第7話報復

 私の手が王太子の腹部を貫き血みどろになっています。

 王宮の謁見の間は、死屍累々の状態です。

 そう、私の怒りに我を忘れて暴れ回った結果です。

 いえ、嘘です、我を忘れてなどいません、冷静に報復しました。

 だから、全員即死などさせていません、激痛に苛まれて生きています。

 全ては当然の報いです、ウォーレン卿を騙し討ちしようとしたのですから。


 王太子達は、私がウォーレン卿への好意を隠さない事に苛立っていました。

 王太子達はこの国一番の美貌と評判で、聖女の権威もある私を妻に迎えて、自分たちの獣欲を満たすとともに、地位を確固たちものにしようとしていました。

 なのに、孤児院生まれのウォーレン卿が私に惚れられている。

 それが許せず、謁見の間に呼び出して騙し討ちしようとしたのです。

 国王と重臣も知っていてそれを止めなかったのです。


 私はこうなる可能性を考えていて、ウォーレン卿に護衛の使魔をつけていました。

 王太子や国王の思惑を感じ取った私は、怒りと同時に計算もしました。

 そして王家を滅ぼしてこの国を支配する決断を下したのです。

 ウォーレン様を王にし、私が王妃となってささえる

 私にとって、これほど幸せな事はありません。


 私は精神力をふり絞り、王太子と王が愚行に走るのを待ちました。

 ウォーレン様が傷つく可能性がある事を見逃す事は、とても耐えが痛い苦痛です。

 ですが、今は耐えなければいけないのだと、心に言い聞かせました。

 そして、俺か者共は、私が思っていた通りの愚行に走りました。

 忠誠を慈愛でこの国のために働いていたウォーレン様に冤罪を着せて殺そうとしたのです!


 この国一番の戦士であるウォーレン様ですが、相手が王太子や国王では剣が向けられないようで、防戦一方になられました。

 もう、私には我慢ができませんでした。

 疾風怒濤の勢いで謁見の間に押し入り、王太子国王一味をズタボロにしました。

 ですが、ここからが一番大切な所です。


「ウォーレンに聖女として命令した。

 腐りきったリンスター王家を廃し、国王となり、この国の民を救いなさい。

 私が正妃となって支えてあげますから、何の心配もありません。

 さあ、グズグズせずに戴冠を宣言するのです。

 お前達は各騎士団に忠誠を使わせなさい!」


  最初は私の言葉に唖然としていた近衛騎士たちも、私の怒りと勢いに飲まれたのでしょう、直ぐに各騎士団に走っていきました。

 ウォーレン様に忠誠を使うもよし、リンスター王家に忠誠を尽くして剣を取るもよし、好きにすればいいのです、逆らう者は皆殺しにするだけです。

 それよりは、今夜どうやってウォーレン様を襲うか考える方が大切です。

 

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転生聖女は騎士団長に恋をする。 克全 @dokatu

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