第2話 序列第3位の学園《前編》
まぁ特に問題なんて起きておらず、俺はもっぱら書類整理ばかりさせられている。
今日はまだ会長、、、いや、クイーンはまだ来ていないようだ。
『なぁ、千影、会ちょ━━』
『シャドー、、、SGBで活動している間、私はシャドーよ。』
『お、おう。』
ふぅ。
この呼び方といい、このSGB特別指令室といい、まだ慣れないな。
俺は不意にモニターに目をやる。
『白咲聖城学院、、、か。』
『クイーンなら執行部会議で遅くなるそうよ。━━━ん?聖城がどうかしたの?』
『あ、いや別に、、、たぶんなんでもないと思うんだけどさ、一応、メインモニターに聖城の各カメラ映像を写してくれないか?』
『別にいいけど、ちょっと待っててね。』
千影がメインモニターに聖城の各所に設置された隠しカメラの映像を写し出す。
カメラは全部で12台。
そのうちの1つ、校舎裏の音楽室へと通る中通りが写されている映像が俺は少し気になった。
『この中通りを写してるカメラ、巻き戻しって出来るか?』
『まぁ、出来るけど。そうそう事件なんて起こんな━━━なに、これ、、、』
そこには二人の男子生徒と思われる人物が写っていた。
『やっぱりコイツ、この学院の生徒じゃないよな。制服がコイツだけ違うようだし、、、もう一人のほうは聖城の制服を着ているようだけど。━━━なにかやり取りしてる。まさか、金か!?』
『ツーちゃん!!、、、じゃなかった、、、ゴホン。ナイト君、よく見つけたわね。これは調べる必要がありそうだわ。クイーンが来たらすぐに報告しましょう!』
『あぁ、そうだな。』
俺たちはわずか1分間の間に写し出された映像を何度か見直した。
カメラよりやや遠い位置に居たらしく、残念ながら二人の顔は写し出されていないようだ。
聖城の男子生徒は紙袋に入った金を取り出すと、もうひとりの男子生徒はそれを受け取り、その場からすぐに立ち去った。
『もう一人のほうは白咲鳳凰院学園の生徒のようね。序列2位の都内にある名門校よ。』
『序列?なんだよそれ?』
『そのまんまよ。白咲学園グループはぜんぶで7校。それぞれに序列があって、力関係が決まっているの。序列6位以下はほとんど一般的な高校と変わらないけどね。』
千影はメガネをかけて自分の席に座ると、ノートパソコンを開き、画面なにかを検索しだす。
どうやら必要なサイトを見つけたらしく、ちょいちょいと俺を手招きで呼んだ。
俺は右手を席に、左手を千影のイスの背もたれを掴むとパソコンを覗きこむ。
『これは白咲学園グループの表のサイトよ。そしてこれが、裏サイト。白咲学園グループの情報をいち早くキャッチする為、私達が仕掛けている"生徒たちが自由に書き込める"ようにしてあるSNSサイトなの。』
『へぇー、そんなもんがあるんだな。てかお前、ずっとこんなことやってたのか。お前のキャラが俺の中で大渋滞起こしてんぞ。』
ハハハと笑う俺の右手に千影が手を被せてきた。
そして、上目使いで俺を見つめる。
『私は私だよ♪ツーちゃんが大好きでどうしようもない、あなたの幼なじみの女の子///』
なんだなんだこれ、千影がこここ、こんな
取り乱すな俺ぇぇぇ、コイツは実は陰キャでもなんでもなく、アへ顔で俺とのイチャイチャを求めてくる"変態幼なじみ"なんだぞ!?
で、でも、、、可愛い!!
