第12章 南北ダンジョンアタック
第116話 大丈夫。私、失敗しないので
ルナが進化した翌日、朝食後の休憩中に、奏達の耳に神の声が突然届いた。
《
《おめでとうございます。日本のモンスター討伐率はトップです。特典として、日本の冒険者とその従魔の全能力値が+100上昇しました》
《世界全体のモンスター討伐率が、20%を超えました。特典として、掲示板にスクリーンショット機能が追加されました》
《おめでとうございます。個体名:高城奏は、日本のMVP冒険者に選ばれました。特典として、固有スキル【
神の声が止むと、奏はバアルに訊ねた。
「
「ソロモン72柱主導の地球侵攻を、天界の連中は
「なるほど。確かに、名称がないと不便だもんな」
モンスターが地球に現れてから何日、と表現するよりも、
「そういうこった。それよりも、奏は【
「【
「違いは1つだ。奏が行ったことがなくても、場所を把握していれば移動できることだな」
「【
「きっと、天界の連中は、奏にバリバリ活躍して世界各国のモンスターを倒してほしいんだろうぜ」
「断る」
「即答かよ。まあ、俺様はそう言うと思ったし、それを咎めるつもりは一切ねえから安心しな」
バアルを復活させるため、楓を進化させるため、奏はモンスターを倒しまくった。
昨日なんて、世界樹におびき寄せられたニーズヘッグを倒し、ルナまで進化させた。
一般的な冒険者と比べて、明らかに強敵と戦う頻度が多いのは言うまでもない。
そんな生活を、ずっと続けなくてはならないなんて、社畜時代よりも責任が重くハードな生活を余儀なくされる。
それがわかっているので、奏はすぐに却下したのだ。
バアルとしても、奏が頑張ったことは重々承知しているので、これ以上無理はさせたいと思っていない。
奏が天界の神々の意思を知り、若干不機嫌になったため、楓が話題を変えた。
「奏兄様、今日はどうしますか? 島の西側でルナちゃんやサクラと遊びますか?」
「パパ、遊べるの!?」
楓の口から、遊ぶという言葉が出たのを聞き、ルナが奏の膝の上から期待した目で見上げた。
「う~ん、悩ましいな」
「遊んでくれないの?」
「あぁ、ごめん。ちゃんと遊ぶ時間も作る。ただ、ちょっとやっておくべきことはあると思って」
ルナがしょんぼりしてしまったので、奏は微笑みながらルナの頭を優しく撫でた。
奏がやっておくべきことと言ったため、楓は心配そうな表情になった。
「何をすべきなんですか?」
「今後、面倒な敵が双月島を襲ってくるかもしれないだろ? だから、この島の防衛戦力を強化しなくちゃと思ったんだ。ワールドクエストにもあるし」
「そうですね。私達の甘い生活を邪魔させないためには、その気を起こさせない抑止力が必要です」
「えっ、奏君達まだ強くなろうとしてるの?」
奏と楓の話を聞き、紅葉の顔が引きつった。
「別に、絶対に俺が強くなる必要はない。大事なのは、この島の防衛戦力の強化だ。だから、紅葉達が強くなるのもそれに含まれるし、いざって時に味方になってくれる幻獣系モンスターを迎え入れても良い」
「あぁ、そういうことね」
「おい、奏。あと1つ手段を忘れてるぜ」
「他に何かあったっけ?」
「神器の収集だ」
「それよ!」
「奏ちゃん、神器だよ!」
バアルが神器と口にした途端、紅葉と響が同時に立ち上がった。
双月島を守るため、奏のために2人が神器を欲している訳ではない。
2人が神器を欲する理由は、自分達の身の安全のためだ。
楓とヘラのヤンデレコンビが力を得れば得るだけ、自分達の安全が脅かされる。
もし、うっかり楓の地雷に触れて、【
今は奏が抑え込んでいるが、奏がいない時に楓の地雷に触れた時、紅葉と響に身を守る手段がない。
