第9話活動開始(1)

「やっと終わったー」


今日やっていたのは、レポート作成だよ?


なんか急に教授がさ、今週末までにこれやってこいって言ってきてさぁ、、、


え?今週末までなら楽勝だしなんで今までやってこなかったのって?


そこ聞いちゃう?

普通はさ、お疲れ様!とか言って私を褒め称える所じゃないの?


だって、その課題命じられたの水曜日だよ?


いやぁ、酷いよね、資料を自分で集めて、まとめてレポート作成って、3日で出来るものじゃないでしょ、普通はさ、、、


それに、他にもやる事があったしで今日まで私は講義をサボって同好会もサボって何もかもをそっちのけにして……


あ、お風呂と食事はちゃんと摂ったよ?

流石にそれは外せない外せない。


とそんな感じでレポート作成に取り組んでたのがこの隣にもう1人居るんだけど……


「おーい、七くん!寝ちゃダメだよー明日まで、っていうか今日中に出さないとじゃん!寝てても良いのー?私はもう終わっちゃったよー」


どうやら、その隣にいる人が、あろうことが寝ちゃってるんだよねぇ、どれくらい進んでるのかも、突っ伏しちゃって分からない。


「んんんん、あー……」


私が精一杯とんとん、って肩を叩くと、ようやくななくんは気付いたみたい。


「な、七くん?」


ああ、寝ぼけてるのかなぁって、心配そうに聞く私。


「なんだよ奈帆、終わったってか?俺もうとっくに終わってて奈帆を待ってたんだけど……ほい」


寝起きだから不機嫌そうでもあるななくん、快眠を邪魔された当て付けか、投げるようにそのファイルに挟まれたレポートを渡してきた。


よだれは、、、もちろんついていない。


「うーわー本当に終わっちゃてるじゃん……なーんだそういう事だったのかー起こして損しちゃったよ」


結構さ、「あっやべ、終わってねーや、奈帆、手伝ってくれ~」


っていうのを期待していた私は、早くも終わらせていたななくんを凄いなぁって、感心する反面、終わってしまっているという事実を、少し残念に思う私がいる。なんでだろうなぁ……


「別に損ってわけでもねーだろ、今何時だと思ってんだよ……」


そう言うと、ななくんは時間を知るため、腕時計を見ようとするけど、どうやら寝る前にはずしていたのを忘れていたらしい。そんなあたふたしているななくんをみながら私はさらっとその時刻を教えてあげる。


「二時だよ?」


「だろ、こんまま俺のこと起こさなかったら流石にまずいでしょー」


ななくんは、まあそんなくらいか、みたいな平気な感じで言ってくるけど、心配しているのは別の方みたいだ。


まあ、それは分かるよね?男女が深夜2時まで一緒にいるなんて……


と、いうのはこの大学のカフェテリアなんだけど、もちろん時間が時間で私達2人以外に誰もいないんだよねぇ。


あ、そうそう?みんなしってる?知らないよねぇ。


今寝てる時にこっそり七くんの、寝顔見たんだけど、結構可愛いんだよ?


口調とか態度とかからすると結構よく居る"ウェイ系"の人柄を想像した人が多いとは思うけど、寝顔は意外と童顔っていう、なんともしっくり来ないギャップだよね、口元を少しとんがらせていたりするのも、意外と嫌いじゃない。


まあ、この寝顔補正の掛かった七くんの顔でさえも霞んで見えちゃう程にかっこいい先輩っていうのがこの私達の所属する同好会に居るわけなんだけど。


あ、ななくんは可愛いんだった……。


何とも先輩は私たち以外の女子とは全然関わり持ってないらしいんだよね。


何でだろうね、このポスト高校生の人生最後の青春、もとい人生の夏休みを無駄にせんとばかりのこの態度に私は誠に遺憾であります!


なんてキャラ崩壊を少しだけ起こさせながらもみんなはふと思ってほしい、


なぜ2人きりなのか、という事だ。


七くんと2人きりなのに私ったら急に先輩の事話してるんだよー?


全く私ってどうしたいのかなぁ。


って思って居る場合ではないよね?説明しなくちゃね!


