第37話 『消しゴムと卵焼き』 青瓢箪さん

〇作品 『消しゴムと卵焼き』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893527007


〇作者 青瓢箪さん


【作品の状態】

 短編。完結済。


【作品を見つけた経緯】

『摘み忘れた花』を読んだあと、『消しゴムと卵焼き』というタイトルが気になって読みました。


【ざっくりと内容説明】

 昭和。現在の給食で出る牛乳が、まだ脱脂粉乳だったころ、貧しい家の少女が「私」のお弁当から卵焼きを盗むお話。


【感想】

 語り手の「私」は、孫が「あ、おじいちゃん、消しごむ取って」という何気な一言から、自分が幼い子どもだったときのことをふと思い出します。「私」の子ども時代は、戦争が終わった1950年代です。そのころの日本が貧しかったことは、きっと想像に難くないことでしょう。


 その日は給食がなかったので、「私」は母に作ってもらったお弁当を持参します。お昼になり教室にある自身の机で食べていると、一人の女子が通りかかるのです。彼女はそのとき、「私」の机の上に置きっぱなしにしていた消しゴムを、不意につかんで落とします。「私」はその行為に苛立ちのようなものを覚えますが、そのあとにお弁当に入っていたはずの卵焼きがなくなっているのに気付くのです。

 犯人が誰なのかは明白ですが、ふと「私」は彼女の家が貧しかったことを思い出します。

 そのあと「私」がどういう行動に出たのか。それは是非、本編を読んで確認してみて下さい。

 落ち着いた文章と、ちょうどこのころの時代背景がよく合っていて、読みやすいですし、卵焼きの描写が素敵で読んでいると食べたくなってきます。

「私」が卵焼きを盗んだ女の子に寄せる気持ちに対しても、見事に回収されていて、温かくすっきりとしたお話です。


 多くの人の生活が豊かになった今でも、貧しい人たちはいて、学校の給食費も払えない家庭の人もいます。色々な理由はあるにせよ、「貧しい」というのは心を荒ませるところがあります。

 そのなかで「私」が取った行動。それはきっと少なからず少女のなかで、温かいものとして残っているのではないかと思います。


 今日は『消しゴムと卵焼き』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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