6月 June

第38話 『モンマルトルはお好き』 柊圭介さん

〇作品 『モンマルトルはお好き』

https://kakuyomu.jp/works/16816927859291128846


〇作者 柊圭介さん


【作品の状態】

 短編。完結済。


【ざっくりと内容説明】

 パリ北部、セーヌ川北岸にある地区「モンマルトル」の見どころが詰まった、観光案内書のような作品です。


【感想】

 フランスの文化や歴史には興味があっても訪れたことのない私にとって、書籍やメディアを通してそれらのことを知ることは、心躍るものがあります。


 当作品はフランスに住んでいらっしゃる作者さんが見た、モンマルトルの姿を書き記しています。カクヨムさんでの投稿ですから、当然言葉だけの情報のはずなのに、建物や駅、何気ない小路や坂でさえも、美しさや趣などが感じられ、知らず知らずのうちにその魅力に惹き込まれていきます。


 全4話で構成されていますが、私が特に印象に残っているのは、3話目の『モンマルトルに愛された女』です。

 私は西洋絵画について学んだことがあるのですが、「シュザンヌ・ヴァラドン」という女流画家のことは初めて知りました。


 私が知る西洋絵画で活躍した女性として最も印象に残っているのは、「ベルト・モリゾ」(フランス)です。

 印象派の時代に、「筆触分割」という技法を生かした、柔らかな描写が印象の作品を数多く残しています。特に、女性ならではというのか、自身の家族写真ならぬ家族絵も残していて、それを見るたびにとても穏やかな気持ちになります。


 一方で、「シュザンヌ・ヴァラドン」の絵は、作者さんの言葉を引用すると「大胆なラインと鮮やかな色遣いが特徴である。人物は太く意思をもってくっきりとふちどられ、線に迷いがない(『モンマルトルはお好き』より)」とのこと。その上、女性だからと尻込みすることなく、裸婦を描き、男性のヌードまで描くほどの奔放さ。しかし、こういう人こそが新たな道を切り開き、次の世代が一層自由な作品を描きやすくなる上、さらに良い作品が生まれるきっかけとなるのだろうと思います。


 上記に書いただけでも、普通の人が想像もしないような生き方をした「シュザンヌ・ヴァラドン」。世の中の底辺に生まれ育った彼女が、どうやって画家としての人生を歩み、成功させたのか、というお話は興味深かったです。まさに、モンマルトルという土地柄が生み出した画家なのだろうと思います。


 そのほかにも興味深いお話が、短く端的にまとめられております。フランスの美しい風景に勝るとも劣らない、作者さんの洗練された言葉に魅了されること間違いなしです。


 今日は『モンマルトルはお好き』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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