第22話 『浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル』 初音さん

〇作品 『浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル』

 https://kakuyomu.jp/works/16816410413965779576

 

〇作者 初音さん


【作品の状態】

 連載中です。


【作品を見つけた経緯】

 初音さんの完結済作品である『浅葱色の桜』の続編であるため、引き続き拝読しています。


【ざっくりと内容説明】

 新選組のお話です。

 新選組は幕末期に結成された浪士、つまり「仕える主君を失った武士」の武力組織のことです。近藤勇や土方歳三を中心として尊攘(天皇を尊崇し夷狄いてきを排斥しようとする思想)・討幕派を弾圧しました(参考資料『大辞林』)。

 新選組と言えば、元々武士だった人の集団ですから男性しかいないはずです。しかし、ここに登場するのは「島崎朔太郎」と名乗る、女剣士「近藤さくら」が主人公なのです。男顔負けの剣の腕前なので、彼女の戦うシーンは読むたびにシビれます。


【感想】

 『浅葱色の桜』の続編として書かれた、今作。

 「『浅葱色の桜』を読まないと、どうせ分からないんでしょ」と思ったあなた。

 ご安心ください。この作品は、『浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル』からでも読めます!


 まず新選組が活躍した時代の物語ということだけを踏まえて、第一話にあたる「その女、島崎朔太郎➀」の始まりを読んでみましょう。


 京の町が物騒になったと言われて数年が経った。

 人々は、怖い怖いと言いながらも逃げ出すわけではなく、諦めたように、それでも暗くなりすぎることもなく、日々を営んでいた。町には活気があり、往来には元気な挨拶や会話が飛び交っている。(『浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル』より引用)


 当然読者は、江戸時代の京の町を想像します。そこで、一人の女が町を歩く武士に声を掛けるのです――。


 ――お武家さま、落とさはりましたえ。

 そう言って女は手ぬぐいをその武士に差し出しますが、彼は「俺のではない」と言います。すると女は次に、

 ――なんやこの手ぬぐい、川辺のとこにある加茂屋さんのやわ。届けはったらええんやけど、少ぉし遠いわなあ。


 と、言って「自分は届けたいけど、難しい」ということをほのめかします。すると男は「ちょうど加茂屋に泊まっとるんや。わてが届けたる」と言ってくれるのです。女は武士の優しさに甘え、手ぬぐいを預けて届けてもらうのですが、これには事情があるのです。

 武士に手ぬぐいを預けた女は、男が去ると、すぐ横にある路地に待機していた沖田総司に低い声でこういうのです。

「聞いていたな。あの男で間違いなさそうだ。井上三番隊に知らせて体制を整えろ。私はもう少し奴を見張る」

 ということで、彼女は声を掛けた武士が自分たち新選組にとって斬るべき相手かそうでないかを判断していたんです。

 って、説明しましたけれど! この女性何者⁉ 只者じゃない!

 沖田総司といえば、新選組についてよく知らない人でも名前くらいは聞いたことがあると思うのですが、それくらい新選組にとって重要人物なわけで、この女性はその沖田に指示を出すくらい新選組の中で上の人間ということになります。

 彼女の名は「近藤さくら」、そして新選組の隊員として男でいるときは「島崎朔太郎」になるのです。今回は訳あって女装……じゃなかった、女性に戻っていますが、新選組でいるときは「島崎朔太郎」で仲間と行動を共にしています。


 「島崎朔太郎」でいるときは当然男のように振舞っており、月代さかやきを入れ、帯刀もしています。そして彼女のすごいところは、斬り合いになる状況に置かれても冷静に対処し、男にも負けない剣術を心得ているところです。

 今回も第二話にあたる「その女、島崎朔太郎②」で、すでに彼女の剣術と度胸がある場面が登場するので、是非読んでいただきたいです。

 本当に、格好いいですから!


 新選組について書かれた話も世には沢山ありますし、「新選組に男装していた女がいた」という逸話を元に書かれた作品もあるのですが、書き手が変わればその解釈も変わります。好きな人なら他の作品と比べて読むのも一興ではないでしょうか。


 今日は『浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。


【追記】

 こちらも合わせてこちらもどうぞ。

『浅葱色の桜』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885795068

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