第112話 パパと普通にお喋りできるの!

 神殿に戻った奏達は、昼食をゆっくりと取った。


 バアルの復活、楓の進化が終わった今、急いでしなければならないこともない。


 そういう意味で、奏達には随分と余裕ができたと言えるだろう。


 昼食後、奏は双月島の北西部、南西部の開拓をどのように進めるか考えることにした。


 北東部と南東部、つまりは島の東側は、自分達と島の住民の食料を確保するために使う。


 そうであるならば、北西部と南西部は別の用途に使った方が良いだろうと考えている。


 人の数は、身内以上増やすつもりはないので、増えるとしても幻獣系モンスターだけだ。


 それを考えたうえで、双月島の開拓をする訳だが、【創造クリエイト】が使える奏にとって、大抵の物が作れることは選択肢が多過ぎる。


 だから、選択肢を絞るため、参考になりそうな情報がないか掲示板を見ることにした。


 奏がソファーに座ると、当然のように楓が横に座り、一緒に掲示板を見るつもりらしい。


 ということで、2人仲良く掲示板を見始めた。



◆◆◆◆◆


従魔スレ@2


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◇◇◇◇◇ 


203.上野の舞踏家ダンサー

 やっと、私も従魔を手に入れた

 アサルトタイガーの虎太郎


204.横浜の戦士ファイター

 >203

 おめ!


205.鎌倉の死霊術師ネクロマンサー

 >203

 おめ!


206.奥多摩の占術師フォーチュンテラー

 >203

 おめ!

 どうやって従魔にしたの?


207.上野の舞踏家ダンサー

 >204-206

 あざ!

 ムツゴロウスタイルで勝負したら、虎太郎が観念した


208.函館の漁師フィッシャーマン

 きっと、虎太郎が従魔になった時、目が死んでたんだろうな


209.高松の騎士ナイト

 ムツゴロウスタイルで従魔にするとか、強者

 マジリスペクト


210.上野の舞踏家ダンサー

 >208,209

 そんなことないよ

 虎太郎はエロ虎だもん

 私に抱き着かれたら、すぐにお腹見せて来たよ


211.仙台の商人マーチャント

 エロ虎と聞いて惨状


212.お茶の水の修道士モンク

 >211

 焦り過ぎっしょ

 誤字ってるしw


213.松本の狩人ハンター

 エロ虎が反応する210の服装が気になる


214.上野の盾士タンク

 >211-213

 出たな、掲示板エロ三銃士!

 210のことは、俺が守る!


215.上野の舞踏家ダンサー

 >214

 いや、お前も私のことエロい目で見てるじゃん


216.仙台の商人マーチャント

 >214

 m9(^Д^)プギャー


217.お茶の水の修道士モンク

 >214

 よwうwこwそwこwちwらw側wへw


218.松本の狩人ハンター

 >214

 215の服装教えて

 はよ!


219.上野の舞踏家ダンサー

 >216-218

 虎太郎が今、214を甘噛みして悶えてるけど、同じ目に遭いたい?

 そんなことより、他の人の従魔の話が聞きたい


220.富士宮の従魔師テイマー

 >219

 呼ばれたからやって来た

 俺の雷獣、ゴローは有能

 スマホの充電してくれるぜ

 ネットインフラ死んでるから、メモ帳とか電卓にしかならないけど


221.日光の従魔師テイマー

 >220

 メモ帳と電卓でも、全然使えるじゃん

 私のフレイムエイプ、ハクアだとマッチいらずよ


222.北九州の従魔師テイマー

 >220,221

 いいなー

 俺の八咫烏、ヤタは雷も火も起こせないや

 できるのは、目くらましと幻覚とかしか使えない


223.札幌の賭博師ギャンブラー

 >222

 十分使えるだろ

 戦う時も逃げる時も


◆◆◆◆◆



 ここまで読んで、奏は従魔スレを閉じた。


「あんまり参考にならなかったな」


「そうですね。従魔になったモンスターの話も、幻獣系モンスターではありませんでした」


「そりゃそうだろ。普通、幻獣系モンスターなんて滅多に遭遇しねえよ。この島が幻獣の楽園認定されて、奏の<鷲獅子騎手グリフォンライダー>で、幻獣系モンスターからの好感度が高くなってるから今の状況があるだけだ」


