エピローグ

「カミトさん、アイシスさ~ん‼」


 懐かしのマモ村。俺たちはこの村に様々な思い出がある。しかし、先の事件によりこの村は以前の様な活気は失っていた。

 家々は燃え、折角イシスが頑張って設置した丸太の柵も全て燃えてしまった。


 でも、それもこれも今ではいい思い出だ。


「カミトさんってば、聞いてる!?」

「カミト、トトちゃんが呼んでるよ?」

「ああ、すまん。いろいろなことを思い返していた」


 まさかこの村全員が生きているとは誰が予想できただろうか。


 なんでも、きっかけは俺が何気なしに呟いた『地下室』という単語だった。


 俺がこの村から去った後、トトはもしもの時に備えてダリさんを説得し、村の地下に巨大な地下室を作っていたそうだ。

 そして、運命のあの日遠目にドラゴンの姿を見るや否や全員で急いで地下室に隠れたらしい。幸いにも、地下室には食料の保管場所にもしており暫く食べるのには困らなかったと。


「どう? トト頑張ったでしょ?」

「ああ、本当によくやったよ」


 トトが地下室を作ってなかったらどうなっていたのか、考えただけでもゾッとする。



 こんこんと巨大なハンマーで家を組み立てる。なんでも釘無で家を建てることが出来るらしい。勿論これらは全て葬り袋で町から運搬したものだ。以前の民家よりも立派でしっかりした作りになっている……と思う。

 俺は貯蓄していた資産を用いてマモ村を支援することに決めた。勿論、イシス、いや、アイシスも了承済みだ。

 皆にはイシスの妹であると説明している。いつか、本当の話す機会があるかもしれないが、その時が来るまでイシスの話は封印だ。


「ほら、カミトさんは主役なんだから早く早く」

「ちょっと、トト、そんなに引っ張るなって」


 俺は牛の様にドナドナとトトに村の広場まで連行された。


「えー、皆さん本日はお日柄も良く――」

「カンパーイ」

「えっ、ちょっ……」

「「カンパーイ」」


 今日は、町の防壁完成記念日だ。今回は木ではない。燃やされる心配のない石垣で出来ている。それで、折角の記念日だから出資した俺に挨拶をという事だったんだけども……。


「折角、寝ないで考えたんだけど酷くないか?」

「だって、カミトのそれ長いじゃないか」

「ちょっと、アイシス、イシスの時の口調が出てるぞ」

「あっ……カミトのそれ長すぎなんだもん」

「いや、2回も言わなくても……」


 いや、別に良いんだよ? 皆が楽しそうにしているしね? 悲しくなんてないさ。


「それにしても、未だに教えて貰ってないんだけど、カミトのギフトって結局何だったの?」

「え、それってやっぱり言わないといけない?」

「私は教えたもん」


 アイシスのギフトは『男にキスされるまで、めちゃ身体能力が上がる。正し、性別は強制的に男になる』だったらしい。正直なんじゃそりゃあと言いたいギフトだ。


「でも、新しいギフトは教えてくれないじゃないか」

「うう……それはノーコメントで」


 アイシスに戻ってからは、別のギフトが付与されたらしい。なんせ元々のギフトが『男にキスされるまで』という条件付きだ。つまり、一度女性に戻ったらもうこのギフトは用済みということだ。

 折角だから、どんなギフトが付与されたのか気になったのだけども、一向に教えてくれなかった。


「ほ、ほら、私は良いからカミトのギフト教えてよ」

「もう、仕方がないな。でも、先に行っておくぞ? 俺が望んだわけじゃないからな? あの飲んだくれの女神野郎のせいでこんな意味不明なギフトが与えられたんだからな?」

「それは何回も聞いたよ~」

「まあ、落ち着けって。俺のギフトはだな――――」


『男とキスをすると数分の間能力がめっちゃ上がる!! 濃厚であれば尚よし!!』

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キスから始まる冒険譚~ギフトというより最早呪い~ @NurseShop

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