間章 Lv100到達の影響
第103話 エルフ耳ktkr! 触らせてもらわなきゃ!
時間は少し遡って、奏達が八岐大蛇と戦っている頃、紅葉のパーティーは水戸でリノタウロスと戦っていた。
リノタウロスとは、二足歩行の犀、ミノタウロスの頭が犀になったモンスターだ。
ミノタウロスやケンタウロスと戦う前に、紅葉達がリノタウロスと戦うことになったのは、紅葉がいつも巡回している掲示板が原因である。
水戸に、槍を巧みに操り、二足歩行する犀がいて、こいつはどうしても倒せないという投稿があったのだ。
水戸周辺で生き残っている冒険者達が、わざわざ掲示板で打倒リノタウロスというページを用意するぐらいには、リノタウロスは水戸の冒険者達の共通の敵だった。
しかし、奏達といるせいで感覚が麻痺しているから実感しにくいが、紅葉達は水戸の冒険者達よりもレベルが30以上差が開いている。
それが何を意味するかというと、リノタウロスは紅葉達の敵じゃないということだ。
「ピエドラ、やっておしまい」
「( *´艸`)」
ゴォォォォォッ! パァァァッ。
「瞬殺。僕の出番がなかったね。まあ、楽できたから全然良いんだけど」
「悪かったわね。それにしても、今のリノタウロス、多分Lv60ぐらいじゃない? レベルアップできなかったし」
「( ^^) _旦~~」
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いてって? ピエドラ、お茶持ってないじゃないの」
「(ρω< )⌒☆」
「てへぺろじゃないわよ!」
「すごい、紅葉ってば、顔文字しか使わないピエドラと意思疎通できてる」
「*。ヾ(。>v<。)ノ゙*。」
「やるじゃん、って何から目線なのよ?」
「流石は紅葉。僕にはできないことを平然とやってのける」
「響、そこに痺れも憧れもしてないでしょうが」
ピエドラと響が交互にボケるので、紅葉は若干疲れている。
最近、奏と別行動のせいで、自分がボケる回数が減り、ツッコミにまわっているため、紅葉にはストレスが溜まっていたりする。
そこに、ピエドラと響のボケ合戦を止めるアナウンスが聞こえた。
《おめでとうございます。日本の冒険者が、人類で初めてLv100に到達し、ヒューマンから
神の声を聞き、紅葉は心当たりがパッと1つ浮かんだ。
「ねえ、響。私、進化した冒険者に心当たりがあるんだけど・・・」
「僕も。というか、これ、奏ちゃんでしょ」
「やっぱり奏君だと思う?」
「うん。逆に、奏ちゃん以外にあり得なくない?」
「だよねー」
紅葉と響の意見が一致した。
自分達が東日本のあちこちに移動し、掲示板に取り上げられるような強いモンスターを倒している間に、奏は
つまり、それだけ富士山でのレベリングが効率的だということだ。
現在、紅葉達のレベルは、紅葉がLv80、響がLv75、ピエドラがLv69、アル&ブランがLv67である。
富士の樹海のダンジョンが残っていれば、レベルアップに丁度良かったのだが、そこは既に奏達が踏破してしまっていて、レベル上げには使えない。
富士山に行くにしても、パーティーの戦力が整わなきゃ、無駄足になる可能性が高い。
そう考えると、今のやり方は効率的なレベルアップと言えなくなってきている。
掲示板で取り上げられるようなモンスターは、確かにそこら辺の
しかし、それ1体しかいないのでは、移動に時間がかかる分、どうしても経験値の取得効率が落ちてしまうのだ。
「これはいよいよ、未発見のスタンピード寸前のダンジョン探索が現実的になったかな」
「バアルさんに、そーいうダンジョンがあるか訊くんだね?」
「ええ。そうでもしなきゃ、奏君達に追い付けないし、別の問題もある」
「楓だね?」
「そうよ。奏君と一緒にいる楓も、奏君と同様に強くなってる。【
「神は死んだ」
「止めなさい」
ニーチェのセリフ、言いたかっただけでしょうと紅葉がツッコむと、響は満ち足りた顔で頷いた。
「とにかく、早く対抗手段を手に入れないと、楓の全能力値がインフレを起こした時、私達の記憶が消されるわ」
「それは困る」
