5日目

 この日記を書き始めてからそろそろ一週間が経とうとしている。一日ずつ増えて行く使者は日に日に増加の幅を増しており、一国内で既に百人を超えている。もう本当に逃げ場は無いのかもしれない。


 今日は、唯一の命綱かもしれない軍事基地に来た。僕の思ったとおり、基地は避難と救助活動を行なっていた。が、このパンデミックの最中のせいか、今すぐ基地に避難させろと市民がデモを起こしていた。その理由も、避難所への迎え入れは、医療班の兵士に精密検査を受けて貰い、完全健康状態出ないと入れてくれないという。


 さらには、柵を無理矢理よじ登ろうとすれば、最早ハエに侵された人間は人間として扱われていないのか、拘束されるどころか即射殺されている。


 順番待ちが耐えられない市民は、どうにか基地に入ろうと武器を持ち入ろうとするが、全くの逆効果であり、武器持った市民は優先に即刻射殺されている。


 いつまでもこんな物騒な所には居られない。僕は大人しく待つ事にした。きっと、きっと健康の筈だ。


 待ち時間、二時間も掛かって漸く自分の番だ。ゲートを潜った後、医療室に入れられ、レントゲンやMRI検査等々……身体隅々まで検査され漸く結果が出される。僕の結果は、合格だった。唯一の逃場。これほどまでに安心した事は人生で初めてかも知れない。


 軍事基地避難所に入ると、僕は集団を避ける為に仮に作られた個室に入れられる。やっと避難所に入れたものの正に牢獄の様だった。ただ特に不快感は無く、電波も通っているし、緊急用の有線連絡も出来、必要不可欠な物は全て整っており、至って生活面としては満足だった。


 必要な物が有れば兵士に声を掛ければ、皆んな優しく、相談や物も持ってきてくれる。兵士の話によると現在、この避難所に入っている人の数は、検査の遅さに手が回らない所為か、一万人を下回っているという。しかも、軍事基地避難所はそろそろ満員であり、残りは別の基地に移動してもらうと話していた。


 ただし外は暴動が起きており、それも簡単には敵わず、最悪の場合、抵抗する者に武力行使を行うとの事。無理矢理侵入してくる市民の射殺は、あくまで安全の為であり、兵士の言う本当の武力行使とは、『敵対勢力の掃討』だと言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

FRY HAZARD Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