第13話そして……

き、緊張ーしたー…… ダメだ。疲れた。 

 もう無理。

 俺はフラフラになりながら先輩達の所に戻った。


「よっ。良い演説だったぜ」


着くと、荒神先輩が背中を叩いて励ましてくれた。


「ど、どうも」


正直自信ないし。お世辞にしか聞こえないって思うのは俺が疲れてるからかなー。


「さて、頑張ったと思うがダメ出しだ」


「えっ! やるんですかー!」


「俺は良いんだけど、まぁルールー出しな」


えー……


「と、その前に出て行ってくれるかな?」


おわっ! 鷹ノ内先輩いつのまに!


「ん? 何でだ? 鷹ノ内」


「そりゃぁ、今からこっちで話してどっちの作品を取るか決めなきゃいけないし。

 いても良いけど? そこの2人いたい? 結構色々いうと思うけど」


「まぁ、俺は別に」


「「で、出ていきます!!」」


この時だけは、俺と綾音の意見はガッチした。


♢♢♢


「さてと、さっきの話しだけどそうだなー、じゃっ俺は輝に言おうかな?」


「あ、はい」


「まぁ、サクッと。多分、作品の雰囲気を武器にしようとしたのは中々良かった。

 ただし、全部伝えられ無かったってのがあるな。例えば、お前の作った世界感の泥臭ささとか、シリアスさとかな。そうだな、薄くてもいいからもう少しキャラを出していけばそこら辺は出せたかもな。 

 例えば主人公の上官とかな。

 キャラは、1人じゃその魅力を出せない。もっと使って1人1人のキャラの魅力を出せるようにするんだな」


成る程なー。なんか、結構深い事を言われた気がする。

 けどキャラかー。確かに、綾音や荒神先輩みたいに作り込まなかったかもなー。

 もっと世界感を掘り下げル為にも作るべき、か。


「じゃぁ、私は綾音に。んーと言ってもなー。私は結構好きだっしなー」


「え! ほ、本当ですか!!」


「え! そんなに驚く事? いや、普通に良かったと思うよ。まぁ、強いて言えばキャラ名かなー。まぁ、たまに私も被っちゃうんだけど。既存の作品のキャラと名前被ると他のそっちイメージいっちゃうから、そこは気をつけて事、かな? 後、これは私個人のアドバイスなんだけど聞きたい?」


「ぜ、是非! お願いします!」


「なんか、アイツ俺よりもテンション高くないか?」


と、俺の隣で荒神先輩がポツリと言う。

 お、嫉妬ですか!

 とは言えないな。うん。安全第一。それに、多分アイツは先輩方全てを尊敬してますよ。

 ま、それ以上に敵視してるけどね。


俺達は、その後は普通に雑談をしたり持ってきた本を読んだりしている。

 と、待つ事数十分


「入っていいよー」


と、鷹ノ内先輩が呼びにきた。

 こう言うのって普通後輩がするんじゃ?


         ♢♢♢


そして、俺と綾音はさっき発表した前に立たされた。

 さっきまではリラックスしてたけど流石にドキドキしてきた。

 ヤバイ。体が熱くなってきた。

 俺はチラッと綾音を見た。綾音は変わらず涼しい顔を……してなかった。

 よく見ると顔の口角は上がって固まってるし。手も小刻みに震えている。

 コイツ、多分びっくりしたら固まるタイプだな。

 俺は少し、緊張が逸れると1人の女子がその場に立った。

 確か、川畑里緒奈かわばたりおなだったはず。

 そして、里緒奈はスラスラ手慣れた感じで話す。


「えー、語手ノベル部のお2人素晴らしい作品をありがとうございます。

 お2人の作品はとても面白く、こちらとしても両方を出したいのですが、残念ながらその時間も労力も無い為失礼ながら我々は話し合い1つに絞らせていただきたいと思います」


 よくもーまぁツラツラと出てくるなー。コイツ。


(里緒奈はカンペを見ていますが輝と綾音は緊張で気づいていないだけです。

 因みに、里緒奈は気づかずカンペをしてると思っていますが他の人にはバレバレですが気づかないフリをしています)


そして、長い前置きが終わり、里緒奈は一区切り付けた。

 俺でも分かる。ソロソロ結果発表運命の時だと。


         ♢♢♢


綾音の放つ斬撃は俺の乗っている戦闘機の翼に直撃する。

 斬撃はバランスを崩す。このままじゃぁ倒れるのは必死。

 しかし、そこで俺はあるボタンを押す。

 これは、反乱軍の科学力の結晶。

<リベルタ>

これを使えば、一時的に俺のこの戦闘機は爆発的なエネルギーを浴びる事ができる。

 その証拠に俺の乗っている戦闘機、火燕ヒエンは蒼い炎をのようなエネルギーを機体に纏う。


「死ねーーー! 綾音ーーー!」


俺はそのまま綾音に突っ込む。


「嘘! セキュリティー」


綾音は左手をかざす。すると、左手には光の壁が放たれる。


くそ! 硬てー! けど! まだだ!

