第7話
父は隣で大きなため息をついているが、モリスは心臓が口から飛び出そうなほどに緊張し、頭は真っ白になった。
ため息は、不敬罪か!?そのそも、不敬罪なんてあるんだっけ?
体が硬直しているモリスと、分かりやすくあきれている父をよそに、国王はポンと手をたたくと、「そうであった」とつぶやいた。同時にこちらに足音が近づいてくるのが聞こえた。
「顔を上げよ二人とも。」
そういわれて、恐る恐る顔を上げると、そこにはひぇと声が出そうなほど威厳のオーラを放った国王が…?
モリスは顔を上げた瞬間に固まった。外見がいかにもあのケン〇キーおじさんに似ているのだ。そんな国王の隣には頭の後ろで手を組みながらへにゃッとした笑みを浮かべたこの国の第二王子クィンリーがいた。この国では王家は民衆からの支持がとても高く、いわゆる王家のメンバーの似顔絵や刺しゅうなどが飛ぶ様に売れるのだ。故にこの人がクィンリー王子だと断言できるのだが…モリスは心の中で何か引っかかるような感覚に眉を寄せた。なんなんだ、このもやもやは?
「王様、今日は視察に出かけている予定では?」
父がちらりと顔を上げて、王様を見上げると、王様は愉快そうに声を立てて笑った。その声にハッとして姿勢を正す。いけない。王族の前で気を抜くなんて。
「そんなに嫌な顔をするでない。なに、視察は別の者に行かせたよ。そなたが珍しく貴族として王城に来るというのでな。」
王様はしてやったりとでも言いたそうな顔をし、父は顔をしかめた。そんな様子を呆然としながら見つめていると、王子がこちらに手を差し伸べてきてくれた。
「さ、立ちなよ。話もあるしさ。」
俺はその手を断るのもどうかと思い、彼の手を握りつつ体重をかけないようにしながらまっすぐに立ち上がった。
すると、王子はなぜだかうれしそうに微笑んでから手を優雅に離した。そのまま右手を胸に持っていき、軽くお辞儀をしてにこりと微笑んだ。
後ろにばらとかせおってそうだな…なんて思いながら見ていたので
「初めまして、私は第二王子クィンリー・フォン・エーゼルハート。会えてうれしいよ。モリス・ヨーステン」
俺よりも少ししか年上に見えないのに、所作がとてもきれいで思わず俺はほぇーと声を出していた。俺も彼を見習って、右手を胸に当て、軽くお辞儀をしてからにこっと微笑む。
「お会いできて光栄です、クィンリー王子。僕はモリス・ヨーステンです。」
父は俺があいさつし終わったのを確認すると、軽く王子に挨拶を済ませてから、王様をにらみながらこう告げた。
「それで?本来の目的は何なんです?」
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