6月 June

第19話 『初夏色ブルーノート』 ゆうすけさん

〇作品 『初夏色しょかいろブルーノート』

 https://kakuyomu.jp/works/16816452219941435941


〇作者 ゆうすけさん


【作品の状態】

 短編・完結済です。


【作品を見つけた経緯】

 たまたま訪問したところ、こちらの作品が公開されておりました。タイトルが清々しい感じだったので、さっぱりした話(もしくは爽やかな話)なのではないかと期待して読み始めました。 


【ざっくりと内容説明】

 内容はSFです。

 主な登場人物は中学生の明子と被雷観測ロボットのトミー。

 二人(?)がいる場所は日本なのですが、この物語の中では「グレート・ヴァニシング・フラッシュ」という現象により、世界中で人々が消えていっているのです。


「グレート・ヴァニシング・フラッシュ」という現象について少し具体的に話しますと、これによって起こる落雷が、稲光が発光するのと同時に、周囲数キロメートルの範囲にいる人間の一部をランダムに消し去っているというのです。


 そして明子はこの恐ろしい現象が起こっている世界の中で、ある事情で離れ離れになってしまった幼馴染である智昭を探すため、トミーと共に旅をしている、というのが大まかな内容になっています。


【紹介者の寄り道話】

 タイトルにはちゃんと「初夏色しょかいろ」と書いてあったのに、慣れない言葉だったせいか、私の脳内では「初夏色」を「なついろ」と変換して呼んでいました。……今は修正済です(笑)


【感想】

 この作品は「ゆあんさん主催の自主企画『筆致は物語を超えるか』」や、そのほかに基となった話があるようですが、私は純粋にこの作品だけを読みました。その感想をこちらに書きます。


 『初夏色ブルーノート』は想像した通り、爽やかなお話でした。

 主人公の明子が置かれている状況や、最後の展開を考えると、人によってはそう思わないかもしれませんが、私はテーマが天気だったことや状況説明の程よさ、また明子の心理描写がさらりとしていたところから「爽やかさ」を感じました。


 また私はSF作品の設定に関して、精査できるほどの能力を持ち合わせていないので(いつも雰囲気で読んでしまう)、作中の大まかな説明や世界設定は分かり易かったです。


 少し話が逸れて申し訳ないのですが、作品を読んでいて、幼いころに豪雨や台風が住んでいるところに接近してきたときのことを思い出しました。


 雷が怖かった(急に来るから)ので恐る恐る窓から外を眺めると、電線がゆらゆらと風で上下に揺れて、近くの木々の枝が突風で右に寄ったり、左に寄ったり。屋根に落ちる雨の音も尋常ではありませんでしたが、ぴかっと光る稲妻や後からやってくる雷鳴が怖くて、布団をかぶったこともありました。


 だから、暴風雨の日は自分だけ(または自分の家)が世界の中で孤立しているような感覚があったんです。


 そして、それと似たような感覚が第2話にありました。世界ではどんどん人が減っていき、いつ自分たちが「グレート・ヴァニシング・フラッシュ」の犠牲者になるのかという不安が明子たちに付きまとっていく。天気はいつ豹変するのか分からず、暴れはじめたら大人しくしているしかない。


 天気への恐怖と孤独。または社会からの孤立。

 それが私が幼い頃に感じたものと、なんだか似ているなと思った次第です。


 この世界の場合、建物の中に入れば安全なわけではないですし、「グレート・ヴァニシング・フラッシュ」の現象がなくならないので、実際の天候に感じる状況とは違いますが、天候の描写や状況説明により、明子と智昭の気持ちが分かり易かったです。


 その他にいいなと思ったのが、明子とトミーの会話です。やり取りが面白いですし、トミーに人間味があるところがこの子を作った人のことを想像させます。


 また第1話に明子がトミーのことを「この能天気なロボットのおかげであることは間違いない」という台詞せりふがあるのですが、「ロボットが能天気」というのは不思議な感じがします。それはロボットとはやるべき仕事に対して「正確」であることが求められるという前提があるからなのですが、トミーはそうではないんですよね。もしトミーがロボットらしいロボットだったなら、明子は幼馴染を探す長い旅路を乗り越えられなかったかもしれません。


 ちなみにトミーを見ていたら、ピクサー・アニメーション・スタジオとウォルト・ディズニー・ピクチャーズが製作した『ウォーリー』を思い出しました。


 少女とロボットが、天気によって変わった世界の中を歩き続けながら、幼馴染を探すSF物語です。気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。



 今日は『初夏色ブルーノート』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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