原因は簡単で、わたし達は2人ともそのレポートの課題に追い詰められていたんだよね。


噂によると教授が言い忘れていて、通達が遅れたらしいんだけど、だから他の咲姫ちゃんとか優ちゃんとか奏くんは余裕を持って終わっていたらしいんだよね。


じゃあ、その人たちに資料とか見せてもらえって?


べ、べつに、そんなの思い付かなかったわけじゃないんだよ?本当だよ?


まあ案の定、普通に考えて間に合わないわけだよ。

他にも私と同じ講義を受けて居る人もたくさん居るんだけど、その大半は諦めちゃってる感じなんだよね。

だから私はそのことを響先輩に話して諦めよっかなーみたいな雰囲気でいると、


「それはやめた方がいい」って言ってきたの。


「去年のことを考えるとここで無闇に点数を落とすのは良くない」って言うんだよ。

なんか私達を確かめている、みたいな感じらしいんだよね。だから「ここで提出しないのは後々に響いてくるんじゃないのか」って先輩が言ったわけですよ。


だからこうやって時折2人で励ましあいながらここまでやってきたって言うわけです!



「あーそっかーこのままだと七くんずっと寝っぱなしになって翌朝みんなに発見されて恥ずかい思いしちゃうもんね」


「まあ、それもあるな……」


そう言う私に、ななくんはどうやら複雑な心境のようですねぇ。


でも、こういう時にお構い無しに言えてしまうのが私の強み!


「そう言うことなら今こうやって起こした私はファインプレーってわけだね、今度お礼してよ!」


「てかなんかお腹すいたから今おごって!」


ななくんが寝ぼけてなにも言えない間に、わたしは勝手に話をしていく。


先手必勝とはこの事です。不意打ちでは、ありませんよ?


「ったくめんどくせーなー、まあいいよ俺も少しお腹すいたし、どっかコンビニでも寄るか?」


呆れながらそういうななんくんです。


「あー、それも良いんだけどなんか急にハンバーグ食べたくなってきたなー、焼きたての!」


コンビニで済ませるわけなくない?奢りだよ?


「……ここぞとばかりにちと金の弾みそうなもんね要求してきやがって、絶対普段そんなもの急に食べたくなったりしないだろ……」


いや、実は結構あったりする。さきちゃんを急に読んではファミレスにいくのは毎度のこと。


そのとき、あんまりお腹の空いていないさきちゃんは、サラダだけ頼んで私の話を聞いていたりしてくれる。


「そんなことないよー、いつもだよー」


「お前の腹は何でできてんだよ、ソーセージでも作れんじゃねえのか?」


ぐぅっ、遠回しに豚女って言われましたっ!


ブヒッ


「何急に変なこと言っちゃってるの?頭おかしいんじゃないの、てかレディにお腹のこと聞くとかちょっとデリカシー無くない?それ愚問だよ?」




「なに、ソーセージ作れるか作れないかがデリカシーに関わってくるとか、ここどこの国だよ……しかもソーセージは腸だぞ?深夜にそんなもん食っても大丈夫なのか、って意味でも聞いてるのに、聞いたことねえよそんな国、普通に工場で作ってるだろ」


「分かったよ、七くんそこまで私のこと心配してくれてるんだね」


「してねえよ、いやここはしてるな」


「せっかく七くんが心配してくれたんだし、ハンバーグはあきらめるよ!」


「お、分かって……」


「だから健康面でも優れたうなぎにしてあげるよ!」


私は満面の笑みを向けてななくんにそう言いました!


「ねえな、うん、最初から分かってた、奈帆ってこう言うやつだもんなー、まああとが怖いからうなぎで我慢しますよ、奈帆さーん、喜んでうなぎにさせていただきますはい、お願いします」


