第5話天罰
私の願い通り、いえ、私の指示通り、天罰が下されました。
商人たちが私を騙して不当に貪ろうとした日から十日経ちましたが、最初に王太子の手先となっていた商人が、神殿から家に帰るまでに、獣に襲われました。
本人を苦しませるのと、周りへの警告のために、楽には殺しませんでした。
獣に内臓を貪り喰われ、それでも直ぐには死ねず、十日間絶え間ない苦痛に苛まれる、とても酷い死にざまだったそうです。
「聖女様、ダイヤモンドの売り上げをどうしたしましょうか?」
私が物思いにふけっていると、側仕えの修道女が、この十日間で手に入れた金貨の使い道を聞いてきました。
「ウォーレン卿に預けて使ってもらおうと思っているのだけれど、何か他に使いたいことがあるのかしら?」
「孤児院にも下賜していただけませんでしょうかと、神殿長たちが言ってきているのですが、どういたしましょう?」
側仕えの修道女が恐々聞いてきます。
それもそうでしょう、私が神殿長たちの使い込みに激怒している事を知っているので、この言葉を契機に次の天罰が下ると思っているのです。
側仕えの修道女の想像通りです、次の目標は神殿長たちですが、その前にしなければいけない事があるので、今回は無視しておきましょう。
「ウォーレン卿を呼んでくださいますか?」
私が彼女の言葉を無視しても、彼女は全く動じません。
それくらいの度胸がなければ、私の側仕えは務まりません。
私の逆鱗に触れた商人たちが、今も高熱と激痛に苦しみ寝たきりなのですから。
あの場にいた、いえ、ずっと私の行いを見ていた側仕えたちは、私を私利私欲で利用しようとした者たちが、天罰で苦しみ抜いて死ぬのを見て来ていますからね。
「はい、直ぐにお呼びしてまいります」
側仕えの修道女の視線を受けて、配下の修道女が第十騎士団に向かいました。
彼らもとても忙しいでしょうが、女房子供を売春させないようにするには、私の命令を聞いて王国の給料以外の収入を確保しなければいけません。
それに、私を騙そうとしたこの国の商人達が天罰を受けたのを見れば、私に逆らおうとは微塵も思っていないはずです。
ですが、私に直接仕えるのではなく、ウォーレン卿を主として仰ぐように仕向けなければいけません。
私が大切なのはウォーレン卿であって、一人一人の騎士ではないのです。
ウォーレン卿の心をつかむために、私の恋を成就するために、この国の悪徳商人を懲らしめ、第十騎士団の者たちを助けたのです。
その事を誤解させないようにしなければいけません。
ああ、他にも確認しておかなければいけない事がありましたね。
「そういえば、王太子殿下が寝込んだと聞きましたが、どういう事ですか?」
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