第12話プレゼン!!

「で、出来たー」


鷹ノ内先輩からのゲームのストーリープロットの依頼から2週間。

 朝5時。俺は、やっと完成させた。

 そして、そのままその場に突っ伏した。

……1時間と30分後。


「おーい起きろー」


「うぅ。ねーちゃん」


「もう、朝だぞー。って、寝るな! ? もしかして、さっきまでそれを書いてたの?」


俺は少しだけ頭を上げる


「そうだよ」


「ふーん。って! 寝るな! 今日は大事な日なんでしょ! 

 ほら、シャワーでも浴びて目覚ましてきな」


「り、了解」


「あぁ。フラフラになって大丈夫かな? けど、楽しそうで良かった」


          ♢♢♢


日曜日。

と言う事もあって騒がしい教室はシンと静まり返っている。

 だが、この語手ノベル部はそんな事は無い。

つまり、いつも通り騒がしい。

 ってあれ?

 

「あの、先輩。今日って俺の奴の締め切りですよね?」


「うん? あ、そうか。なぁ、荒神ー今日プロットの締め切り日みたいだけど何かアイツらから聞いてるか?」


「それなら、多分ソロソロ」


その時ドドドドという凄まじい足音が聞こえてきた。

 そして、バシッとドアが開く。


「こんにちはなのです!」


 その少女は、ちんまりとした女子だった。そして、その背の低さを公言するように制服の裾は合っていない。


「だ、誰?」


緑園先輩は、荒神先輩に聞く。


「さぁー」


という事からどうやら荒神先輩が読んだ訳じゃ無いらしい。

 荒神先輩はその元気な少女に声をかける。


「えーと、君は?」


「はい! 私は、パソコン部の白雪椎名しらゆきしいなと言います!」


……何か、凄い子が来たなー。と、この部室にいる人間全てが思った。

 その、証拠に普段あまり表情が動かない荒神先輩は苦笑いをしている。


「えーと、白雪……さん?」


「あ! 椎名で結構です! 私は白雪という感じでは無いので!」


「そうか、それじゃぁ椎名で。椎名は、パソコン部の使いって事で良いんだよな」


「はい! という事で来て下さい」


        ♢♢♢


という事で、歩いて数分。パソコン部の部室PC室に向かった。


「入るぞー」


緑園先輩が先導して扉を開く。

 そこはまるで会議室のように変更されたパソコン部だった。

 そして、その中央最奥にボスのように座っている鷹ノ内先輩がいた。


「あー。待ってたよ」


「鷹ノ内。何だこの部屋は?」


「見て分からない? 今からそこの2人にはプレゼンをしてもらおうと思って」


「プレゼン?」


プレゼンって確か、あの人前で発表するあれだよな。


「また、周りくどい事を」


「いやー、俺は良いんだよ。けど、後輩がさ」


「当たり前ですよ。私達で読んでやっても何処にそこの作品にどんな魅力があるか分からない可能性もあります。

 それに、その作品を書いた人と知り合いだった場合、贔屓すら可能性すらありますから」


と、ショートカットの女子が言う。制服から多分俺らと同じだろう。


「誰だ? その人」


「あ、申し遅れました。私1年、川端里緒奈かわぼたりおなと言います」


「という事だから」


「成る程。……どうしようか?」


荒神先輩は俺達に降る。

 いや、どうしようかと言われても……


「じゃぁ、良いですか?」


と、そこですかさず綾音が手を上げる。

 本当、コイツスゲーって思うよ。こんな時も冷静に言えるんだから。


「良いか?」


荒神先輩が俺に降る。いや、良いも何も。

 いや、待てよ。ここでアイツのやり方を知ってれば俺もそれを真似をすれば良いか。ぶっちゃけ俺プレゼンやった事ないし。

 うん。そうしよう。結構セコイかもしんねーけど。


「良いですよ」


「だそうだ。じゃぁ、綾音から。頑張」


「はい」


そして、綾音は堂々と皆の前に立つ。

 そして、綺麗に一礼。コイツ、なんか手慣れてる。

 

「私の作品は……」


そして、空間が歪んだ。


♢♢♢


綾音の作った作品は、ジャンルファンダジーの作品だ。

 不思議な空間に男の子デルタと女の子アルファがいる。

 この2人は、歴史上に存在した偉人達の力を借りてデジタルに存在する人の思いを守る守護者。ガーディアンの見習い。

 遅いかかる敵は、デジタルの世界から人の気持ちを汚す存在。ウイルス。

 ガーディアンの見習いのアルファとデルタは先輩ガーディアンや同期と共に次々と遅いかかるウイルスを倒していく。

 そして、自分達は何者なのか? ウイルスとは何者なのか?

