第5話

「離してよ!」


私は抵抗したが、男の力には全く歯が立たず、びくともしなかった。


リーダー格の男はニヤニヤと私たちを眺めていた。


「こんなにお前のことを好きになってくれるような奴がいてくれてよかったなあ?」


肝心の彼は、抵抗する気もなく、男の腕の中でぐったりとうなだれていた。


「見ててムカつくんだよ、お前ら。」


男の顔が真顔になった。

私は今からされることを想像して、胸が高なった。

抵抗はしている。しかし本気ではない。

期待しているからだ。彼がかわいそうな目に遭うことを。そしてそんなときの彼の様子を、眺めることができることを。


「やれ。」

「やめて!」


彼は羽交い締めにしていた男に正面を向かされると、顔を一発殴った。


彼は衝撃で後ろに転び、壁と床に体を打ちつけた。


殴られたほおを押さえて、怯えたように男を見上げている。


そんな彼を今度は男は踏みつけた。


「おら!」

「ぐっ、、」


情けない声を出しながら彼は床を転がった。


「やめて、お願い!何でもするから!私何でもするから!」


我ながら迫真の演技だった。不思議なことに自然と涙が目からこぼれた。


「おいおい、そんなにこいつのこと好きなのかよ。」

「本当に気持ち悪いな、お前ら。」


男たちの私をみる目が変わった。


御馳走を前にした動物のような

おもちゃを前にした子どものような


今にも舌舐めずりの音が聞こえてきそうだった。


私はそれを感じて、心臓が早鐘のように打ち、


そして下半身から溢れてくるのがわかった。

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憐愛 @submissive_takashi73

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