罪を犯し、幸運にも死刑にはならず、無人島に流された主人公がひたすらゾンビを料理する、それだけの話·····では、ない。
そもそも転生していること自体にも謎が残るし、なぜゾンビがこれだけ繁殖(?)しているのかもわからない。
現地で出会い同行することになった女性キャラクターはかわいいがこちらも謎が残り·····と、謎が謎を呼ぶ"つくり"になっている。
その描写力も無視できないポイントだ。ゾンビの肉は無論紫色なのだが、それをおしても主人公の料理人スキルに唸らされる。
謎を巧妙に描きつつも、やっぱり隙間でゾンビ料理を作り、たまに飽き·····というサイクルがかなりページをめくる手を進ませた。是非オススメしたい1作である。
罪人として島流しにされている最中に、自分が前世で料理人志望だったことを思い出した暗殺者イドリス。漂着の末たどり着いたのはゾンビがうろつく地獄の孤島。ただでさえ食糧の乏しいこの状況でさらにゾンビ……この状況をどう生き残ればいいのか……食っちまえばいいじゃん、ゾンビを……! かくして前世の料理人スキルと今世の暗殺者スキルを組み合わせゾンビを殺しては調理する最悪のサバイバル生活が幕を開ける!
というわけで本作の読みどころは次々出てくるゾンビ料理の数々。しっかり焼いたり、レアのステーキにしたり、刺身にしたりとどんどん過激になってくる調理方法も笑えるが、細かい味の違いから島に生息するゾンビの真相をたどろうとする過程も面白い。
また、ときどきフラッシュバックする前世での出来事が実は現在と関係しており、前半のギャグタッチな内容が嘘のように、怒涛のごとく伏線回収をしていく物語後半は読みごたえたっぷり。文庫本一冊ほどの長すぎず短すぎずの分量で綺麗に完結しており、ちょっとまとまったものが読みたいという人には是非お勧めだ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)