03.(終)

「あんたさあ、貴重な現世での休みの一日をさあ、写真ってさあ」


「ごめんって」


「好きなのは分かるけどさあ、こんな公園でさあ」


「いやそれがね。凄いんだって。すごいの。ほんとに」


「嬉しそうね」


「俺たちのことを見える人がいてさ、撮っていいって言ってくれて。見てみて」


「芝生と空ばっかじゃない。こんなの撮って何が面白いんだか」


「いや下のほう。えっと、これこれ」


「は?」


「え?」


超有名山岳画家ここのえたいざんじゃない。ちょっと。どこよ」


「うわ乗り出さないで重い」


「カメラ貸して」


「どうぞ」


「どうやってズームするの」


「ここのひねりを、こうやって、こうして」


「あっいた。しかも隣。隣はまさか」


「奥さんじゃないかな?」


世界的有名踊子Yuじゃないの。うわあちょっと。私も呼びなさいよ」


「どれどれ。あ、ほんとだ。踊ってるね」


「踊ってる」


「あ、ちょっと。これだめなやつだ。成仏しちゃう。見るのやめて」


「いやよ。見ないよりは、Yuのダンスを見てしぬほうを私は選ぶわ」


「いやいやいや。天使が成仏しちゃいかんでしょ。魂を浄化する側が浄化されちゃいかんですよ」


「うわすっご。すっごいきれい。うわすっごい」


「ほら。ちょっと。魂融けはじめてるよっ。天に昇っちゃうから。おわりおわり」


「あやうく逝くところだったわ」


「僕も見る。うわっ。うわあ」


「ちょっと。見すぎると逝くわよ」


「逝きそうなカメラアングルですよ奥さん」


「撮っちゃだめよ。許可ない撮影ダメ絶対」


「いえす、まむ」




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逝きそうなカメラアングル 春嵐 @aiot3110

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