そんなやり取りをしているとき、千影のケータイが鳴った。
どうやらクイーンが来たみたいだ。
回転扉に着けられた二つの大きな鍵を外すと、クイーンがケータイを片手に入ってきた。
『待たせたわね。内容はさっきシャドーからのメールで聞いてるわ。ナイトきゅん🖤さっそくお仕事頑張ってるじゃない。』
『コードネームになっても"きゅん"なんですね、、、』
俺は少々ぶっきらぼうに返した。
未だになぜクイーンが俺に好意をもってくれているのかわからないが、露骨なアピールは少々俺にはくすぐったいからだ。
『当たり前よ!少々過剰なくらいにアピールしとかないと、シャドーがナイトきゅんの心を全部奪っちゃうじゃない?』
クイーンは抜け駆けは無しよ!と毎日こんな感じで千影に釘を打っているらしい。
俺を共有すると表向きでは言っといて、実は独占したいという気持ちがふたりとも溢れかえっている。
ふたりはSGBの上下関係など関係ないと、手を掴みあって火花を散らしている。
『はいはい二人とも仕事しますよー。』
『『あなたの為に争っているのよ!!』』
ふたりにこれ以上付き合えばキリがない。
俺は千影の席に座ると、白咲学園グループのデータベースにアクセスする。
『序列ねぇ、、、』
『あぁ、それなら私が説明するわ。シャドー、この画面をメインモニターに写してくれる?』
『あ、はい!白咲学園グループの組織図をメインモニターに写します。』
『ありがとう、シャドー。ナイトきゅん、この組織図はそのまま上から序列でもあるの。エリート階級の社会においては白咲学園グループの序列を気にする会社もあるわ。だから、学生たちの中で特に優秀な者にはより序列の高い学園への転校をするチャンスが与えられているの。ゆえに、たまに不正を働くヤツもいるのよ。』
『じゃあ今回は?』
『そうね、ポリテは別件ですでに他に送り込んであるから、聖城にはシャドーと一緒に潜り込んでちょうだい。あ、後からガーベイジを合流させるわ。彼女は学園グループイチの剣道家よ。もしも自分達の身に危険が及ぶようなら頼ればいいわ、、、。まぁ、ナイトきゅんならその必要もないでしょうけど🖤』
どこまで俺のことを知ってるんだこの魔女は、、、
確かに俺は"ある武道"の道をたしなんでいる。
マイナー過ぎるが為に誰にも話していないが、千影を守ると決めた日から、俺は護身術を中心とした武術に興味を持った。
でも女子を守るために武術を習っているなんて恥ずかしくてまわりには話していない。
なんでもアリのクイーン様はどこまで知っているのやら、、、
『100万円、本当に貰えるんですかね?』
『白咲学園グループの名誉を守るためよ。その為なら学園総理事長はお金なんて惜しまないわ。やってくれるわね?』
『りょーかい。シャドー、頼りないかも知れないが、相棒、よろしくな!』
『ニヘラ///こ、こちらこそよ、よろしくねにへへへへへ///』
おいその顔やめれ。
俺は明日からクイーンの命令でこのなんとも緊張感の無い幼なじみと聖城に潜入することになった。
転校手続きや自分達の設定などは今日中にクイーンが根回ししてくれるらしい。
しかも"俺達の身の安全を考慮して"潜入先の学園の先生は愚か理事長たちにも俺達の素性は伏せられる、、、らしかった。
『必要な情報はあとでナイトきゅんのタブレットに送っておくから、あとでチェックしといてね♪明日にそなえて今日はもう解散しましょう。』
《自宅》
━━━と、いうことで俺は自宅でクイーンから送られてきた情報をチェックしていた。
まず俺がチェックしたのは"序列"についてだ。
タブレットの画面に写し出された序列と学校名を頭に叩き入れる。
序列首位/白咲学園
序列第2位/白咲鳳凰院学園
序列第3位/白咲聖城学院
序列第4位/白咲学園フランス校
序列第5位/白咲
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なるほど、序列3位の聖城の生徒が序列2位の鳳凰院の生徒になにか取引を持ちかけている、、、もしくはその逆か、、、。
それから俺は、自分の偽のプロフィールを頭に刷り込む。
偽名は高岡光太郎。
九州の老舗酒造会社社長の息子であり次期社長候補。
千影は高岡奈々子。俺の双子の妹か。
なるほど、酒造会社であれば未成年ばかりの学園において、ウソだとバレにくい。
それに九州の老舗というなんとも微妙な肩書きを持たせることで、金持ちばかりの"聖城"でプライドが高い生徒のなかで話が聞きやすい。
よく考えてあるな。
クイーン、、、須藤王花か。
うん。絶対敵に回したくないっっ!!
騎士《ナイト》は今日も罪をつくる とも☆ちき @tomo-kichi
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