第87話 『蜥蜴(とかげ)』 Megさん

〇作品 『蜥蜴(とかげ)』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861453370142

 

〇作者 Megさん


【作品の状態】

 短編(10,000字程度)、完結済。


【セルフレイティング】

 なし。


【作品を見つけた経緯】

 時告げ鳥さんという方のレビュー一覧を拝見したところ、この作品の紹介が目に留まりました。


【ざっくりと内容説明】

 曲芸を披露する一座の一員であるミオ。彼女は胡琴弾きを担当しているのですが、曲を間違えて弾くことがあり、そのせいで芸をしている人たちも失敗することがありました。そして、この日も間違えてしまうのです。


 一座の仲間であり、曲芸師のユンはミオを励ますように「気にするなよ」と言ってくれるのですが、ミオはそれを受け入れられません。何故なら自分が曲を間違えて弾いたせいで、ユンに怪我をさせてしまったのですから。


 ユンは落ち込むミオを励まそうと声を掛けますが、上手く伝わらず、彼女は「ここにはいられない」と、一座から離れて歩いて行ってしまうのです。


 どんどん歩いて行ってしまったミオ。気づいたときにはすでに森のなかで迷子になっていて、雨も降ってきてしまいます。どこか雨宿りをするところを探していると、近くの洞窟から胡琴の美しい音色が聞こえてくるのです。のちにその者が仙人の析易せきえきと分かるのですが……。胡琴奏者であるミオと析易せきえきの寂しいお話です。


【感想】

 幻想的で美しい、けれども悲しさの残るような作品です。そしてこれは、ミオの救いの話というよりも、もう一人の登場人物「析易せきえき」に差し伸べられた「救いの手」の話なのかなと思いました。


【ざっくりと内容説明】でも書きましたが、主人公は一座で胡琴弾きをしているミオ。ですが胡琴をあまり上手く弾けないのか、今回の曲芸の披露でも失敗してしまい、仲間に怪我を負わせてしまうのです。

 自分の不甲斐なさや情けなさ、胡琴を弾くのが好きだからこそ、上手く弾けないことへの悔しさなどもにじみ出ていて、何かを極めようとしている人たちにとっては、きっと共感できるものがあるのではないかなと思います。


 そののち、ミオは美しい音色を奏でる胡琴の奏者と出会い、彼が仙人の析易という人物であることを知ります。析易の願いもあってミオは友となり、しばらく析易の住む場所に滞在していくうちに次第に心を許していくのです。


 自分よりもずっと上手に胡琴を弾き、同じように孤独で寂しい思いをしている析易。彼と話しているうちに、ミオは「自分を理解してくれるのは析易だけだ」と感じるようになっていきます。

 しかし、本当の姿の析易は違います。彼は自分を認めない者を遠ざけ、力によって屈服させていたのです。それはミオの信条とは根本的に違います。


 自分だけを認める者だけを残し、それ以外を排除する析易。

 彼と共にいたミオはどうなってしまうのか。そして析易は救われるのか。


 幻想的で美しい描写にも引き込まれますが、物語に潜む「問い」を考えるのがお好きな方なら、きっと楽しめると思います。


 今日は『蜥蜴(とかげ)』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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