第107話 奏兄様どいて。そいつ壊せない
進化した楓は、約束の簪が茶髪のポニーテールという点では変わらなかったが、奏のように耳が妖精のような耳だった。
「【
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名前:高城 楓 種族:
年齢:20 性別:女 Lv:100
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HP:1,089/1,089
MP:2,169(+2,169)/2,169(+2,169)
STR:1,089
VIT:1,089(+50)
DEX:1,089(+50)
AGI:2,169
INT:2,169(+2,169)
LUK:1,089
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称号:<聖女><覇王妃><専属メイド><不老長寿>
職業:
スキル:【
【
固有スキル:【
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装備1:ヘラ(ワンドスキン)
装備1スキル:【
装備2:約束の簪
装備3:パーフェクトメイドセット
装備4:結魂指輪(奏)
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パーティー:高城 奏
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従魔:サクラ(ケートス)
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自分の能力値を確認し終えると、楓はとても満足した様子だった。
「奏兄様、私、強くなりました。ちゃんと、<不老長寿>もあります。これで、奏兄様と長き時を一緒に歩めますね♪」
「そうだな。俺だけ生き残ってても悲しいから、楓が一緒にいてくれると嬉しい」
奏が恥ずかしそうにそう言うと、楓の背筋がピーンと伸びた。
「・・・安心して下さい。奏兄様に、寂しい思いは絶対にさせません。私だけは、最後の最後まで奏兄様と一緒です。子供もサッカーチームを2チーム作れるぐらい産みます」
「家族計画が、倍に増えてる。ま、まさか、全部自分達だけで作ろうと言うの?」
「子だくさんにも、限界がある」
楓の発言に、紅葉と響が戦慄した。
「私は奏兄様のたった1人の妻です。奏兄様に愛してもらえれば、いくらだって産みます」
『よく言ったわ、楓。私が付いてるから、心配せずにガンガン生みなさい』
「ヘラ、ありがとう」
「くっ、なんて手厚い後ろ盾なの・・・」
「僕達にはない
ヘラが楓のサポートに回ることで、非常識にしか思えないことが急に現実味を帯び始め、紅葉と響は自分達が神器を手に入れていないことを悔しがった。
そんな女性陣のやり取りを放置して、奏はバアルに質問した。
「バアル、【
「まあ、固有スキルになってるからわかるだろうが、支援の極地みてえなスキルだ。自身のINTの2倍の数値がパーティー全体の全能力値に上乗せされ、1回だけ受けたダメージを無効化できるんだからよ」
「何それ強い」
「まったくだぜ。それと、流石に【
楓の進化により、見えない強制力が働いたらしい。
【
そんなスキルを、ぽろぽろと冒険者が会得したら、世界が記憶喪失に陥った生物で溢れてしまう。
それを阻止するための措置が、【
「あっ、そうだ。楓の進化ですっかりスルーしてたけど、奏君の攻撃ヤバくない?」
「うん。奏ちゃん、刀使ったことないよね? それなのに、あんな綺麗な太刀筋だったから驚いた」
「まあ、あれは【
「奏ちゃん、楽して強くなるなんて羨ましい。僕の理想そのもの」
「響ェ・・・。まあ、横薙ぎの技術は置いといて、奏君、中二心をくすぐる技は何!? 雷を帯びた剣とか、超絶羨ましいんだけど!」
「だろ!? いやぁ、紅葉ならわかってくれると思ったぜ!」
【
