第8話

「ほぉ…」


「っ…?!」


王様が試すような視線を父に投げかけた瞬間、その場の雰囲気はすぐにピリッとした緊張感をまとったものになった。俺はその場に縛られた様に動けなくなったが、父はそれでも王様から目をそらさずにまっすぐと見つめた。


「父上、その様に威嚇してはモリスにおびえられますよ。」


はぁ…と王子がため息をつくと、俺の目の前に王様がグイッと近寄ってきた。先ほどのような恐怖はないが、圧が凄い。


「それは困る。我はモリスを甥っ子の様に思っておるからの。モリス、我が怖いか?」


王様がしょんぼりとした様子でそう聞いてくるので、俺はぶんぶん首を横に振りながら「滅相もございません!」と必死に否定した。その様子を見てか、王様は「そうか」とまた例のファストフード店の看板人物のような顔をした。


口が滑っても、ちょっとだけ怖かったなんて言えない。


「そうそう。それで本題なのだがな。そなたの息子、モリスにこの王子の付き人をしてもらうと言う事を伝えるのを忘れていたのを思い出したのでな。」


「…それは決定事項ですか?」


父はおおきなため息を吐くと、王様は悪い顔をして父の耳にそっと近づき、ボソボソとこちらには聞こえない音量でつぶやいた。それを聞いた父はぎゅっと唇をかみしめた後に諦めたような顔をして、俺にとても泣きそうな、申し訳なさそうな顔をしながら「ごめん」とだけつぶやいた。


「???」


どうしてごめんと謝られたのだろう。付き人ってそんなに恐ろしい仕事なのか?


俺が首をかしげていると、王子が俺の頭にポンポンと手を置いて素晴らしい笑みでこういった。


「俺と一緒に頑張ろうね」


いや待ってくれ。何を?何を頑張るっていうんだ?怖い。満面の笑み、怖い。俺は歩けるようになるのがかなり遅く(絶対それ以前に変な特訓とかして何かしらの恐怖があったのではないかと考えている)3歳にしてようやく歩けるようになったのだ。故に今俺は5歳である。そんなまだかわいい時期の子供に何をやらせようというのだこの人たちは。


恐る恐る父の方を見ると彼は、もうあきらめたような笑みでうなずいた。


え?付き人って何なんだよ???!!!


最後の頼みの綱の王子に視線を投げかけると、美しい笑顔を見せてくれた。


いいなぁ…俺って一回もモテ期来た事ねーんだよな。もてる男ってのはこういう事かって



………そうじゃない!

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乙女ゲームにてんせ…あれ?脇役でした…! @ac51073zero

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