第115話 俺様も初耳だ。正真正銘の新種族だぜ
神の声が止むと、光が徐々に収まり始めた。
突然発光したせいで、奏達の視力が元通りになるのに少し時間がかかった。
奏達が目を開けられるようになったのは、神の声が止んでから1分経過してからのことだった。
目を開けられるようになってすぐ、奏は自分が乗っているルナの体を隅々までチェックした。
すると、ルナの見た目は翡翠色の体に金色の目であり、体のサイズも変わっていなかった。
しかし、左目を囲むように緑色の嵐のマークが浮かび上がっていた。
《おめでとうございます。個体名:ルナは、グリフォンで初めてLv100に到達し、グリフォンからテンペストグリフォンに進化しました。初回特典として、幻獣系モンスターの進化条件が日本に先行公開されました》
ルナの進化が完了したと思ったら、神の声がルナは新種族に進化したことを告げた。
「バアル、テンペストグリフォンって知ってる?」
「俺様も初耳だ。正真正銘の新種族だぜ」
「パパ、ルナってすごい?」
「ああ、すごいぞ」
「エヘヘ♪」
奏に撫でられ、ルナは気持ち良さそうにしている。
そんなルナの変化が気になり、能力値も含めて奏は確認することにした。
「【
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名前:ルナ 種族:テンペストグリフォン
年齢:5歳 性別:雌 Lv:100
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HP:1,200/1,200
MP:1,200/1,200
STR:1,500
VIT:1,200
DEX:1,500
AGI:1,500
INT:1,600
LUK:1,200
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称号:<奏の従魔><賢獣姫><不老長寿>
スキル:【
【
固有スキル:【
-----------------------------------------
装備:従魔の証(奏)
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久し振りに、ルナのデータを確認した奏だったが、気が付けば【
「バアル、ルナのスキルから説明頼む」
「あいよ。【
「パパの【
「言われてみれば、確かにそうだ。良かったじゃねえか」
「うん♪ ありがとう、バアル姉ちゃん」
奏と似ているスキルを会得できたことが嬉しくて、ルナはとてもご機嫌である。
ルナの頭を撫でつつ、奏はついでに自分の称号のことも確認することにした。
「それと、<世界樹の守護者>の効果も教えてくれ」
「それもあったか。この称号の効果は、称号の持ち主は世界樹の果実の効果を2倍にすることと、世界樹を守るために行動する時、全能力値が2倍になることだ」
「世界樹縛りとはいえ、良い効果だな」
「まあ、普通に考えたら会得できねえ称号だから、リターンもデカいんだろうぜ」
「それもそうか。世界樹が何本もある訳ないもんな」
「おうよ。世界樹ってのは、世界に1つしか存在できねえ樹だ。そんな樹を守るんだから、それぐらいのリターンはあって良いだろ?」
バアルに指摘され、奏は先程まで戦っていたニーズヘッグのことを思い出した。
いくつもの称号と楓の【
だが、これからも世界樹を狙って、ニーズヘッグ並みのモンスターが双月島にやって来るのは面倒だと感じた。
「なあ、これから先も、島を襲って来るモンスターとかいると思うか?」
「いる」
「断言すんのかよ」
「しょうがねえだろ? 世界樹ってのは、神々や人類、良い心を持ったモンスターにとっては恩恵があっても、悪魔系モンスターや地球を侵略しようとするモンスターにとっては邪魔なんだから」
「結局のところ、世界樹って何?」
今まで詳しく説明を求めることはなかったが、今後も強敵と戦うことになるだろう原因であると聞けば、奏も世界樹とは何か聞きたくなるのも当然である。
「元々は天界の植物だ。従魔や友好的なモンスターは別だが、魔界出身のモンスターを弱体化させる力を持ってる。特に、ソロモン72柱には効果があるぜ」
「そんなすごいものだったのか?」
「まあな」
「ちなみに、従魔とか友好的なモンスターが弱体化しないのはなんで?」
「人類の味方になってるからだ。人類の味方に対して、悪条件を突きつけるような性格じゃねえんだよ、世界樹は」
「世界樹にも意思があるの?」
樹に意思があるとは思っていなかったため、奏は静かに驚いた。
だが、バアルはそれを当然のことだと頷いた。
「そりゃあるさ。樹だって生物なんだからよ。もう少し育てば、自我が芽生えるんじゃねえか?」
「寝放題ライフを目指してたつもりが、気づけば世界樹を守る立場なんて遠くに来たもんだ」
「ケケケ。人生、何があるかわからねえ。だから、面白い」
「お前は神だろうが」
「違いねえ」
スケールの大きい話をして、奏が若干疲れた様子だが、それとは対照的にバアルは楽しそうに笑った。
「むぅ、ルナを仲間外れにしてパパもバアル姉ちゃんも酷い」
「ごめんな、ルナ。悪かった」
「もうちょっと撫でるの延長ね」
「わかった」
「わ~い♪」
進化しても、ルナは甘えん坊のままだった。
そこに、空気を読んで待機していた楓とサクラが合流した。
「奏兄様、お疲れさまでした」
「楓、強化してくれてありがとう。【
「そう言ってもらえると嬉しいです。ルナちゃん、進化おめでとう」
「ママ、ありがと~」
楓に祝われ、ルナは嬉しそうにお礼を言った。
すると、それを見たサクラが頬を膨らませた。
「キュル・・・」
「サクラも進化したいの?」
「キュル。キュルキュキュ、キュッキュル~」
「ルナちゃん、サクラはなんて言ってるの?」
「ルナだけズルい。自分も進化したいって言ってるよ」
「キュルキュル」
そうだそうだと言わんばかりに、サクラは力強く首を縦に振った。
「バアルの話が本当なら、いずれ強いモンスターが現れる。そいつを倒せば、このパーティーの経験値はサクラが総取りするから、きっと進化できるさ」
「キュル!?」
「パパ、サクラが期待しても良いのって訊いてるよ?」
「しても良いと思う。バアルがフラグを立てたから、多分遠くない内にまたニーズヘッグみたいなのが来るっしょ」
「おい、俺様のせいにするなよ」
「バアル、フラグを甘く見るな」
「お、おう。わかった」
奏に真剣な顔で言われてしまい、バアルは頷くしかなかった。
それから、奏達はこれ以上この場に留まる意味もないので神殿へと帰った。
神殿に戻ったら、ルナは【
神殿で待っていた紅葉は、ルナの進化に気づいてテンションが上がった。
「ルナちゃん、進化したの!?」
「エッヘン!」
「目のマークが良いわね! 中二心をくすぐられるわ!」
「中二心? パパ、何それ?」
「さあ、何言ってんだろうな? 気にしなくて良いぞ、ルナ」
ルナに余計なことを吹き込まれたくなくて、奏は紅葉が何を言っているのかさっぱりわからないという風に振舞った。
ルナも奏がそう言うならと、すぐに気にすることを止めた。
「は~い。変な紅葉姉ちゃんだね」
「がはっ!」
ルナに変人認定され、紅葉は膝から崩れ落ちた。
「紅葉」
「何よ響?」
響にポンポンと肩を叩かれ、紅葉は響の方に首だけ振り返った。
「自分よりも先に、ルナに進化された気分をどうぞ」
「それ、響も一緒でしょうが」
「だよねー」
「明日から、もっと戦闘のペース上げるわよ」
「ふぅ、僕が重りを外す時が来たね」
「別に付けてないでしょ? でも、私もウォーミングアップは終わってるわ」
ルナに先を越され、次こそは自分達が進化して見せると意気込む紅葉と響であった。
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