第166話 邪気眼系中二病乙

 アポピスに対し、まずは響が攻撃を仕掛けた。


「【陥没シンクホール】【槍領域ランスフィールド】」


 ズズズズズッ、キキキキキィィィィィン!


「あの鱗、硬いわね。ピエドラ、穴の底に【混乱霧コンフュミスト】」


「やっちゃぅょ?>> |笑顔´∀`|=p ビシッ」


 サァァァァァッ。


 穴に落ちたものの、響の【槍領域ランスフィールド】がアポピスの鱗に防がれてしまったので、紅葉はピエドラに時間稼ぎの【混乱霧コンフュミスト】を使わせた。


 稼いだ時間で、対策を練ろうとしたのだが、事態はそう上手く進まなかった。


「吾輩、状態異常には強いから無駄だ」


 ダン、ダダン、ダダダン! ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ。


 霧の中から、アポピスの声が聞こえたと思ったら、壁に何かが刺さる音が聞こえ、その後にアポピスが穴の底から這い上がって来た。


「垂直な壁をどうやって?」


「簡単な話だ。お前がくれた槍を折り、投げつけて足場にしただけだ」


 響の疑問に対し、アポピスは余裕の笑みを浮かべて答えた。


 しかし、その笑みはすぐに保っていられなくなる。


「蛇に足なんてないじゃん」


「貴様ぁぁぁぁぁっ! 吾輩を下等な蛇風情と一緒にするなぁぁぁぁぁっ!」


 響に揚げ足を取られ、アポピスは一瞬で激昂した。


 アポピスが激昂するとともに、アポピスの赤い目が発光した。


「響、後ろへ! 【金剛アダマント】」


「【重力眼グラビティアイ】」


 ズゥゥゥゥゥン!


 響を庇い、紅葉が前に出て【金剛アダマント】を発動した直後、アポピスの【重力眼グラビティアイ】が紅葉に発動した。


 紅葉は【金剛アダマント】を発動させていたおかげで、どうにか耐えることができたが、普段よりも自分に重力が過剰にかかっているのを体感した。


「激おこプンプン丸٩(๑`^´๑)۶」


 ヒュゥゥゥッ、ズドドドドドォォォォォン!


「ぐほっ!?」


 紅葉を攻撃され、怒ったピエドラが【竜降下ドラゴンダイブ】をアポピスに放った。


 【重力眼グラビティアイ】に集中していたせいで、ピエドラに死角からの奇襲をされてしまったアポピスは、間抜けな声と同時に肺から息を吐き出した。


「アラン、紅葉を回復して」


「任されたでござる。【回復歌ヒールソング】」


 ラララ~ラ~ラ~、ラララ~ラララ~、ラララ~、ラ~、ラ~♪


 バリトンボイスがその場に響き渡り、それと同時に紅葉の体が薄い光に包まれた。


 アランの歌が終わると、紅葉の表情が攻撃を受ける前ぐらいに元気になった。


「助かったわ」


「僕も、庇ってもらっちゃったからね」


盾役タンクだから」


「じゃあ、僕はしっかり攻撃しなきゃね」


「そうしてちょうだい」


「わかった。【影拘束シャドウバインド】」


 ズズズズズッ。


 ピエドラに上から乗られ、身動きが取れないアポピスに対し、響は【影拘束シャドウバインド】で更に動きを止めた。


 それを確認すると、ピエドラが紅葉の所まで戻った。


「よくやったわ、ピエドラ」


「(pq*´∀゚)ウレスィ~♪」


「じゃあ、遠慮なく。【酸乱射アシッドガトリング】」


 ドガガガガガッ! ジュワァァァァァッ。


「おのれ、吾輩の鱗が!?」


 ピエドラが退いたおかげで、容赦なく攻撃できるようになったので、響は【酸乱射アシッドガトリング】でアポピスを攻撃してみた。


 【槍領域ランスフィールド】が防がれるのなら、融かせるかどうかと試したところ、劇的にとまではいかないが、アポピスの鱗は融けていた。


 鱗が融かされたことに気づくと、アポピスは更に怒った。


 ブチブチブチィ!


 【影拘束シャドウバインド】を怒りのパワーにより、無理矢理引きちぎると、アポピスは響をロックオンした。


「小癪な! 【糜爛吐息マスタードブレス】」


「【騒音砲ノイジーキャノン】」


「【竜巻砲トルネードキャノン】」


 ブァァァァァッ! ギギギギギギギギギギィィィィィィィィィィン!


 アポピスの吐き出した触れたらアウトのスキルに対し、アランのスキルに響が合わせたことで、効果を底上げしてぶつけた。


 響が力を貸した分、アランのスキルの方が威力は勝っており、【糜爛吐息マスタードブレス】はアポピスへと跳ね返された。


「おのれぇぇぇっ!」


 自分が放ったスキルを受け、効きにくいものではあるが、アポピスは不快であることを隠さず叫んだ。


「ちょっと燃やすわよ。【爆轟デトネーション】」


 ドガァァァァァァァァァァン!