 俺はその壁に衝突しながら銃を乱射する。ゼロ距離の銃弾攻撃! 

 壁は壊れる! しかし、綾音もそれは見越していたようで、俺が突っ込むのと呼吸を合わせるように刀身の光る剣を俺に向けて放つ。


「<正常十字剣ワクチンクロスセイバー!!>」


それは、綾音の必殺技だったのだろう。

 互いに一歩も引かないエネルギーとエネルギーのぶつかり合い。


  ♢♢♢


「今回、私達が選ばせて貰うのは……」


里緒奈の声が俺の鼓膜を震わせする。

 心臓の鼓動が早くなる。それに伴って体が熱くなる。

 呼吸が早くなる。

 俺は目をギュッとつぶった。


♢♢♢


 莫大なエネルギーを浴びた剣と戦闘機は互いに互いにのエネルギーが反発し合う。

 周りは白くなりこの世と思わせる爆破が起きる。


         ♢♢♢


「矢島綾音さんの作品に決まりました」


♢♢♢


爆破が止んだ。

 俺は目を開ける。

 そこに立っていたのボロボロの鎧を見に纏い折れた剣を杖のようにしてその場に辛うじて立っている綾音の姿だった。


         ♢♢♢


「や、やったーーーーー!!!!!!」


綾音はその場で飛び跳ねる。

 先輩達もその場に集まる。


「よくやった」


「ありがとうございます! 荒神先輩」


綾音は手に口を当てながらそう言う。その目には涙が溜まっている。


 どうして、どうしてなんだよ。


「綾音さんを選ばせて貰った理由は我々が考えもつかなかったゲーム性の可能性。

 ネットゲームのキャラの多さ。など、我々の求めていた物を作りそれにプラスして新たな可能性の提示をしてくれたのが決め手となりました」


……なんだよ。それ……

 そんな。じゃぁ、もっとキャラを作れば俺も入ってたのかよ。

 俺がもっと求めている物を作れば良かったのかよ。

 俺が! アイツよりも先に! それをしてたら! せめて……俺が同じ事してたら。俺にも……


 それからはよく覚えていない。もっと詰めないといけない事があるから綾音はちょくちょくパソコン部にも顔を出すらしい。まぁ、俺には関係のない事だけど。


 皆が、出た部室で俺はボーっと窓の外を見ていた。

 俺の型に熱を感じる。俺はその方を向くとそこには緑園先輩がいた。


「よっ。惜しかったな」


「……はい」


違う。惜しくない。この作品を作った時から俺は綾音に負けていたんだから。


「……お前、この作品は綾音よりも面白く無いって思ってるんだろ。少なくとも、綾音よりも自分は劣ってるって」


……


「けど、私は好きだったよ。お前の作品。まぁ、私が教えたからちょっと私の好みも入ってかもだけど。それでも私は面白いって」


「お世辞はいいです。つまらないならつまらないって言えばいいでしょう」


「え?」


「だってそうでしょう! 俺がもっと! パソコン部の求めている物をかけていたら! 

 俺がもっと! キャラを作っていたら! そしたら!」


「もし、それをして輝は納得がいった? パソコン部のニーズに答えて世界感や雰囲気を作り込みたいのにそれを疎かにしてキャラを作り込んだ、それで納得した?」


「……それは……」


「読者のニーズに応える。勿論、それは大事な事だよ。

 読まれる工夫をせずにただ好きな事を書く。

 まぁ、それもいい事だと思うけどそればかりする作者は2流。

 けど、流行りに乗ってただ中身の無い物を書く作者は3流以下だと私は思う。

 アンタは、自分の作った作品に相手のニーズを考えなかったの? 読まれる工夫をしなかったの?」


「そんな事」


そんな事ある訳ないだろう!!

 考えたさ! 読む人がこの作品があるって信じれるように戦場のシリアス差のリアルを追求した!

 シューティングゲームだから主人公達が乗るのを戦闘機した!

 自分が好きな作品の要素を足した! 主人公は俺の好きなヒロインをトコトン好きになって! ヒロインを何がなんでも助ける一途な奴にした!