それに応じるように、バアルのテンションも上がった。
「バアルさん、良い仕事してるわ! 後任の武器がショボかったら、どうしようかと思ったけど、あれなら立派に2代目として機能してるわ!」
「だよな! だよな! なのによ、奏は『俺、中二病患者じゃなかったから、その辺はわかんねえや』だってよ!」
「・・・はぁ。奏君、それでも奏君は私がコツコツとオタクの道に引きずり込んだ奏君なの? 私は失望したわ」
「なんでそんな呆れた目を向けられてんだ、俺?」
かわいそうなものを見る目で、自分を見てくる紅葉に対し、奏はイラっと来た。
「紅葉お姉ちゃん」
「何よ?」
突然、楓に呼ばれたと思って、楓の方を見た紅葉はその瞬間に自分のほんの少し前の発言を後悔した。
紅葉が見たのは、自分に純然たる殺意を向けた楓の顔だった。
「廃人になりたいの?」
「ひっ!?」
「どの口が、奏兄様に失望したって?」
「こ、これは、言葉の綾よ! オタクとして、私は奏君を恥ずかしくないように育てて来た自負があるの!」
「【
「止めとけ、楓」
ルナに乗った奏が、紅葉に【
「奏兄様どいて。そいつ壊せない」
「あはは、このネタを実の妹から聞くなんて」
紅葉から、乾いた笑い声が漏れた。
もっとも、そんな強がりを言っている紅葉は、冷や汗ザーザーである。
「楓、落ち着くんだ。こっちにおいで」
ルナの背中の上で、奏が両手を広げ、楓を迎えるポーズをすると、楓を乗せたサクラが空気を読み、ゆっくりと奏に近づいた。
そして、手が触れ合う距離になると、楓は奏の手を取り、そのままルナの背中の上に移った。
楓を自分の前に座らせて、楓の後ろからルナの手綱を握ると、奏は楓の変化に気づいた。
「楓、背が伸びたか?」
「・・・え?」
背が伸びたと言う言葉に、今までの威圧感は嘘のように消え、後ろを振り返った楓の表情は満面の笑みに変わっていた。
「ほら、一緒にルナに乗った時、俺と楓の視線は近くなかったと思うんだが」
「言われてみれば、そうです。私、進化したことで、背が伸びたんですか!?」
「いや、人間から
楓の立てた推測に対し、すぐにバアルが否定した。
その時、ピンと来た紅葉の視線が、楓の握るヘラへと向けられた。
「まさか、違うわよね」
『
「このペア怖い!」
「紅葉、どうしたの?」
何かに感づいた紅葉が気になり、響が紅葉に訊ねた。
「楓が進化する時、ヘラが何かしらの細工をして、少しだけど楓の身長を伸ばしたのよ」
「わお、そんなことできるんだ」
「響、反応薄くない?」
「いや、今は神器でも、元は神なんでしょ? だったら、不思議なことができてもそんなことできるんだとしか思わないよ」
「達観してるわね・・・」
紅葉からすれば、耳の形が変わったことよりも、中学に入って以来ピッタリと伸びなくなった楓の背が伸びた方が驚きなのだ。
それに対し、響の反応が薄いため、紅葉は共感してくれる存在がおらずに寂しく思った。
「ヘラ、そんなことまでできるんだね」
『ほんの少しだけよ。妾がこんな姿じゃなければ、20センチは伸ばせたけど、5センチが限界だったわ』
「良いの。これで、155センチになれた。四捨五入したら160センチだもん。私は今、大台への切符を手にしたんだよ」
160センチを大台と呼ぶなんて、なんと控えめな設定だろうか。
それでも、少しでも奏と身長差を埋められ、大人らしくなれたのなら、5センチ背が伸びただけでも楓は満足だった。
「それにしても、ロリ巨乳エルフって、リアルに存在してしまうなんて」
「貧乳で独身の負け犬は黙っててね」
「がはっ!」
オタク的感覚から、うっかりと口にしてしまった紅葉の呟きに対し、楓は毒を吐いた。
奏が喜んでくれるから、巨乳であることを指摘されても嫌だとは思わないが、ロリと言われたくない楓は容赦しなかった。
自業自得で精神的ダメージを受けた紅葉に対し、フォローする者は誰もいなかった。
「m9(^Д^)」
そんな中、
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