 奏達の話を聞いていたバアルが、横から話に割って入った。


「でも、樹海にはアラクネとかバイコーンとかいたじゃん」


「そりゃ、幻獣系モンスターが人の多い所にいねえんだから、従魔になる可能性も低いっての」


「そういうもんか?」


「そういうもんだ。それなら、モンスタースレ見てみろよ。きっと、幻獣系モンスターは少ないだろうぜ」


「わかった。見てみる」


 バアルに言われて、期待は薄いと思いつつ、奏と楓はモンスタースレを閲覧し始めた。



◆◆◆◆◆


モンスタースレ@11


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◇◇◇◇◇ 


411.富士宮の従魔師テイマー

 富士山にケンタウロスのコンビが現れた

 ゴローが偵察に行ってくれて分かったけど、

 倒せる気がしない


412.秋葉原の賭博師ギャンブラー

 >411

 そいつら、今日リベンジするからよろしく


413.上野の学者スコラー

 >412

 秋葉原の賭博師ギャンブラーさんでも倒せないんですか!?


414.秋葉原の賭博師ギャンブラー

 >413

 武器も強化したし、次は負けない


415.上野の学者スコラー

 >414

 頑張って下さい!

 こちらも、新しいダンジョン見つけたので、潰しに行ってきます

 ダンジョンから溢れたモンスターはこんな感じです

 ・アサルトタイガー

  黒を基調に白い縞模様の虎っぽいモンスター

  奇襲が得意

  魔法系スキルは使えず、攻撃は物理攻撃のみ


416.大津の修道士モンク

 比叡山延暦寺にサムライゾンビの群れが出た

 ・アームドゾンビ

  落ち武者の恰好をしたゾンビ

  甲冑姿に槍を持った足軽ばかりだけど、

  痛みに怯まないから隊列を組むと厄介


417.平泉の山賊バンデット

 たまたま遭遇して、激闘の末オーガを従魔にした

 名前は茨木にしたけど、由来はお察しの通り

 ・オーガ

  虎の毛皮の腰布に金棒を持つが、顔は洋風の赤鬼

  咆哮が煩いし、STRとVITがマジで高い

  壁役として期待できる


418.那覇の修道士モンク

 泡盛の酒蔵の跡地がダンジョンになってて、

 ボス部屋で泡盛飲みまくってる奴がいた

 貴重な泡盛を飲んでたのが許せなくて、私のゴッドブローが火を噴いたわ

 泡盛で酔っ払ってたから、酔うのは状態異常に入るらしいわね

 ・デビル

  黒いピッチピチのライダースーツを着て、

  トライデントを握った三等身のバイ〇ンマンみたいな見た目

  トライデントの攻撃と、【火球ファイアーボール】に【闇矢ダークアロー】を使う


419.前橋の射手アーチャー

 俺の弓が全く効かなかった

 ・ロックリザード

  岩でできた鱗で覆われたトカゲ

  コンクリート、レンガ、岩、土、砂を食べて鱗を強化する

  遠距離攻撃はしてこないけど、爪は鋭く尻尾の薙ぎ払いが強い


420.盛岡の農家ファーマー

 気づいたら、俺の農場に紛れ込んでたから従魔にした

 ・ラウドネス

  見た目はほとんど鶏

  嘴がラッパになってて、声量がデカい

  毎朝卵を産む(これが意外とうまい)

  【騒音半球ノイジードーム】ってスキルに閉じ込められると、

  ストレスマッハの騒音がスキル終了まで延々と聞かされて気が狂いそうになる


◆◆◆◆◆



 ここまで読んで、奏達はバアルの言う通り、幻獣系モンスターの話はほとんどなかったことが確認できた。


 唯一載っていたケンタウロスのコンビも、既に紅葉達が倒しに行っているため、双月島に迎え入れることは難しい。


「どうしたものか」


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト2-4をクリアしました。報酬として、ルナに<幻獣のおさ>の称号が与えられました》


《ルナの<賢獣>と<幻獣の長>が、<賢獣姫けんじゅうきに統合されました》


《ルナの【念話テレパス】と【魔力接続マナコネクト】が、【魂接続ソウルコネクト】に統合されました》


 突然、神の声が聞こえたため、奏は首を傾げた。


 そこに、バアルが助け船を出した。


「奏、ラタトスクの耕作作業が終わったんじゃね?」


「あぁ、そういうことか」


 奏の進行中のクエストは、住民を働かせて島を開拓するという内容だった。


 クエストクリアのアナウンスが聞こえたということは、バアルの言っていることが正しいのだろう。


「パパ!」


 その時、ぬいぐるみサイズになったルナが、【念話テレパシー】ではなく、口を動かして奏に話しかけた。


「ルナ、スキルを介さずに喋れるようになったの?」


「うん! パパと普通にお喋りできるの!」


 嬉しそうに笑みを浮かべ、ルナは奏の胸に飛び込んだ。


 そんなルナの頭を、奏は優しく撫でた。


 

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