第160話 ソーマ? 確か、すっごい酒だっけ?
《おめでとうございます。個体名:高城奏は、タージマハルのボスに完封勝利しました。その特典として、<ガネーシャの祝福>を会得しました》
《奏が<ガネーシャの祝福>を会得したことにより、奏の【
《奏の<伊邪那美の祝福>と<ガネーシャの祝福>が、<多神の祝福>に統合されました》
《おめでとうございます。個体名:高城奏が、ザガンからソロモン72柱の情報連携を暴きました。その報酬として、日本に存在する神器の在り処を奏は知る権利を会得しました》
《奏の【
神の声が止むと、奏はバアルに訊ねた。
「バアル、加護スキルって上書きされんの?」
「確かにそれには俺様も驚いたが、<ガネーシャの祝福>をスルーかよ?」
「だって、元々【
「そうかもしれねえが、インドにいれば、全能力値が2倍になるんだぜ? 純粋に強化されるんだから、もうちょっと喜んでやれよ」
「喜べって言われて喜ぶのも変な話だろ。報酬を貰うタイミングで、ガネーシャには礼を言うさ」
「それが良い」
話を終えたところで、奏の体が光を放った。
光が収まると、ルナが【
「パパ~、お疲れ様~」
「ルナこそ。ありがとう」
「エヘヘ♪」
奏はルナの頭を撫でてから、魔石とモンスターカードを回収し、宝箱を開けた。
その中には、黄金色に光る液体の入っている角瓶があった。
「おいおいおい、ソーマじゃねえか」
「ソーマ? 確か、すっごい酒だっけ?」
「マジかこいつ。すっごい酒で済ませやがった」
奏がソーマをすっごい酒と言ったのを聞くと、バアルは戦慄した。
紅葉が手にしたら、間違いなく狂喜乱舞するのだが、そこは奏クオリティ。
紅葉から聞きかじった知識で、おぼろげにすごい酒であるとしか認識していなかった。
「バアルが驚くってことは、すっごい酒であってるんだろ?」
「まあ、その認識も外れちゃいねえが。ソーマを飲めば、HPとMPが全回復するし、部位欠損でも完治する」
「エリクサーと違って、不老不死にはなれないのか?」
「なんだよ奏、不老不死になりてえの?」
「いや、紅葉に読まされたラノベでは、そういう設定があったのを思い出しただけ」
「なるほどな。残念ながら、不老不死になれるのはエリクサーだけだ。つっても、未完成品ですらあの苦さだから、本物はやべえぞ?」
「あれはもう飲みたくない」
双月島の神殿で飲んだ時のことを思い出し、奏はうんざりした表情になった。
それから、奏はソーマも他の戦利品と同じように、【
タージマハルでやるべきことを終えた時になって、ルドラが奏のいる場所にやって来た。
「お疲れ様。すごかった」
「そりゃどうも。でも、残りはルドラ達がやれよ?」
「わかってる。そこまで頼れない」
ルドラが言われるまでもないと頷くと、そこにカーリーが口を挟んだ。
『良い感じに締めてるところ悪いが、私にザガンの角をくれないか? 戦闘の序盤に折ってただろ? 勿論、交換する物はある。ルドラ、あれを出せ』
「あれ?」
『馬鹿! 阿保! ルドラ! この場面であれって言ったら、アムリタに決まってんだろ!』
「俺の名前を、罵声と同列にするな」
『良いから出せ! すぐにだ!』
「・・・はぁ。わかった」
「まさか、同じやり取りを1日に2回も見るとは・・・」
自分の苦情を聞かないカーリーに溜息をつき、ルドラは渋々収納袋からアムリタと呼ばれた琥珀色の液体の入った丸瓶を取り出した。
一連の流れを見て、奏は苦笑いした。
「マジでアムリタじゃねえか」
「バアル、これもすっごい酒だよな?」
「お、おう。どんな状態異常や病も完治させちまう酒だ」
「なるほど。ルドラ、手に取って見させてくれ」
「わかった」
奏はルドラからアムリタを受け取ると、あらゆる角度から眺めて頷いた。
「おい、奏、何やるつもりだ?」
「【
奏がスキル名を唱えた瞬間、アムリタを持っていなかった方の手にも、アムリタが創り出された。
「ルドラ、こっちは返すわ。サンキュー」
「え、うん」
アムリタの創造に成功した奏が、創り出したアムリタを返すと、ルドラはキョトンとした顔でそれを受け取った。
「やりやがった。奏、お前アムリタを【
