読みあい企画から読ませていただきました。レビューを書かせていただきます。人の作品にコメントを残すのは初めてですので失礼があるかもしれませんが、ご了承ください。(アドバイスのような出過ぎた真似をしている箇所もありますが、読み流してください笑 初心者の戯言にすぎません。)
蝶や花たちの会話と童話的な風景描写が良い親和性をもっていて、読者を作品世界に引き込む力があるなと感じました。
「あっちに色の濃い麗春花ポピーが咲いてるって
行ってみようよ
行ってみよう
ねえどこ行くの?
あっちに美味しそうな麗春花ポピーが咲いてるって
私も行きたい
ねえ連れてって!」
この会話が特にお気に入りです。誕生日の子供たちのように汚れのない美しいセリフだと感じました。人間が宿命的に失ってしまう心の核に潜んでいるもの(まさに「宝石」のように美しいもの!)が象徴されているようです。詩的なリズムも個人的に好みです。
鬼蜘蛛の狂おしい愛情と、伝わらない恋心の描写も素晴らしいです!命からがらもがく蝶との心理的な対比が作者の心を揺り動かします。
(これは純粋な質問なのですがなぜ「鬼蜘蛛」としたのでしょうか?単純に「蜘蛛」ではないのはなぜでしょう?人間との大きさの対比を考えたときに大型の「鬼蜘蛛」よりもただ「蜘蛛」としたほうがよいような気がしました。)
そしてそれほど心理描写や風景描写をしたあとに来る人間の登場の落差も面白かったです。きっとこの「自然に無数に存在する小さな世界と、それを顧みない人間」というのが主なテーマなのではないですか?ありがちなテーマではありますが、だからこそ古川さんの表現技法に集中できてよいと思います。
(これもまた偉そうになってしまいますが、人間が登場してからは「語り」を人間の会話のみに絞るのも面白いかもしれません。加えて、「人間の非情さ」を際立たせたいのならば蝶を捕まえるのは子供よりも大人、例えば研究員(?)などのほうがいいのではないかとも感じました。)
最後にこれは勝手な読みですが、後編は前編と切り離して考えました。前編の生み出す、残酷で美しい自然の語りに後編の「種明かし」のような雰囲気をうまく結びつけることができなかったからです。後編がないとモチーフの意味が伝わらない人が増えてしまうからそうしたのかもしれませんが、僕としては前編のみで完結するほうが作品世界が美しいまま残る気がしました。評論家気どりで申し訳ありません笑
プロフィールを拝見して高校生だと知り、驚きました。僕も同じく高校生です。切磋琢磨する、といえば言い過ぎかもしれませんが、僕にとっては良い刺激になりました。新作も期待しています。がんばってください。