第18話 『頬紅桃』 天野 蒼さん

〇作品 『頬紅桃』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888317722

 

〇作者 天野 蒼さん


【作品の状態】

 短編・完結済です。


【ざっくりと内容説明】

 古代中国を舞台とした、民話のようなお話です。

 物語の主人公である李韓りかんは、都落ちした官吏でした。そのため彼は故郷に帰ろうとしていたのですが、その道中で仙人のような装いの行商人に出会います。


 彼が道に並べた品を、李韓がよくよく見ていると、どうやら都で起こった反乱に乗じて盗んできたということが分かるのです。李韓は官吏という職業柄、これを放置するわけにはいかぬと思い、仙人のような男を問いただすと、彼は見過ごしてもらう代わりに小さな青磁の鉢を取り出して李韓に見せるのです。


 その鉢の中には植物が植えてあったのですが、まるでうら若き娘のような姿をしていました。植物の名は「頬紅桃ジャホンタオ」。


 李韓は、変わった姿をした頬紅桃ジャホンタオに一目ぼれをしてしまい、行商人の行いを見逃す代わり、持ち帰るのです。


 故郷に帰った李韓は、頬紅桃ジャホンタオと共に生活をするのですが、果たしてどんな結末が待っているのでしょうか。


【感想】

 こんなことを言ってしまうと、随分と上から目線の感想だなと思われてしまうかもしれませんが、あえて申し上げます。この作品は、質のいい物語です。


 言葉遣いが巧みであり、舞台になっている古代中国の風景を自然に表現。短編と言うことで、主人公に対する情報が必要最低限となっているのですが、それが登場するタイミングがいい位置に置かれ、後に続く物語の展開を深く想像させてくれます。


 また、「頬紅桃ジャホンタオ」の表現の仕方に魅了されます。まるでこの植物が本当に存在しているかのような書き方が、この物語の真実性を強めているのです。


 物語の出だしや雰囲気がいいのは当然ですが、「頬紅桃ジャホンタオ」の謎や主人公である李韓のその後がしっかりと書かれているところもいいですね。


 不思議な物語ではありますが、心が温まる内容となっています。気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。



 今日は『頬紅桃』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。 

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