ななくんは、何かを恐れ悟ったように、この事を受け入れてくれた。


よく分かっている、もし断ったらこのあとはブラックパールをお願いしていた。


もはや、食べ物じゃないけど。


「よろしいね!」


「あ、でも今やってねーぞ」


ふと、ななくんは気付いたように言ってくる。


「あ、確かに……そして」


な、なんと、今は深夜2時でした……。


「今奈帆は」


「お腹が空いている」


『よって、24時間営業のファミレスにてハンバーグで決定!』


阿吽の呼吸で私たちは決めたのでした。


ちなみに、うなぎはこんど絶対に食べさせてもらう。


************


それから私とななくんはぴょこぴょこ歩いてファミレスに向かった。

大学の近くは当たり前だけど、飲食店もかなりの数を揃えていて、選ばなければファミレスもそのなかにある。


「着いたねー、七くんは何にするの?」


私はまず、ななくんが何を注文するのかを聞いてみる。


「あー俺?小エビサラダで良いやー」


意外とななくんはヘルシーで、しかも安いものを選んだ。

なるほど、こうすることで私に高級なものを注文するハードルを高くする狙いなのかもしれない。


「そう?なら私はこれにするよ、国産黒毛和牛のビーフハンバーグL」


まあ、これまでの流れのうえで、わたしがこれを頼むのはもはや、必然的だね。


「うわー、こうやって1番高いやつ選んでくるんだね、君は遠慮って知ってる?」


「知ってる知ってる、だからこうやって1番高いのを選んであげてるんだよ、私は本当なら自分の両親に従って安いものを注文したい気持ちでいっぱいなんだけど、でもそれだと安いものを奢ってしまったっていう罪悪感に苦しまれてしまうななくんを思いやって、に遠慮してたかいの選んでるんだよ、自分よりも相手の痛みを理解し優先するって本当に私良い子でしょ?」


ななくんはそれを聞いて、深いため息をつく。


「此の期に及んでよくそんなん言えるな、本当に凄いですわなに、頭お花畑なの?てかその言い訳考えたの誰だよ、最強の社交辞令の応用方法じゃん、天才かよ」


「私です」


「ごめん、前言撤回だわ最低の……」


「男に二言は?」


「ない」


「でしょ、つまりはそういうこと」


「何俺釣られて"ない"なんて言ってんの俺、てか奈帆、お前は天才釣り師かよ、そっち系の学部行ってそういうことの博士になって研究した方がいい結果出せると思うぞ」


つりとは、ここではどう意味なのでしょうか?


「助言ありがとう!でも私はこうやってみんなと居られることが幸せかなー」


意外とこれが本心だったりする。


「人に高いの奢らせて、それで苦しむ俺の姿をみて喜ぶような奴と一緒居られて人生最悪ですわ」


「そんなこと言わずにー、ほらほらきたよ!サラダ」


このサラダには小エビなんてのっていない。


「わーうまそうー、てかそれお前のかよ、ちゃっかりサラダまで注文しやがって……」


「すみません、俺の頼んだ小エビのサラダは……?」


「えーと、お客様ご注文されましたでしょうか?、これが伝票でございます」


「……あーはい分かりましたこっちの間違いですすみませんでしたー」


「いえ、こちらこそごゆっくりお過ごしください」


店員の定型文を耳に流しながら、ななくんの方をじっと見つめる私。


「てへぺろ」


声に出すてへぺろ、私がやると意外と可愛いのかもしれない。


「何がてへぺろだ、ふざけんなよ俺のサラダまで食いやがって……」


「そんなに食べたかったの?仕方ないなー、あーん!」


私はフォークで突き刺した最後の一口を、ななくんの口もとより少し上の方へもっていく。


「んごぉ……お前このタイミングであーんとか絶対悪意あるだろ、食わせる気ないじゃん、コンマ1秒反応遅かったら鼻の穴に突っ込んでたろ」


「バレた?まあもう大丈夫これ最後の一口だったからもう心配は要らないよ」


「あーよかったー、助かったー」


もうこれで恐怖は過ぎ去った!


「あのすみませーん追加いいですか?」


「お前のなに追加してんだよ……声が絶妙に小さくて聞き取れなかったしよ……」


「秘密!まあ来たらわかるって」


にひひって、私はナイショのポーズをしてみる。


「あ、そうすか流石にそれは奈帆が払えよ」


いっしゅん動揺したななくんを見逃しはしなかった。照れ隠しに少し口調を強める、そんななくんもたっぷり堪能できて、私はご機嫌だ。


「分かったよー払えばいいんでしょ!」


まあ、これくらいは払うのが義理ってものだよね。



とまあ、、、こんな感じで七くんどうでもいい話をしていたら、七くんがトイレに行くって行ったらしい。


ここぞとばかりに私はお店の人を呼んだ


「すみませーん」


「はーい、ご注文でしょうか?」


「えーっとさっき注文したんですけど、今持って来られますか!ちょうど本人居ないんで」

あ、はいそうですね畏まりました、少々お待ち下さい」


これ見たら七くんどう思うんだろう、喜んでくれるかな……


そう待って居るうちに間も無く注文したものは来た。


「お待たせ致しました、こちらです」


何がきたかは、ななくんがきてからのお楽しみだよ!


