神世紀に生きる少女たちの探求

勇者であるシリーズは、私達が生きている現実が、「天の神」、「神樹」という超常的、非現実的要素が加わったことにより変質した新たな世界として、非常に緻密な舞台設計が為されているローファンタジーです。
西暦2017年、天の神の尖兵である「バーテックス」らが、世界の守り手として奮闘する乃木若葉をはじめとした勇者たちと攻防を繰り広げます。その結果、五人いた勇者は乃木若葉一人を残して全滅、更に神樹の庇護下にある四国を除き、世界は天の神によって火の海へと変えられてしまい、人類と神樹は天の神に敗北を喫します。
巫女らを火の海に捧げ、引き換えに種の存続を天に赦され生き残った人々は、約300年間、神樹の作り出した結界の中で過ごすことになってしまったのです。

この第二章における登場人物たる芙蓉友奈と柚木友奈をはじめとした、結界に閉ざされた四国内で生まれた少女達にとっては、四国こそが彼女らの世界の全てだったはずです。
壁の外が火の海と化し、もはやそこに国土が無いことは、大赦という行政組織が秘匿しており、更に当然一般人には壁(結界)を越えることなど出来はしない為、確かめようがありません。そのためこの世界の人々は、結界の外にはまだ豊かな海と大地が存在していると信じていたはずです。(壁の上は神樹が幻を見せているため、ただ偽りの青空があるのみ)
そんな状況の中現れた、誰も壁の外を己の目で見ていないのはおかしい、壁があるならその先があるはずなんだと、大赦の言葉だけで自分を納得させることが出来ない、厄介で傲慢で、しかし全力で生きている少女、それが芙蓉友奈であるのです。
穏やかな統治と秩序のために、幻で真実をくらます大赦。
たとえ残酷であっても、真実に魅了され探求を止めぬ少女。
(まだ)勇者を必要としない世界で生き、勇者でない友奈達は、果たして世界の姿を知ることは出来るのか。知ることが出来たとして、それを受け止め前に進むことが出来るのか。
神世紀の四国人のひとりになりきって読みたい、世界観没入型新感覚ストーリー、この機会に是非、レッツエンジョイ。