 

「その顔。ちゃんとしたんじゃん。だったら胸を張りな。

 輝はちゃんと努力した。私が認める。

 ただ……今回は選ぶ奴が綾音の作品を求めていただけなんだよ。

 だから」


そう言い、緑園先輩は俺の頭に手を当てクシャクシャに撫でた。


「そんな顔をするなよ。泣きたい時は泣きな。ここにいる奴は誰も笑わない。だって、アンタの努力を知ってるんだから。

 だから泣くだけ泣いて、言えるだけ愚痴を吐きな。

 ……そして、泣き終わったらもう一度ペンを握る。

 そしたらきっともっと良いものが書けるからさ」


俺は必死に歯を食いしばった。

 けど、喉から音がでる。目からは涙が溢れる。


悔しい! 


「うぁぁぁぁーーーー」


俺はこの年になって年甲斐も無く泣いた。


         ♢♢♢


あの後は、緑園先輩に色んな愚痴を吐いた。

 緑園先輩はただ相討ちを打つだけだったけど。その時はそれが凄く心地よかった。


 そして、朝目覚ます。鏡に向かって自分の顔を見る。


「よし!」


俺は頬を軽く叩く。


「お! 何何、朝から。昨日は目を真っ赤にして泣きながら帰ってきたくせに。

 今日はやけに元気ね。憑物が取れたみたいに」


「! 泣いてねーよ!」


……多分。うん。大丈夫だよな……

 あの時、緑園先輩に全部言ったし、全部出したしなー。

 いや、けど……


「ま、何があったかは聞かないけど。アンタはそのままの顔でいな」


そう言い椿ねーちゃんは奥に戻っていった。

 そして、俺は部室に向かう。

 今回の作品はダメだったけど、まだプロット段階!

 もっと! 作り込んでアレを綾音よりも面白いデビュー作にしてやるって決めてんだよ!


        ♢♢♢


と、意気込んで来たものの。そんな事お構いなしに世界は残酷で無慈悲だ。

 だってその証拠に


「はーはー。買って、買ってきましたー」


「うん。ご苦労様ー」


俺は部室からダッシュで綾音にジュースを買いにいっるんだぜ。

 そう、俺と綾音は約束を交わしていたのだ。

 俺が勝ったら綾音のファーストキスを俺が貰う。

 綾音が買ったら俺がパシリになるという。

 クソ! コイツ、ちゃんと覚えてやがった! 

 因みに、昨日あんなに優しかった緑園先輩は俺を見てニヤニヤしている。

 クソー! 無慈悲だー!


と、そこで


「入るよー」


と部室に来客が来た。

 それは意外や意外なんと。鷹ノ内先輩だったのだ。


「あれ? どうしたの? 鷹ノ内?」


「ん? ちょっとねー。報告に」


「報告?」


「そっ。えーと昨日2人いたよね。その男の方」


ん?


「俺、ですけど」


「あーいたいた。じゃ、えーと。ま、面倒なの省いて。

 君のシナリオ、コンクールに応募と文化祭出すゲームのシナリオなったから」


え……今なんて……


「じゃ、そういう事で」


「「「「いや! 待て待て待て待てー!」」」」


部室にいる全員で鷹ノ内先輩を部室に呼び出した。


「え? どういう事?」


先人を切って荒神先輩が聞く。


「だからー……まぁ、初めからは 話すか。

 実はねー」


と、鷹ノ内先輩の説明は色々と周りくどかった「脱線したりした為要点を纏めると

 何でも、今回のゲームシナリオはパソコン部が定期的に出しているゲームサイトに出しているゲームシナリオだったらしい。

 そして、俺と綾音の作品は多数決を出すとほぼ同数。

 そして、いくら議論しても人数の変更は無く。

 「なら、いっそどっちもすれば」と発言の元ストーリーがサッパリし、キャラの豊富な綾音の作品をサイトの方に。

 そして、雰囲気や設定。長編ストーリーとしても続けられ、そして完結する事が見える俺の作品をコンテストに応募するという事になったらしい。


「という事で、輝と綾音はちょくちょくこっちに顔出してストーリーを描いたもらうことになるからー。

 じゃっ」


そう言い、鷹ノ内先輩は出ていった。

 辺りは騒然となる。

 俺の頭の中も急な事過ぎて頭が追いついていない。

 そして、やっと俺の頭が理解してくれた。

 それに伴って顔が綻ぶ。体が緊張と違う熱さにを感じる。

 そして


「よっしゃーーーーーーーーー!!!!!!!」


俺はその場でガッツポーズをした。

 それをきっかけに他の先輩からも口々に

「おめでとう」


「凄いよ」


と称賛の声が上がり髪をクシャクシャにする。

 俺はふと緑園先輩を見た。

 緑園先輩は親指を立て突き出しウインクをする、

俺も親指を立て返した。

 




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