「あっ、そうだ。ルドラって回復手段ある?」
「ないが、何故?」
「こういうことだ。【
再び、奏がスキル名を唱えると、今度はソーマが空いている方の手に創り出された。
それもまた、奏はルドラに手渡した。
「・・・良いのか?」
「先行投資だ。インドの問題は、ルドラに片づけてもらいたいからな。それに、ルドラの戦い方は危なっかしい」
「感謝する」
奏の厚意に甘え、ルドラはソーマも受け取った。
それらをルドラが収納袋に入れている間に、奏はアムリタを【
そして、ルドラへとザガンの角を手渡した。
受け取ってすぐ、ルドラはザガンの角をカーリーに吸収させた。
シュゥゥゥッ。
《カーリーは、【
《カーリーが3体のソロモン72柱のスキルを会得したため、ルドラに<
神の声が止むと、カーリーがご機嫌になった。
『上等、上等だぜ。これなら、遠距離攻撃もできる。ルドラ、私の復活は近いぞ』
「そうかもな」
『なんだよルドラ。ノリが悪い。もっと喜んで私を崇めろ』
「何故?」
『かーっ、相棒の私が復活するのに喜んでくれないなんて、ルドラは血も涙もねえな』
「理不尽だ」
言いたい放題のカーリーに対し、ルドラは肩を落とした。
それはさておき、タージマハルで行うべきことは本当に何もなくなった。
だから、奏はルドラに別れを告げた。
「じゃあな、ルドラ。俺達は帰る」
「ああ。世話になった。落ち着いたら、連絡して良いか?」
「構わないぞ」
「わかった。それじゃ」
「おう」
奏はルドラと握手を交わしてから、【
奏達が神殿に戻ると、悠を抱っこした楓が奏達を待っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「奏兄様、お疲れ様です。ザガンを倒せたようで良かったです」
「連絡を入れてなかったのに、よくわかったな」
「わかりますよ。だって、寝室にガネーシャさんから報酬が届きましたから」
「そういうことか。報酬はどんな物だった?」
「百聞は一見に如かずです。一緒に見に行きましょう」
楓に連れられて、奏は寝室に戻った。
すると、そこには奏達のベッドを丸々覆うことのできる機械のような物体があった。
「楓、これは?」
「天界製ベッド専用の乾燥機らしいです。これが送られてくるのと同時に、こんなメモがありました」
楓に手渡されたメモを見ると、伊邪那美の書いた文字とは異なり、奏にも読める日本語が書かれていた。
このメモを書いたのは、当然ガネーシャである。
メモの説明を読んだ奏の目線は、メモと乾燥機を何度も往復した。
「マジかよ。この乾燥機、使えばいつでも初めての使用感までケアしてくれるなんて最高だ」
「どうですか、奏兄様? 満足されましたか?」
「控えめに言って、大満足だ」
「奏兄様、それは控えてませんよ。でも、私も嬉しいです。寝心地の良いベッドで寝られることは、とてもありがたいですから」
「そうだろ? 楓ならわかってくれると思ったよ」
「はい。奏兄様に教わりました」
奏の寝ることに対するこだわりが、楓にも徐々にわかるようになったらしい。
それが嬉しくて、奏は嬉しそうに頷いた。
その時、奏の耳にガネーシャの声が届いた。
『奏、気に入ってくれたようね』
「ガネーシャか。祝福と【
『・・・ブレないわね』
「当たり前だ。ソーマもアムリタも、ヴァジュラも俺の寝放題ライフの役に立つかどうかで考えたら、あっても困らないけど役に立たないからな」
『流石は奏。願わくば、ソロモン72柱を含むモンスターを倒し終えた人類が、奏みたいな考え方でいてほしいわ。そうすれば、新たな火種も存在しなくなるし』
「
『それもそうね。まあ、そこら辺は追々対応を考えるわ。とりあえず、いつまでも新品のベッドの寝心地を楽しんで』
「そうさせてもらう」
ガネーシャとの会話が終わった。
奏は乾燥機を使い、ベッドの使用感を早速初めて使った時の状態に戻すことにした。
そして、乾燥機の作業が終わるまで時間がかかるので、楓に頼んで昼食を取ることにした。
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