第61話 記憶してるか? 俺、退魔師だから
翌日、奏達はダンジョンのY字路までやって来た。
昨晩、全員で話し合った結果、倒せるのであればダンジョンボスを倒してしまい、スタンピードの発生リスクをなくすことが決まった。
それもあり、奏達は過去2回のダンジョン探索の時よりもやる気を出している。
特に、響はゴーレム系のモンスターが相手だと、攻撃のほとんどが通用しないので、どうせ戦うなら他のモンスターと戦いたいのだ。
Y字路を左に曲がり、そのまま進む奏達の前に、奇妙な光景が広がっていた。
「何がしたいんだ、こいつら?」
「ボディビルダーですか?」
「これだけ集まって同じポーズを取るとか、威圧感すごいわね」
「暑苦しい」
「ピュイ・・・」
モストマスキュラーのポージングを決めるマッチョな体をしたゴーレムが、横に3体、縦に5体ずつ並んでおり、奏達は引いていた。
『ケケケ。ゴーレムビルダーの団体さんか。こいつら、近接攻撃しかできないし、動作の間にポージングを挟む変な癖があるぜ』
「馬鹿にしてんのか?」
『さあな。石でできたゴーレムが、筋肉をアピールするなんて俺様にも意味わかんねえよ。だが、こいつらを倒したら、その後はボス部屋まで何もいないみたいだな』
「何そのエンカウントバランス。ダンジョンボス仕事しなさいよ」
バアルの説明に対し、紅葉がツッコみを入れた。
「とりあえず、強化します。【
どの道戦うのだからと、楓はパーティー全体の能力値を底上げした。
「じゃ、僕もお膳立てかな? 【
グラグラグラァッ! ガタガタガタッ!
響はゴーレムビルダーの集団の足場を陥没させ、大穴に全て落とした。
「ピュイ!」
ゴォォォォォッ!
ルナも自分だってやれると気合を入れ、穴に落ちてバランスを崩したゴーレムビルダーの集団を目掛けて【
「ルナ、協力する。【
ドッシィィィィィン!
ルナの放った【
重力は下に向かう力なので、ゴーレムビルダーの集団目がけて穴の中に放たれた【
「ルナちゃん、奏君、便乗させてね。【
ドカァァァァァァァァァァン! パァァァッ。
ルナの【
その結果、ゴーレムビルダーの集団は、モストマスキュラーのポージングだけしたまま爆散した。
ぶっちゃけ、出オチだった感は否めない。
《奏はLv70になりました》
《奏はLv71になりました》
《奏はLv72になりました》
《楓はLv68になりました》
《楓はLv69になりました》
《楓はLv70になりました》
《紅葉はLv64になりました》
《紅葉はLv65になりました》
《紅葉はLv66になりました》
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉は、世界で初めて少ないコストで爆発の効果を倍以上にしました。初回特典として、<爆弾魔>の称号が与えられました》
《響はLv57になりました》
《響はLv58になりました》
《響はLv59になりました》
《響はLv60になりました》
《響は【
《ルナはLV55になりました》
《ルナはLV56になりました》
《ルナはLV57になりました》
《ルナはLV58になりました》
神の声が止むと、バアルはホッとした様子だった。
『今回に関しては、ドロップしたのがマテリアルカードで良かったぜ』
「珍しいな。モンスターカード、欲しいんじゃないのか?」
『馬鹿、こんな奴らのモンスターカードを吸収して、俺様がムキムキになったらどーすんだよ? 世界の損失だぞ?』
「そうかもしれないけど、自分で言うな。ムカつくから」
シュゥゥゥッ。
響が【
《バアルはLv70になりました》
《バアルはLv71になりました》
《バアルはLv72になりました》
バアルのレベルアップが済むと、奏はドロップしたマテリアルカードを拾い上げた。
こういう時に限ってドロップ率が高く、マテリアルカードは3枚もあった。
マテリアルカードには、粉上のプロテインの袋が10セット描かれていた。
「なんで? なんでプロテインなんだ? ゴーレムだろうが・・・」
