第6話神殿デート
「はい、王太子殿下は手先に使っていた商人が神の御使いに襲われ、死ぬに死ねない苦しみに苛まれていると取り巻きから聞かれ、卒倒されたそうです。
その日から今日まで高熱に苦しまれているとお聞きしております」
根性なしはどうしようもありませんね。
私は何もやらしていませんし、神々からも天罰を下したとはお聞きしていません。
だから、恐らくは、恐怖のあまり自分で熱をだしたのです。
自業自得の神経症でしょうから、王家から何か言ってきても無視ですね。
「では王家から治療の依頼があっても、天罰を治す方法などありませんと言って、追い返してください、私は絶対に会いませんからね」
「承りました」
私は側仕えの修道女と色々相談しました。
やりたい事、やらなければいけない事がたくさんあるので、どうしても多くの指示を出さなければいけないのもありますが、一番は寂しいのが理由です。
ウォーレン卿が来てくださるまでの間が、とても寂しいのです。
常時、公私関係なく常に側にいて欲しいのです。
「ウォーレン卿が来られました、入っていただいて宜しいでしょうか」
修道女の一人が確認してきますが、それすら時間の無駄だと苛立ってしまいます。
当然の確認だと頭では分かっているのですが、一瞬でも早くお会いしたいのです。
「直ぐに入っていただいてください。
歓待は最高級のもてなしを命じます。
わずかな粗相も許しませんからね!」
私のあまりの勢いに押されて、修道女の顔が強張っています。
いけないと思うのですが、抑えることができないのです。
ウォーレン卿が来てくださったと思うと、心がウキウキして飛び跳ねそうです。
「失礼いたします、聖女様。
先日は騎士団員のために過分なご厚情を賜り感謝の言葉もありません。
団員に成り代わり心から御礼申し上げます。
それで、この度はどのような要件でしょうか?」
「礼には及びませんよ、ウォーレン卿。
騎士団の方々が困窮していては民を護る事もできなくなりますからね。
それに、騎士団員の方を助けたわけではありません。
私はウォーレン卿を信じて、ウォーレン卿に寄付したのです。
ウォーレン卿が寄付金を自分のモノとするも、公務に使うも、団員に渡すも、全てはウォーレン卿が決められた事です。
騎士団員の方々を助けたのは、私だけではなくウォーレン卿ですよ」
「とんでもございません、全ては聖女様もご慈悲が団員を救ってくださったのです」
私達はそのまま互いの功績を譲り合いましたが、楽しいひと時です。
特に聖女の私は、大手を振って愛する男性とデートなどできません。
公務という体裁で、多くの側仕えに見守られながら、お話しするくらいです。
だから、私にとっては、この時間がデートなのです。
できるだけ引き延ばして、互いの距離を詰めなければいけません!
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