第11話会食!

「お願いします!」


「私も!」


「お、おぉ」


「り、了解」


「あーまたやってるねぇー。最近、輝君と綾音さんの見せてくる回数多くなったよね」


「まぁ、あんな事が有ればやる気はでるでしょ。それに、緑園達がついていけてないみたいだけど」


♢♢♢


「ふぅー」


「疲れたー」


綾音と輝は帰りやっと、2人は楽になったという感じだ。そして、2人とも机にグデーと突っ伏している。


「お疲れー」


そこに菊川がすかさず2人にお茶を差し出す。


「大変だねー」


「まぁね。にしても、あいつらがあんなにポンポン書き換えた奴を持ってくるとわ」


「俺も予想外。と、どうする? 俺達もやる?」


「いや、それよりお腹空いた」


と緑園はノビをする。


「まぁね。……じゃぁ、ご飯食べに行こう」


と、いう事でそれぞれ親に連絡を入れ部室に鍵をかけて学校を後にした。

 季節はまだ春。真っ暗な夜道を4人は雑談をしながら歩く。

 そして、着いたのは天神商店街。時代の波により寂れた商店街が多いこのご時世。

 しかし、ここはそんな時代に逆らうように賑わっている。

 因みに、少し前に訪れた本屋もここにある。

 4人は、慣れた感じでスイスイと入り組んだ商店街を歩き、着いたのは一見の定食屋だった。

 緑園がドアを開けると


「いらっしゃい。って、アンタ達来たんだ」


と、緑園と同じ年の少女が出迎えてくれた。少し癖のある髪を結びエプロンをした少女だ。


「よぉ、ルナ。食いに来た」


と、荒神が気軽に声をかける。

 

「別に食べに来なくても良いんだけど。で、何名様?」


「4人」


と荒神が答える。

 それを聴くと、ルナは、はぁーとため息をつきげんなりした顔で


「じゃぁいつもの席でどうぞ」



と良い4人は迷わず1番奥の座敷の席に座った。

 そして、座るとメニューをサッと見ると


「おーい、ルナー。注文!」


と荒神が呼ぶ途中で来た。


 この4人とルナの関係は、かなり密接である。何たってルナがいなければ語手ノベル部が生まれる事は無かった。

 それどころか、この定食屋が無ければこの4人が集まる事すら無かっただろう。

 その為、4人は何か有ればここに集まり食事をする。それがこの店に対する恩返しだと思っているからだ。

 ただし、この店主の娘であるルナとしては食事をし終えても中々帰らない為、多少迷惑だと思っているが4人が気付く事は決して無い。


注文をし終えてると少し雑談をし見計らった所で荒神が切り出した。


「で、菊川。何で俺をここに誘ったんだ?」


「アレ? ばれてた」


「バレバレ。ていうか、ここにくる時は何か小説の話をする時だよ。

 それに、お前は俺らのバランサーでストッパーなんだから何か企んでいることぐらいは分かるよ」


と、荒神がいつもの平坦なしかし、何処か楽しそうに言う。

 そこに嬉々として緑園が割り込む。


「そうそう。私がバカな事をして、荒神がそれを完璧にする。んでもって菊川がそれを止める。それが私達のパターンでしょ」


「まって! 私は!」


「リンはー。火薬庫?」


「どう言う意味かな。荒神」


リンは、ニコリと微笑む。しかし、その笑顔は芯が冷えるような冷たい笑顔だった。

 悪寒を感じ荒神は、そっぽを向く。

 と、そこにドン、と皿を置く音が響く。ルナだ。

ルナは笑顔で


「店内ではお静かに」


と、笑いすぐに真顔に戻る。

 

      「「「「はい」」」」


4人は、答えるしかなかった。結局この4人はルナにはい頭が上がらないのだ。


「と、話を戻そう。何でここに来るように言ったわけ? 菊川」


「あー、それは荒神と緑園の小説のプロットを見ようかな? って。2人とも、輝君達に時間割いてあんまり自分の時間ないでしょ。それに、2人とも行き詰まって見るみたいだし」


