* 幕間〈3〉彼の見てる夢

幕間 - お前らは罪を犯した

 * * *



 璃世が死んだと言われた。


 何を言っているんだと逢人を殴った。


 けれど逢人はまた、「璃世が死んだ」と泣きながら繰り返した。


 父も、母も、泣いていた。



 そんなはずはない。


 そんな事があっていいわけがない。


 どうして璃世が死ななくちゃならない。


 何も悪い事をしていないのに。



 俺は璃世を幸せにしてやりたかった。


 そのために医者になろうとした。


 でも、全ては無駄だったんだ。


 彼女の周りには悪人が多すぎた。



 母よ、なぜ璃世を健康に産んでやらなかった。


 父よ、なぜこんな無能な医者のいる病院を選んだ。


 逢人、なぜ璃世に猫なんか触らせたんだ。



 猫──ああ、そうだ、あの猫……。



 あの猫が悪いんだ。それ以外も、全て悪い。


 璃世を殺した全ての者が重罪だ。


 お前らは罪を犯した。


 全員が悪人。全員が大罪人。



「……殺してやる……」



 きりり、手に持ったカッターナイフの銀の刃が、音と共に伸びて俺の手元で光る。


 ふらり、歩き出した俺の脚が、錆びたフェンスを蹴り開けて中へと侵入する。



「……璃世……、璃世……」



 愛しい彼女の名を呟きながら、俺は野良猫の糞尿にまみれた古びた廃ビルの中へと、消えていった。



 * * *


〈幕間 3 - 彼の見てる夢 …… 完〉

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