残念ながら、紅葉と響は楓が<覇王妃>の称号を会得したことを知らない。
<覇王妃>の称号を楓が会得したと知り、2人は絶望するのだが、それはほんの少しだけ後のことである。
そんな時、着信音が鳴った。
プルルルルルルッ♪
念話の相手は、楓だった。
『もしもし、紅葉お姉ちゃん?』
「どうしたの、楓? 楓から念話なんて珍しいじゃない」
『奏兄様の代わりに、紅葉お姉ちゃんに伝えたいことがあるの』
「何かあったの?」
『バアルさんの復活、神殿でやるけど今から来れる?』
「えっ、なんで神殿? というか、まだバアルさん復活してなかったの?」
まだ、バアルが復活していないことに驚き、紅葉は楓の質問に質問で返した。
「バアルさん、折角復活するなら神殿で復活したいんだって」
「そ、そうなんだ。それはなんで?」
「その方が、神々しい演出で復活できるからだってさ」
「あっ、そうなのね・・・」
復活の仕方に拘りがあると知り、紅葉は苦笑いした。
『ところでさ、奏兄様が進化したのは知ってる?』
「知ってるわ。私達にも、アナウンスが聞こえたもの。奏君、
『そうだよ。でもね、奏兄様は黒髪黒目のままだよ。唯一変わったのは、耳が妖精みたいな尖がっただけかな』
「エルフ耳ktkr! 触らせてもらわなきゃ!」
オタクとして、身内がエルフになったのなら、エルフ耳を触らせてもらう特権はあるはずだと思い、紅葉のテンションが上がった。
『はっ? 何言ってんの? 紅葉お姉ちゃん如きが奏兄様に触れて良い訳ないじゃん。身の程を知れ。記憶消すよ? 今の私なら、余裕で消せるから』
「・・・楓のハードモード、きっついなぁ」
念話で聞こえてくる声から、明確な殺意を感じ取り、紅葉は泣きそうになった。
どこでどう間違ったら、ここまで姉に酷いことを言うようになるんだろうかと誰かに問いたくなった。
『お姉ちゃん、この際だからはっきり言っておくけど、奏兄様に少しでも色目を使おうものなら、容赦なく記憶消すから。響とコソコソしてるよね? それが形になっても、2人の記憶を消す。覚えといて』
「は、はい。ごめん、楓。私達、まだ帰れないわ。帰ったら、復活したバアルさんの姿を見るよ」
『わかった。じゃあね』
プツン。
念話が切れた。
その瞬間、紅葉は頭を抱えた。
「終わったぁぁぁ! 外堀計画終了のお知らせぇぇぇっ!」
「まさか、自分が力をつけるまで、僕達を泳がせてたなんて・・・」
「m9(^Д^)」
紅葉と響が、orzの姿勢になると、ピエドラがそれを嘲笑った。
「あのね、ピエドラ。私が危険ってことは、私の従魔のピエドラも危ないってことだからね?」
「(゚ロ゚; 三 ;゚ロ゚)」
「何急に慌ててんのよ? 他人事な訳ないでしょ? 私の記憶が消えたら、誰がピエドラの面倒を見るのよ?」
「ヾ(。>﹏<。)ノ」
「こうなったら、帰るまでに少しでも強くなるわよ」
「(・ω・)ゞ」
紅葉とピエドラの間で、利害が完全に一致した。
「ヒューマンノ女ッテ怖イナ」
「怖イ。俺達、モンスターデ良カッタ」
「なんで他人事みたいに言ってんの? 僕達も強くなるんだよ?」
「「エッ、ソウナノカ?」」
「そうだよ。実力行使されたら、僕はアルとブランと逃げるしかないんだから、逃げ切れる可能性を上げるには、レベルアップしかないじゃん」
「今日ハタクサン移動シテ戦ッタカラ疲レタ」
「働キタクナイデゴザル」
「確か、ここからそう遠くない場所で、ローカストアーミーが出る場所があったっけ」
「行コウ。バイキングダ」
「食エル時ニ食ッテオカナイトナ」
いまいちやる気のないアル&ブランに対し、響は食欲を利用して働かせることにした。
それに紅葉も賛成し、紅葉達は双月島に帰る前に、ローカストアーミーが出現したとされる場所へと向かった。
その結果、大して経験値を会得することができないとしても、何もせずに双月島に帰るよりは、紅葉達の心が少しだけ軽くなるからだ。
この後、ピエドラとアル&ブランは、無茶苦茶ローカストアーミーを捕食した。
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