「う、バレてた。ハハハハ」


と、緑園はから笑いをする。


「まぁね。緑園はずっとプラモ作ってるし。荒神は最近本ばっかり読んでらんだから分からない訳がないよ」


「は、はい」


「流石だね。じゃ、やろうか。飯食いながら」


と、いう事で4人は


「「「「いただきます」」」」


と、良い各々自分の頼んだ物に箸を刺す。

 と、その瞬間空間が歪む。


「じゃぁまず俺から」


と頼んだ海鮮丼を一口食べる。すると荒神達は空を飛び地面には巨大な島が浮かび上がる。


「舞台はこの人工島。ストーリーは、簡単に言うと主人公とその仲間は自分達じゃぁ操れない力を持ってる訳よ。

 そして、それに苦しむ。そこをヒロインが傷ついた心を持った主人公達を助けるって感じ」


「力って特殊能力みたいな?」


と、緑園はチキン南蛮を食べながら聞く。


「うん。けど、使うとデメリットとか、欠点を持ってることにしようかなーって思ってる。そんで、バトルは今回普通の剣と銃のアクションを描くつもり」


「へー、なんか以外。荒神の事だから、またガチガチのファンタジーかと思ってた」


と、菊川はカツ丼を食べながら言う。


「うん。今回は、俺のいつもの作風とは違う感じにしようと思って。

 けど、どうしてもキャラがねー」


「珍しいわね。アンタがキャラで悩むなんて」


と、リンはおそばを食べながら言う。


「まぁ、俺も迷う時ぐらいあるよ。その、今回の世界観は結構作り込むからさぁー。それに負けないキャラを作ろうと思うと中々。特にヒロインが」


「ヒロインってビジュアル決めてんの? なんだったら描くよ。ラフでだけど」


「ん。じゃぁ頼む。えーと、髪は肩ぐらいで顔立ちは少し幼い感じ。あ、けど年は16ね」


「こんな感じ?」


と、リンが今し方書いた絵を見せてくれる。


「そ、そんな感じ」


それに菊川と緑園も見る。


「成る程。結構、気の弱い感じ?」


「お、良く分かったね菊川。そうだよ。けど、それだけじゃぁ弱いかなーって」


「だったら、何か一本芯がある奴で何かをきっかけに一時的に強くなるってのは?。私の今から書くのがそんな感じだし」


「成る程。けど、そうすると……」


「だったら……」


♢♢♢


「ありがと。それじゃぁ。次は緑園の」


「ちょっと」


「ん? 何? ルナ」


「ん、何ルナ、じゃ無いわよ。こっちは閉店なの。さっさと、出て行ってくれる」


「え、」


4人はバット見る。時間は8時。いつもならとうの昔に帰り着きくつろいでいる時間だ。

 そして、この定食屋の閉店の時間だ。


「という事で、出て行って」


それから4人はほぼ追い出される形で定食屋を後にした。


「……どうする? 緑園。なんだったら、明日時間作るけど」


「いや、いいよ。私は私でする。じゃ、またな」


と言い緑園は帰路を歩いた。


「なんか、緑園元気無いわね」


「ま、書きたくても書けないっていうのは予想以上に辛いからね。

 けど、それを乗り越えるのは緑園自身だし。それに、アイツが良いっていってるんだ。乗り越えれるように願うのが俺らの仕事でしょ。

 少なくとも、緑園が助けを呼ぶまでは、さ」


「アンタ、所々冷たい所があるわよね」


「……そう? ま、良いや。俺も帰るよ。じゃぁね」


そう言い荒神は帰路を歩いた。


♢♢♢


緑園は悩んでいた。

 本来ならこのもやもなやとしたこの晴れない気分を人にでも言って晴らすべきなのだろう。

 しかし、それは出来ない。何故なら、それを今したところで今の緑園にはどうしようもない事がわかっているからだ。

 本来の緑園なら小説の話をするだけで、否していなくても面白い物を生み出す発想力の持ち主だ。

 しかし、今は何も起こらない。しかし、小説は書きたい。

 了解は今、その二律背反に苦しめられている。

 しかし、緑園は知らない。その苦しみから解放するヒントをもう持っている事を。

 そして、その苦しみから解放されるまで後……





 

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