9月 September
第26話 『夏の陽《ひ》燃えて』 吾妻栄子さん
〇作品 『夏の
https://kakuyomu.jp/works/16816700426512602279
〇作者 吾妻栄子さん
【作品の状態】
短編・完結済です。
【作品を見つけた経緯】
吾妻栄子さんの自主企画「ヒロインはジャンヌ・ダルク」で見つけました。
【ざっくりと内容説明】
シャルル7世の視点から見た、ジャンヌ・ダルクに関するお話です。
しかし彼女が戦いで活躍しているような話ではありません。すでに火あぶりの刑で亡くなった知らせを、シャルル7世が使者から聞くところから始まります。
【感想】
ジャンヌ・ダルク。
実在した人物であり、百年戦争でフランスの危機を救った16歳の少女――。
これだけでも「ジャンヌ・ダルク」には特異な人、特別な人という印象があります。
しかしフランスに尽くした彼女の最期は悲しいものです。コンピエーニュの戦いでブルゴーニュ公国の捕虜となり、シャルル7世に見捨てられ、イギリスに引き渡されます。そこで魔女裁判(宗教裁判)に掛けられるのですが、男装をして剣を振るジャンヌは異端とされ、火あぶりの刑に処されるのです。
私は彼女の存在を知り、歴史の流れを知ってからというもの「何故、シャルル7世はジャンヌを見捨てたのか」ということが、ずっと疑問でした。
――フランスの危機を救ったのに何故?
――ジャンヌがいたことで、シャルル7世は王となったのでは?
しかし世界史の教科書には、歴史の流れ以上のことは載っていません。もっとも、ジャンヌに関する書籍を探し、読んで調べればよかったのですが、色々な理由を付けをして先延ばしにしていたら、そのうちに忘れ去っていました。
しかし今回、偶々自主企画で「ジャンヌ・ダルク」という名前が目に入り、吾妻さんの『夏の
もちろん、内容はどこまで本当のことかは分かりませんし、シャルル7世の気持ちは、資料を読んだ際の彼の生活態度などから、作者さんが想像したのだと推察します。
しかしこの作品を通してシャルル7世が、彼女を見捨てた先にあった苦悩を感じられたことは大きかった。私のなかで止まっていた想像の形成が再開したことで、何となく「ジャンヌ・ダルク」の周りにあったもやもやとしたものが、緩和されたように思えたのです。
農村出身の彼女は、フランスの為に戦い、僅か19歳でその生涯を閉じます。それも火あぶりと言う、非人道的な刑によって。
もしシャルル7世が助けていれば、彼女はもっと素敵な人生を歩めたかもしれない。その後も戦いに赴いたかもしれませんが、フランスでは英雄だったわけで、少なくともこんな風な最期にならなかったのではないかと、それまでは考えていたわけです。
だからこそ、この作品のなかで「何故シャルル7世がジャンヌを見捨てたのか」ということや、その後の彼の生活、また心の中に生まれる苦痛や、後悔を読むことが出来てよかったなと思いました。
また、この作品の特徴は場面一つひとつゆっくりと進むところです。しかし、その描写がとても丁寧で、短いなかに深いものを感じます。
じっくりと、しっかりと読める作品です。興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。
今日は『夏の
それでは次回、またお会いしましょう。
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