 という、世界の疑問に突き進んでいく。

 

 というのが、大まかな流れだ。

 

そして、その説明に伴い白い鎧を装着した巨大なランスと盾を持った青年、と同じく白い鎧を装着し盾と剣を持った少女が現れる。

 そして、それに伴い次次と現れるガーディアン達。

 その数およそ10。それもその一人一人が作り込まれている。


 俺は素直に

「面白そう」

と、思ってしまった。勿論、まだストーリーは無いため、現われているキャラは離さない。

 ただそこにいるだけだ。だが、その作り込まれたキャラを見ているだけでも楽しい。

 色々な想像ができてしまう。


         ♢♢♢

 およそ20分弱で綾音のプレゼンは終わった。


「ゲームのシナリオだから世界感をあえてさっぱりにさせたな。アイツ」


と、荒神先輩ポツリという。


「ん? お前が教えたんじゃなおのか?」


と緑園先輩は聞き返す。


「まさか。俺だったらもっと世界感も作り込むよ。第3世力とか。

 俺が教えたキャラのことだけ。それもキャラの甘さを指摘しただけで、あんまり中身は知らなかった。

 多分、シナリオの方は自分で調べたんじゃ無いのかな?」


と、荒神先輩は言う。

 アイツ。本当にこれにかけてんだな。俺は……


「手が震えてる」


その声と共に、スッと俺の手を押さえてくる手があった。 

 緑園先輩だ。


「気負うなよ。お前はこの私が教えたんだ。お前にはキャラの作り方は教えて無いし、あんまり見てやらなかった。

 けど、その分他の事を教えた。お前の武器をガツンとぶつけてこい!」


ニカッと緑園先輩は言う。

 そうだ。俺 確かに俺は綾音よりもかけてねーかもしれない。

 けど、だからって負けると決まって無い!


俺が部屋の中央に行く途中綾音はニヤリと笑った。そして口パクで


<かっ た>


と言う。だから俺は口パクで言い返す。


<み と け よ>


と。


と、まぁ、意気込んでいてもやっぱり前に行けば緊張すんわけで。

 ど、ど、ど、ど、どうしよう。ダメだ頭が回らない。

 声が出ない。な、何を言えば良いんだ? 


          ♢♢♢


「アイツ、テンパってんなー」


荒神は輝を見ながらそう言う。その声は「あーあ」と言う感じに顔を歪ませている。


「まぁ、だろうな。しゃーねー」


緑園は、はぁ、とため息をつき。そして


        ♢♢♢


「しっかりしろー!」


緑園先輩の声がする。俺はそっちの方を向くと緑園先輩はウインクで返す。

 そうだ、やるんだ! 

 それに、ここで負けたら俺は綾音の奴隷なわけだし。

 負けられるかよ!


「俺の作品は」


空間が再度歪む。


          ♢♢♢


俺の作品は、簡単に言うとミリタリーだ。

 主人公は帝国に反旗を翻した革命軍の1人。

 ある日、任務で戦闘機に乗り敵を駆逐する。すると、最新機が主人公を襲う。

 激しいバトルの末、両者は墜落する。そして、間一髪助かった2人。

 主人公が顔をあげ自分を落とした奴をみると、ソイツは自分と同い歳ぐらいの少女で、そして主人公の死んだ幼馴染と瓜二つだった。


 おれの説明に合わせて空間に主人公とヒロイン、そして、2人がのる戦闘機が現れる。

 俺は丁寧に説明していく。俺の作品はというか、緑園先輩に教えてもらったのは世界感、というか作品の雰囲気だ。

 それを、上手く相手に説明する事が出来れば勝つ。

 俺は説明している時綾音と目があった。綾音は鋭くこっち見返す。まるで俺を射殺すような。


俺は俺の作った作品の主人公の姿になり飛行機に乗る。

 と、その時戦闘機にアラームが鳴る。それは、敵の接近の合図。

 そして、敵は綾音だ。ただし綾音も綾音が作った作品のヒロインの格好だ。


「中々やるじゃ無い! けど! 勝つのは私よ!」


「うるせー!」


俺達は、近づき離れて俺は銃弾を綾音は斬撃を飛ばし戦う!

 そして、螺旋を描くように俺達は上に上昇する。


「ウォォォォォォォォォーー!」



「ハァァァァァァァーーー!」


         ♢♢♢


俺のプレゼンはおわった。




 

 




 

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