「紅葉の馬鹿!」


「あっ、しまった。ガスに引火しちゃった?」


 アポピスの周辺には、【糜爛吐息マスタードブレス】が溜まっていた。


 それが原因で、ちょっととはとても言えない規模の爆発が起きた。


 しかし、それでも神の声が聞こえないので、響達はまだアポピスを倒せていないと理解した。


「ククク。吾輩がここまでダメージを受けるとは、いつ振りだろうか? 許さぬ! 許さぬぞぉぉぉぉぉっ!」


 爆炎が収まると、そこには所々鱗が剥げた見た目のアポピスがおり、アポピスの怒りは留まることを知らなかった。


「【酸乱射アシッドガトリング】」


 ドガガガガガッ! ジュワァァァァァッ。


「ヌォォォォォッ!」


 鱗が剥げた生身の部分に、酸でできた弾丸が命中し、アポピスは絶叫した。


「こうかはばつぐんだ」


「流石は鬼畜。違ったわ。<腹黒軍師>だったわね」


 響がニッコリと笑って言うものだから、紅葉は戦慄した。


 しかし、このチャンスを無駄にする訳にはいかないので、紅葉は痛みに悶えるアポピスと距離を詰め、追撃に入った。


「【爆炎槍ブラストランス】」


 グサッ! ドゴォォォン!


 生身の部分に、穂先の燃えた迦具土を突き出すと、アポピスの体内に刺さった途端、炎が弾けた。


「グァァァァァッ!?」


「はい、おしまい。【影移動シャドウムーブ】【暗殺アサシネイト】」


 スパァァァァァン! パァァァッ。


《紅葉は【重力眼グラビティアイ】を会得しました》


《紅葉の【遅延雨ディレイシャワー】と【重力眼グラビティアイ】が、【怠惰眼スロウスアイ】に統合されました》


《響はLv99になりました》


《響の【酸乱射アシッドガトリング】が、【王水アクアレジア】に上書きされました》


《ピエドラはLv99になりました》


《アランはLv95になりました》


「【分析アナライズ】」


 神の声が止むと同時に、紅葉はすぐに自分のデータを確認し始めた。



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名前:秋山 紅葉  種族:超人ドワーフ

年齢:25 性別:女 Lv:100

-----------------------------------------

HP:1,350/1,350

MP:1,350/1,350

STR:1,750(+110)

VIT:1,750(+60) (+50)

DEX:1,800

AGI:1,350 (+50)

INT:1,350

LUK:1,350

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称号:<RPGプレイヤー><臥薪嘗胆>

   <永遠学徒エンドレスアプレンティス><火焔公>

   <凸凹コンビ><長寿>

職業:近衛兵ロイヤルガード

スキル:【分析アナライズ】【技術合成テクニカルシンセシス

    【金剛アダマント】【刺突乱射スタブガトリング

固有スキル:【怠惰眼スロウスアイ

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装備1:迦具土(蜻蛉切スキン)

装備1スキル:【爆轟デトネーション 】【爆炎槍ブラストランス

      【爆炎刃ブラストエッジ】【炎釘打フレイムネイル

      【円陣炎サークルフレア】【擬人化ヒューマンアウト

装備2:ボマーガントレットVer.2

装備2スキル:【中級回復ミドルヒール】【紫電反撃ボルトカウンター

装備3 :近衛兵ロイヤルガードセット

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パーティー:新田 響

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従魔:ピエドラ(グラトニーブラッド)

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 自分のデータを見終えた紅葉は、既にスイッチが入っていた。


「クックック・・・。フハハハハ・・・。ハーッハッハッハ!」


「・・・久々の三段笑いだね。何か良いことあったの?」


「よく聞いてくれたわ! 私、遂に【怠惰眼スロウスアイ】が目覚めてしまったわ! クッ、沈まれ私の両目」


「邪気眼系中二病乙」


「・・・何よ、ノリ悪いわね。【怠惰眼スロウスアイ】って、固有スキルなのよー? ちょっとぐらい遊んだ紅葉って良いじゃん」


「紅葉にそんなスキルを与えるなんて、何考えてるのかな。神様仕事しろ」


『僕のこと呼んだ?』


『呼んだかの?』


「・・・月読も迦具土もお呼びじゃない。担当者出して」


『今の僕じゃ無理』


『我も無理じゃ』


「だよねー。はぁ」


 自分が無茶を言った自覚はあるので、それが叶わないとわかっても、響はそこまで落ち込まなかった。


 もっとも、落ち込まなかっただけで、溜息は漏らしたのだが。


「それにしても、【怠惰眼スロウスアイ】かぁ」


「何? 不満なの?」


「ううん。奏君とか、響の方が会得しそうだと思って」


「そうでもない。奏ちゃんも僕も、他人をだらけさせたい訳じゃなくて、自分がだらけたいだけだから」


「それもそうか」


 話が終わり、響達はアポピス戦の戦利品を回収し、広間の反対側の通路へと進んだ。

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