第219話 胸なんて飾りだ。カーリーにはそれがわからんのか
ルドラが目を開けると、青肌で4本の腕を生やし、踊り子のように露出の際どい衣装を身に着けた人外が目の前にいた。
ルドラを見てニヤッとしたが、その笑顔は好戦的な物に間違いなかった。
「よう、ルドラ。復活させてくれて感謝するぜ」
「カーリーか。そう言えば、人の姿になるのは、初めてじゃないか?」
「まあな。【
「そういうもんか」
「そういうもんさ。それよりも、どうだ? 童貞には目の毒か?」
「別に」
露出の多い服であると自覚しているカーリーは、ルドラを誘惑してみた。
ところが、ルドラの反応は薄かった。
勿論、カーリーはルドラに惚れてなどいない。
それでも、折角サービスしてやっているのに、反応が薄いのは女性としてのプライドを傷つけられた。
「そうか、そうか。なら、力づくで意識させてやる」
ズキュゥゥゥン!
イラっと来たカーリーは、ルドラの顎をクイッと持ち上げて無理矢理唇を奪った。
ロマンチックな雰囲気なんて欠片もない状況で、カーリーはルドラにキスした。
ルドラもこれは予想外だったらしく、必死にカーリーから逃げようとした。
しかし、カーリーの残り3本の腕に拘束され、ルドラが逃げることはできなかった。
カーリーから解放されたルドラは、プルプルと体を震わせた。
「酷い」
残念ながら、ルドラには泥水で口を漱いでみせる気丈さはなかったし、そもそも泥水なんて存在しなかったので、一言だけ恨みを込めて口にした。
「ハッ、生娘みたいな反応しやがって。私に欲情しねえから悪いんだ」
なんという言い分だろうか。
これが本当に女神なのだろうか。
そんなことを思ったが、ルドラはそれを口にするのは止めた。
カーリーは嵐のようなもので、通り過ぎるのを待つ方が賢明だからだ。
「とりあえず、約束は果たした」
「おう、よくやった。さっきのキスは、私からの報酬だ。感謝して敬え」
渾身のドヤ顔で、カーリーが言い切った時、ルドラの耳に神の声が再び聞こえた。
《おめでとうございます。カーリーが神器から神に復活しました。特典として、ルドラの<
《<カーリーの加護>を会得したことにより、ルドラはカーリーのスキルを”加護スキル”として部分的に継承しました》
《ルドラの【
《ルドラの【
《おめでとうございます。個体名:ルドラ・ナイヤーが、ドイツ最強のモンスターであるヴィネを討伐し、カーリーを復活させたため、ルドラはラースヤクシャを会得しました》
神の声が止むと、いつの間にかルドラの持っていた盾が、青く輝くフランベルジュに変わっていた。
カーリーのキスのせいで忘れていたが、ルドラは自分が
「【
-----------------------------------------
名前:ルドラ・ナイヤー 種族:
年齢:28 性別:男 Lv:100
-----------------------------------------
HP:1,000/1,000
MP:1,000/1,000
STR:1,500
VIT:1,500 (+50)
DEX:1,000
AGI:1,000 (+50)
INT:1,000
LUK:800
-----------------------------------------
称号:<カーリーの加護><
<
職業:
スキル:【
固有スキル:【
加護スキル:【
-----------------------------------------
装備1:ラースヤクシャ
装備1スキル:【
装備2:
-----------------------------------------
パーティー:なし
-----------------------------------------
従魔:サラ(アラクネ)
-----------------------------------------
自分のデータを確認し終えると、ルドラは進化前よりも強くなったことを改めて実感した。
「ルドラ、強くなった感想はどうだ?」
「正直、よくわからない」
「だろうな」
「でも」
「でも?」
「紅葉さんと同じ
「紅葉? ・・・あぁ、あの断崖絶壁の女か」
「胸なんて飾りだ。カーリーにはそれがわからんのか」
「お、おう。悪かった・・・」
普段、滅多に怒らないルドラが、怒りを露わにするのを見て、思わずカーリーは謝ってしまった。
感情がないのではと疑うレベルの普段と比べ、今、自分に向けられたのは紛れもない憤怒だった。
ギャップのせいであることは間違いないが、ルドラが怒ったことで、カーリーは驚いて謝ってしまったのだ。
実際、紅葉は女神じゃなくて
ルドラがキレたことで、気まずくなった雰囲気をどうにかするのはサラの役目だ。
「主、
「あぁ、すまない。ありがとう、サラ」
ルドラもハッと我に返り、怒りを鎮めてサラに礼を言った。
サラもルドラがいつも通りのルドラに戻り、ホッとした様子になった。
「主、マダ残党ガ残ッテマス。討伐シマショウ」
「そうだな」
「おっ、行くか? 進化したスペック、見せてみな」
「別に、カーリーを楽しませるために戦う訳じゃない」
「固いこと言うんじゃねえよ。ほら、のんびりしてると、救えるはずのこの国の冒険者が減っちまうぞ?」
「・・・サラ、乗せてくれ」
「仰セノママニ」
カーリーの発言にムッとしたものの、カーリーと口論している場合ではないと割り切り、ルドラはサラに乗って移動した。
すると、ドイツの冒険者達が活気づいた。
「見ろ、ドイツの英雄様が戻って来たぞ!」
「この戦、勝つる!」
「こいつらを倒せ!」
「「「・・・「「おおぉぉぉぉぉっ!」」・・・」」」
どうやら、ルドラがヴィネを倒したことは、神の声でこの場で戦っている冒険者達にも伝わっていたらしい。
これが最後の戦いだとわかったことで、冒険者達は気合を入れ直した。
アークデーモン、キマイラ、リビングアーマーという法則性のない混成集団を相手に、ここぞとばかりに攻勢に出た。
その掃討戦に、ルドラも参戦した。
「喰らえやオラァ! 【
ブンッ! ゴォォォォォォォォォォッ! パァァァッ。
カーリーに紅葉を侮辱された苛立ちが、【
残存していたモンスターの集団の8割が、ルドラの一撃によって消滅した。
「ハハッ、すげえ! 英雄様に続け!」
「ぶち殺してやれ!」
「ヒャッハァァァァァッ! 汚物は消毒だぜぇぇぇぇぇっ!」
最後の者に関して言えば、完全にテンションがおかしくなってしまっているが、掃討戦の流れは完全にドイツの冒険者達に傾いていた。
10分後、ドイツの冒険者の1人が、最後のアークデーモンの首を落とすと、その場にいる者達の耳に神の声が届き始めた。
《おめでとうございます。ドイツのモンスター討伐率が100%になりました。それにより、ガネーシャがドイツにモンスター避けの結界を張ることに成功しました》
《おめでとうございます。ドイツのモンスター討伐率が100%になったことで、モンスターが存在する国が残り3ヶ国となりました》
神の声が止むと、ドイツでは勝利の歓声が起こった。
そして、ルドラの胴上げが始まった。
ルドラはカーリーのせいで、褒めてもらうことに不慣れになってしまったが、誰かに褒めてもらえたことがとても嬉しかった。
ドイツの冒険者と喜びを分かち合った後、ルドラは紅葉に会って自分の成し遂げたことを伝えたくなり、急いで双月島へと帰るのだった。
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