「はーい、ありがとうございます」


「後、そちらは19本で宜しいでしょうか?」


「あ、はいありがとうございます、後一時的にお店暗くできますか?」


「あはい畏まりました、……でも凄く彼氏さん思いなんですね!1週間も前から……」


「あ、はいまあ」


「ではごゆっくりと」


ゆっくりと、待っているうちに七くんは戻って来た。


**********

「おー待たせたなごめんごめんてかなんかお店ん中暗くね?まあもうそろそろハンバーグ来るんじゃねえのか?、てなんだよこのケーキ

まさかさっき頼んだのって……」


「誕生日おめでとう、七くん今日で19歳だよね私よりも一足先に大人の階段を登った七くん」


「な、な奈帆……」


「えへへ、驚いた?そう今日ここに呼んだのも、放課後一緒に居たのもこのためだよ」


「なんか、ありがとなすげー嬉しいわ、なんかこのことを思うと今日のさっきまでのウザさ全部吹き飛んだわ」


ななくんは思いのほか嬉しそうだった。やっぱり人に祝ってもらう誕生日とは、格別に嬉しいものだよね。


「そう?なら良かった、これがツンデレってやつかな?どうだった」


「正直キモい、ツンデレとかズルくね、俺だったらそういうの絶対許せない、まだ奈帆だから許すけど、他だったら無理だわ、実際奈帆も男子のツンデレとか無理だろ」


「そこ即答しちゃう?まあ良いや喜んでくれて何よりだよ」


奈帆だったら許すってところ、とくに、、、

てかこういう事言ってるななくんの方がツンデレなんだから……


こんなふうにななくんの最高の笑顔も見届けた事だし、そろそろ解散の時間だよ?


「なんか、今日はありがとな」


「良いよ別に、私が勝手にやっただけ」


まあ実際、私が勝手にしただけだ。ななくんはこんなのを、求めてなんかいないのかもしれないけれど。それでも、私はこうやってななくんが喜んでいるところを見たかった……。


「そっか、そういえば奈帆の家ってここからだと少し遠いよな、送ってくよ」


解散ムードではありながら、お互いの足と空気はなんとなく重かった。

そんなところで、ななくんからの、提案だった。


「そう?ありがとう」


受けないはずがないのです。


こうして、ななくんのサプライズ誕生パーティも終わって、無事に家まで届けてもらって、次の日になったんだよ~


そして次の日


************


いつも通り、最後の講義が終わってから、私はまっすぐにあの部屋に向かう。


今日は私が一番遅い日だ。

もう、みんな集まっているかなぁ……


「やっほー、さきちゃん!こんにちわ~」


一番に出迎えてくれたのは、さきちゃんだった。



「課題提出お疲れ様!よく間に合ったね、、、」


「まあね、なんとか終わらせたよ!」


えっへんと、胸を張る私。


「良かったじゃん」


ゆうちゃんが反応してくれた、課題のことを少しでも心配してくれていたのか、自分のことのように嬉しそうにしてくれた。


「うんうん……あ!響せんぱいもこんにちわー」


少し奥で、響せんぱいもみつけた。私はすかさず声をかける。


「ああ、そうだね」


いつも通りのそっけない態度。うぅ……。


「ちぃーす」


ななくんも私に挨拶してくれた。


「こんにちわみんな~」


こうしていつものメンバーが集まっていた。


「すこし遅れたよ、すまないね」


なぜか、この場にまだ来ていなかった最後の奏くんも集まって無事に6人。


もう誰もこないまたいつもの日常……のはずだけど



「失礼します、ここって心理学同好会ですよね?」


そういえば、部なのか同好会なのか、いまだに私は区別しかねていた。ななくんは


「そうだよ、ここだよ」


こう言っていつも通りの口調で響先輩は言った


「え、なんで新しい人来るの?」


「やっと来たね、、、ここから本格的に同好会の活動開始だよ」


先輩は嬉しそうにそう言った。

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記憶と君の彼方 湯々 @kisetunoowari

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