『一気に30セットも手に入ったな。1年分のプロテインはあるだろうぜ』
「別にムキムキになりたい訳じゃないんだけど」
「待って、奏君! だったら、そのプロテインぜ~んぶ頂戴!」
突然、奏とバアルの話に紅葉が首を突っ込んだ。
「あっ・・・(察し)」
『おい、奏。どうしたんだよ? 何を察したんだ?』
「バアル、触れてやるな。報われない努力だとしても、俺達にそれを止める権利はない」
「言ったわね、奏君。絶対に見返してやるんだから! バインバインのおっぱいになって、楓を超える爆乳になってやるんだから!」
プロテインで豊胸するという、いつだったか女性タレントがテレビで口にした手法を紅葉は試すつもりである。
紅葉のやる気から、何をしようとしたか察した奏は深く追求しなかったのだが、紅葉が自爆した。
スッとマテリアルカード3枚を紅葉に渡すと、奏達はボス部屋を目指して前進した。
それから20分後、一切モンスターと遭遇することのないまま、奏達はボス部屋まで辿り着いた。
荘厳な屋敷にありそうな扉が、奏達を待ち構えていた。
奏達は頷き合うと、扉を開けた瞬間を狙われることも考慮して、奏が扉を開けた。
ギギギッ。
ボス部屋の扉の先には、何もいなかった。
『待ッテイタゾ。【
ゴォォォォォッ!
『奏、上だ!』
「させません! 【
キィィィィィン!
黒い業火が、部屋の上空から扉を開けた奏に向かって放たれたが、楓がすぐに結界を張って奏を守った。
どうにか奏を守り切ったものの、楓が展開した結界は【
「ありがとな、楓」
「はい! 【
本当は、もっと言いたいことがあったが、楓はそれよりも奏の強化を優先した。
『ガーゴイルじゃねえか。Lv70はあるだろうぜ』
「あいつってさ、ゴーレム系? それとも悪魔系?」
奏は上空で翼を広げ、余裕ぶっている石の悪魔を指差してバアルに訊ねた。
『体は石で構成されてるが、悪魔系モンスターだ。あぁ、そういうことか』
「おう。それが本当なら、俺の出番だろ。ってことで、全員待機。あれは俺がやる」
「わかりました」
「了解」
「わかった」
「ピュイ」
奏だけで戦うとわかると、ガーゴイルの表情に苛立ちが見られた。
『舐メラレタモノダ』
「当然のように喋るんだな」
『我ハ他の有象無象トハ違ウ』
「あっそ。【
バチィッ! ズドォォォォォォォォォォン!
『ヒギュアァァァァァッ!!』
パァァァッ。
蒼い雷のビームが、瞬く間にガーゴイルの心臓部分を貫いて倒した。
油断していたガーゴイルは、間抜けな断末魔の叫びをあげながら魔石とマテリアルカードになった。
《おめでとうございます。個体名:高城奏率いるパーティーが、双月島唯一のダンジョンを踏破しました。報酬として、パーティーリーダーの奏に、<統治者>の称号を与えられました》
《奏の<鋼鉄軍師>と<統治者>が、<一国一城の主>に統合されました》
《奏はLv73になりました》
《奏はLv74になりました》
《奏はLv75になりました》
《奏の【
《楓はLv71になりました》
《楓はLv72になりました》
《楓はLv73になりました》
《紅葉はLv67になりました》
《紅葉はLv68になりました》
《紅葉はLv69になりました》
《響はLv61になりました》
《響はLv62になりました》
《響はLv63になりました》
《ルナはLV59になりました》
《ルナはLV60になりました》
《ルナは【
《ルナはLV61になりました》
「流石は奏兄様です!」
「ピュイ!」
「「え?」」
神の声によるリザルトラッシュが終わると、楓とルナは奏が圧勝することがわかっていたと言わんばかりに得意気だった。
その一方、紅葉と響は困惑していた。
それを見た奏は、紅葉と響にニヤッと笑い、こめかみに人差し指を当てた。
「記憶してるか? 俺、
その言葉を聞き、奏が悪魔系モンスターと対峙した時、全能力値が2倍になることを2人は思い出し、奏が圧勝した理由に納得した。
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