我輩は猫にゃのである

@smile_cheese

我輩は猫にゃのである

ある朝、目が覚めると、私は猫になっていた。

私の名前は『東村芽依』。

みんなからは『めぃめぃ』と呼ばれている。

どうやら夢ではないようだけど、なぜこんなことになったのか。

分からないことだらけだけど、悩んでいても答えは出ない。

幸いなことに今は独り暮らしだ。

いつまでこのままなのか分からないし、せっかくなら猫の姿を楽しもう。

私は少し開いていた部屋の窓から勢いよく外に飛び出した。


あれから数日、猫になって分かったことがたくさんある。

人間は実に不思議な生き物だ。

そんなに急いでみんなどこにいくんだろう。

時々は立ち止まって毛繕いでもしたらどうなの?

そうか、人間には毛繕いするほどのモフモフした毛がないんだった。

だとしても、ひなたぼっこくらいすればいいのに。

猫の方が自由気ままで自分には合っているのかも、と私は思い始めていた。

もちろん、その分危険なことも多い。

他の猫や動物たちに追い回されるのはしょっちゅうだし、車や自転車が突然目の前に現れたりもする。

いっそのこと人間と猫の姿を自由に切り替えられたらいいのに。

まだ猫の姿を解く方法すら分かってはいないけれど。


そんなある日、一人の少女が私に話しかけてきた。


??「あら、可愛らしい猫さん。あなたのお名前は何ていうの?」


私は猫の言葉で「めぃめぃよ」と答えた。


??「めぃめぃちゃんっていうのね。可愛い名前」


私はひどく驚いた。

この少女は猫の言葉が分かるのだ。

それどころか、他の動物やぬいぐるみとも会話が出来るという。

『陽菜』という名前の少女は自分のことを『魔法少女』だと言っていた。

聞くところによると30日後、地球に隕石が衝突するらしい。

陽菜はその隕石を止めるために魔法の力を与えられたのだそうだ。

私が言うのもなんだけど、魔法なんて本当にあるのかな?

とにかく、この地球には不思議なことがいっぱいだ。


陽菜「あ、そうだ!」


陽菜は何かを思い付いたようで、私に向かって持っていた杖を振ってみせた 。

一瞬、眩しい光に包まれて私は思わず目を閉じた。

再び目を開くと、私は人間の姿に戻っていた。


陽菜「こっちの姿の方がもっと可愛いね」


陽菜はにこりと笑うとそのまま立ち去っていった。

もう猫の姿になることはないのだろう。

少し残念な気持ちもあったけど、陽菜の去り際の台詞が嬉しかったからこれで良かったんだなと思った。


家に帰る途中、友人の優佳とばったり会った。


優佳「めぃめぃじゃないの。どうしたのよ、最近ちっとも連絡くれなかったじゃない」


芽依「へへへ…ごめんね」


少しの沈黙の後、私は優佳にあることを告げた。


芽依「あのな、驚かんといてな。うち、実は猫やねん」


優佳「うん。知ってる」


芽依「えへへ」


優佳「実はね、私も…」


東村芽依は猫である。

この地球には不思議なことがいっぱいだ。



完。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我輩は猫にゃのである @smile_cheese

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る