S2 第四話
「なぁ、お前は実際にどうなりたいんだ?」
「どうって、何が?」
「言わなくてもわかってんだろ。」
「......まぁ」
いつだったか、一輝に言われたのをふと思い出す。
俺が沙月姉ちゃんを好きなこと、家族の域を超えて一人の女性として好きなこと。
誰に言うわけにもいかなくて、一人悩んで、解決策なんてものもなくて腐っていたいたときに普段は『気遣い』のきの字もない一輝が目ざとく気づいてどうとでもなれと思って、思いを一輝にだけ伝えたことがある。
多分、常人だったら、というか普通の価値観や倫理観をもっている人だったら真っ先に俺の思いに終止符を打ちに来たと思う。
ただこいつだけは違ったのだ。
一輝にしか打ち明けていないが、そう思える。
「マジか、じゃあ毎日大変だなおい!」
「幸せか?惚気か?」
なんの打算や嫌味がなく、笑顔で言われた瞬間なにか救われたような気がしたのだって覚えてる。
いつもは、のほほんとしていて赤点常習犯で呼び出し常習犯のこいつがなぜかこの習慣だけ、だれよりも頼りがいのあるやつにさえ見えた。
「てかあれか、それで悩みまくって最近荒れてたのかよ」
「別に荒れてねぇし」
「よくいうわ」
「なんもねぇだろ」
「いや、佐奈とかお前と話した後涙目だったし、授業とかひでぇぞ」
「,,,,,しらね」
ぶっちゃけ悩みだしてからの記憶は曖昧だし、対応が荒かったのは何となく自覚はあるが記憶にない。
細かく気を配る余裕すらなかったのだから。
ただそれでも、この一輝の言葉はすべて真実として受け取ることはできた。
「佐奈にも謝んないとな」
「そうだな。間違いなくデザートか飯はおごりだろうな」
「...今月厳しいんだけどな」
そういえばRINEで毎日佐奈から連絡が来ていた気はする。
毎回無料のスタンプで、大丈夫とかOKとかそんな感じで返してた気もするし。
毎日雑に返しても佐奈が気を使ってくれていたことは冷静になればいくらでもわかる。
「俺、屑じゃん」
「よくわかったな屑。 罰で俺の宿題任せた。」
「いや屑かよ」
「あははは」
「ふふっ」
こんな頃合いの屑が俺を助けたのだ。
そして俺はそんな屑で馬鹿でお人よしの質問に、
「幸せにしたいって思ったんだよ。誰かの力じゃなくて」
「俺の見えるところで、俺の力でさ」」
そう告げたんだ。
......................
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「ねぇ遊太? だいじょ?」
「ああ、大丈夫だよ沙月ねぇちゃん。 ちょっと考え事」
「ふーん、ならいいけど。 てか悩んだらちゃんと言ってよね」
「大丈夫だし、まぁその時は言うね」
「うん!」
「てか、遊太ビックサンダー行けるって! 待ちなしだよ!」
「マジか!?」
「うん! 昔は遊太と乗れなかったしね」
「何年前だし」
「うーん、だいぶ昔!」
うれしそうにポップコーンの容器を片手に抱え俺の手を引く沙月ねぇに惹かれアトラクションに引かれる。
この瞬間が無限に続いてくれればいいのになんて思いながら。
「あ、次はコーヒーカップだから!」
「,,,,,,,,はい」
がんばれよ、俺の体。
義母に全力で恋をする!! 紫煙 @sienn
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