だから、身を守る手段となり得る神器を欲しているのだ。
「神器か。確かに、それも強化に繋がるよな」
紅葉と響が必死な理由を知らず、奏は
「バアルさん、奏君の【
「魔石ならある」
テーブルの上に、響が魔石の詰まった袋をドサッと置いた。
紅葉からの問いに、バアルは腕を組んで唸った。
「そればっかりは、俺様にもわからん。あるかもしれねえし、ないかもしれん」
「奏君、払うのは私達だから、【
「わかった。ダメ元でも、もしかしたらあるかもしれないし。【
ブブッ。
電子音が聞こえると、奏の前にガネーシャが映る画面が現れた。
『いらっしゃ~い』
「ガネーシャ、早速で悪いけど、神器って取り扱ってる?」
『神器、ねぇ。あると言えばあるけど、高い割に奏達の役に立たないわよ。それでも見る?』
「「見たい」」
奏が答える前に、紅葉と響がシンクロして答えた。
「って言ってるから、一応見せてくれ」
『わかったわ』
そう言うと、ガネーシャがガサゴソと動き、それからすぐに画面上に神器が現れた。
画面に映されたのは、孫の手だった。
「ガネーシャ、これは孫の手だよな?」
『そうよ。阿修羅の宿った孫の手』
「孫の手でどう戦えば良いのよ・・・」
「待った。ヘラだって、最初は木べらだったって聞いた。まだ、ワンチャンある」
孫の手が神器だと言われ、紅葉と響は買うか買わないか相談し始めた。
それを横目に、奏はガネーシャに肝心の値段を確認した。
「ちなみに、どれぐらい払えば買える? 今回は、これだけの魔石が予算なんだけど」
『うーん、ごめんなさい。値引きしてもこの袋が5個がなきゃ厳しいわ』
「嘘・・・、でしょ・・・」
「孫の手なのに・・・」
『だから最初に言ったのよ。高い割に役に立たないって』
落ち込む紅葉と響を見て、ガネーシャは苦笑した。
「逆に、この袋いっぱいの魔石で何を買える? 戦力強化に繋がる物が良いんだが」
落ち込む2人とは対照的に、奏は少しでも良い物が手に入らないかとガネーシャに訊ねた。
すると、ガネーシャは全く同じ2つのガラス球を取り出した。
『これなら売れるわ』
「これは?」
『転職玉っていって、Lv30以上の冒険者が転職できる玉よ。とはいえ、LUKによって良い職業になれるかどうか変わるギャンブルなんだけどね』
「ギャンブル?」
紅葉の耳がピクッと反応した。
「紅葉、早まらないで。この魔石は僕達の共同財産」
「私の分だけ使う。響の分は残るから、それなら良いでしょ?」
「・・・これだから
お手上げだと言わんばかりに、両手でやれやれとジェスチャーをする響に対し、紅葉は覚悟を決めた目になった。
「奏君、1つだけ買って」
「良いんだな? 運ゲーだけど良いんだな?」
「ええ」
力強く頷く紅葉に、奏はこれ以上何も言うまいと判断した。
「ガネーシャ、1つだけ買う」
『わかったわ。紅葉、健闘を祈るわ。それじゃ、またね』
プツン。
代金分の魔石が消え、その代わりに転職玉が奏の手の上に現れた。
そのすぐ後、電子音と共に、画面が消えた。
奏が紅葉に転職玉を渡すと、バアルが口を開いた。
「紅葉の姉ちゃん、転職玉を使うと、紅葉の姉ちゃんが会得してたスキルの内容が変わるかもしれねえ。使うのを止めるなら、今のうちだぜ」
「大丈夫。私、失敗しないので」
「それ、言いたかっただけだろ」
「流石は奏君。わかってるね。STRをLUKへ。【
現在、紅葉の中で最も高いSTRの数値をLUKに投入し、LUKの底上げをした。
そこから、
「私は
言い切った表情の紅葉が、転職玉を掲げて使うと、光がその場を包み込んだ。
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