


「えいっ。えいっ」


「ストップ。野菜に集中させてください」


「ラーメンできあがるまで。いいでしょ?」


「よくないです」


「おいしい」


「もうそれ以上食べちゃだめです。つまみ食い禁止」


「肉うまい。んしょ、と」


「包丁ないからって気合いで剥がすのやめてください。裂かれてびりびりになってますよ叉焼が」


「わたしは虎ですから。えいっ」


「んもう」

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刑事の仕事 (「グルーヴのあとで」スピンオフ) 春嵐 @aiot3110

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