第16話 提案

 私は前世で二十二年、巻き戻るまでの十五年、併せて四十年弱生きているけれど、一度も性行為をできていない――巻き戻ったこの人生も、上手く立ち回れなければ幽閉されて孤独に死ぬまでの時間を過ごすことになる――


 もし、機会が訪れることがあるとしても、服を脱いだ瞬間にピアスが傾いていることを気にされるような身体を見せたくはない。間違いなく、その機会を見送るわ。つまり、今世で機会は訪れないということ――


 ここは日本ではないから青少年保護育成条例は存在しない。年齢を気にする必要はないし、そんな猶予はない。身体は十歳だけれど中身は成熟しているわ。


 前世では百合物の同人誌も好んで読んでいたから、女性同士で快楽を求め合うことへの抵抗はない。この機会を逃せば、もう機会は訪れないのだから、ドゥが受け入れてくれるのなら求めるのは自然なことよ――


「ピアス、お揃いにしたいわ……命令ではなくて、独り言よ。契約とかは関係なくあなたと同じがいいって思っているの……穴を開ける道具とピアス、出せないかしら」


 ドゥが空中を掴み、握った手を開くとニードルとピアスがあった。

「私、色々な物を錬成できるんです。結構すごい錬金術師なんですよ。お嬢様と私だけの秘密にしてくださいね!」

「昨日、王妃様に言っちゃった」

(えぇーー、何故昨日知ってるのぉ!?)

「私にくれたピアスは存在しない素材。あなたが知らない、存在しない毒の手配もしてくれた。その能力が無ければ実現不可能でしょ」

「そうですよね……でも万能ではないです。私が仕組みを理解できない物は錬成できないです。なので、勉強を超頑張りました! あと……そのピアスの素材と毒は存在します。私は神ではないので、空想の物は創れませんし材料の消費もします」


「どのくらい勉強したの?」

(えぇと……二百四十……五十年くらいかなぁ)

「忘れました」

「嘘つき……二百年以上は凄いわね」

「お見通しですか。でも、長生きしてるわけじゃないですよ。記憶が引き継がれているので累積するとそのくらいです」


「色々経験してきているのね」

「長く遊んでいるので。空間に物を収納できるのはインベントリという技術です。オンラインゲームなどで……と言ってもわからないですよね」

「知っているわ。この世界、ゲームの中なのかしら」


「ふぇ!? NPCじゃないのぉ?」

(素が出ちゃったよぉ。何か言われるかなぁ……)


 触れない方が良いならそうするわ。

「違うわよ、ちゃんと自我も感情もあるわ。提案なのだけど、この世界を一緒に攻略しない?」

「絶対楽しいですね!」


「決まり! お揃いの外見にしたいのは本心だから、とりあえずピアスは付けて欲しい……」


「任せてください」

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社畜の社畜による社畜のための異世界サバイバル あめ玉 @softbunk

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