第59話 恒例の分かれ道だぜ。どっちに進みたい?
ダンジョンの探索を再開すると、奏達は通路では初めて見る物を視界に捉えた。
しかも、通路の両脇にジグザグになるようにいくつも設置されている。
「バアル、これってマジで宝箱? 偽物じゃね?」
『おう。考えてる通り偽物だぜ。こいつらはミミックだ。宝箱だと思って近づいた奴を丸呑みにするモンスターだな』
「何それ怖い。遠くから排除しよう。【
ジジジジジィン! パァァァッ。
左側の壁に面して設置された3体のミミックが一瞬で倒れた。
魔石と一緒にマテリアルカードもドロップした。
「右側もやっちゃおう。【
ジジジジジィン! パァァァッ。
右側の壁に面して設置された3体のミミックも一瞬で倒れた。
先程と同様に魔石と一緒にマテリアルカードもドロップした。
シュゥゥゥッ。
バアルに魔石を吸収させると、奏はマテリアルカードの絵柄をチェックした。
「箱? しかも、真ん中の?マークは何?」
『こりゃギフトボックスだな。使えば、ランダムにアイテムが手に入る』
「ふーん。じゃあ使ってみるか」
バアルの説明を聞き、奏は1枚目のマテリアルカードを使った。
すると、マテリアルカードから煙がボワッと出てそれが
『ほう、【
「楓、使って」
「私で良いんですか?」
「勿論だ。楓に俺達の命を預けてるんだから、楓が会得するべきだろ」
「・・・わかりました。何があっても奏兄様達を助けられるように頑張ります!」
楓の目にやる気が溢れ、楓は【
《楓は【
《おめでとうございます。個体名:秋山楓が、回復、状態回復、強化、防御、清掃に関わるスキルを世界で初めて揃えました。初回特典として、<メイド>の称号とそれに見合った装備が与えられました》
《楓の<女房役>と<メイド>が、<専属メイド>に統合されました》
ピカァン。
神の声が聞こえたすぐ後、楓の体が光に包まれた。
光の中で楓の服装が代わり、それが収まると楓はメイド服を身に着けていた。
「「「え?」」」
「ピュイ?」
今まで称号の獲得に伴って服装が変化することがなかったので、奏達は全員目を丸くした。
『おいおい。神の誰かが楓のファンになったな。依怙贔屓してやがる』
「ふぇ!? な、なんで!? 私、メイド服着てます!」
楓もいつの間にか服装が変わってしまったため、びっくりしていた。
「とりあえず、【
「は、はい! 【
-----------------------------------------
名前:秋山 楓 種族:ヒューマン
年齢:20 性別:女 Lv:65
-----------------------------------------
HP:355/355
MP:355 (+355)/355(+355)
STR:350
VIT:350(+50)
DEX:360(+50)
AGI:350
INT:360(+360)
LUK:360
-----------------------------------------
称号:<聖女><先駆者><専属メイド>
職業:
スキル:【
【
-----------------------------------------
装備1:ヤドリギの杖
装備2:約束の簪
装備3:パーフェクトメイドセット
-----------------------------------------
パーティー:高城 奏・秋山 紅葉・新田 響
-----------------------------------------
「パーフェクトメイドセットのおかげでVITだけじゃなくてDEXまで+50になってます」
「そうらしいな」
「でも良かったです」
「何が?」
「私の服やシェルベストは消えちゃいましたけど、奏兄様のくれた鼈甲でできた楓の簪だけは残ってくれました」
満面の笑みで奏から貰った特別な簪が残ってくれて良かったと言うと、奏は何も言わずに楓を抱き締めた。
プレゼントをしてここまで喜んでくれた楓を愛おしく思ったからだ。
『約束の簪か。INTを元の能力値分上昇させるアイテムだ。奏が楓嬢ちゃんにプロポーズし、楓嬢ちゃんが<専属メイド>の称号を会得したことでアイテム化しやがった』
「バアルさん、奏君と楓が2人だけの世界に入っちゃったから先に<専属メイド>の効果を教えてよ」
『あいよ。MPが能力値分追加されるだけでなく、特定の対象へのプラスの影響を与える動作の効果が倍になる。つまり、楓嬢ちゃんは奏限定で回復やら強化にブーストがかかったと思ってくれ』
「リア充爆発しろ!」
バアルの説明を聞き、紅葉は今の心境を叫んだ。
「奏兄様、私が生涯をかけてご奉仕しますね」
「ありがとう、楓」
「ピュイ」
「ん? ルナも一緒にいてくれるのか?」
「ピュイ!」
「よしよし。ルナもありがとな」
「ピュイ♪」
ルナは自分も一緒にいるとアピールし、奏がそれを理解してくれたので喜んだ。
「奏ちゃん、そこに僕の居場所はある?」
「あるけど、俺に愛人はいらないから、相手は見つけろよ?」
「・・・前向きに検討する」
あくまでも奏に養ってもらいたい響は、政治家のような発言で言葉を濁した。
それから、奏は2枚目のマテリアルカードを紅葉に渡した。
「紅葉、機嫌直せって。ほら、2枚目は紅葉に使ってもらうからさ」
「むぅ、わかったわよ」
ギフトボックスというLUK頼みのアイテムを使えるとなれば、紅葉の
「STRをLUKへ! 【
紅葉がスキル名を唱えると、紅葉の体が薄い光の膜に包まれた。
どうやら、この膜に包まれている3分間がLUKの数値の上がる時間のようだ。
時間が惜しいので、紅葉はそのままギフトボックスのマテリアルカードを使った。
すると、マテリアルカードから煙がボワッと出てそれが茶色い巾着袋に変わった。
『良いんじゃねえの? そいつは収納袋だ。トランクルーム1つ分は収納できるぜ。【
「そっか。じゃあ、これは私が使わせてもらうわ。奏君と別行動した時に、重宝しそうだし」
「俺は構わないよ」
「私も大丈夫。何かあったら、奏兄様にお願いするもん」
「僕の分は紅葉に持ってもらうよ」
「しょうがないわね。それぐらいはしてあげるわ」
別行動の時に備えて、収納袋は紅葉が使うことになった。
マテリアルカードの確認も終わったので、奏達は探索を再開した。
しばらく進むと、Y字路に行き当たった。
『恒例の分かれ道だぜ。どっちに進みたい?』
「バアル、今日はこのダンジョンの間引きに来たんだ。適当な所で切り上げるから、探索はあと1時間ぐらいだ。その条件ならどっちが相応しい?」
『質問に質問で返すとは、奏もやるようになったじゃねえか』
「くだらない前置きは良いから、真面目に答えてくれ」
奏がジト目で睨むと、バアルはくだらないやり取りを止めた。
『へいへい。それなら右だな』
「その心は?」
『進めば行き止まりになるが、良い感じの数のモンスター反応がある』
「わかった。右に行こう」
間引くためには、それなりの数のモンスターを倒す必要がある。
だから、奏はバアルの説明を信じ、右の道を選択した。
右の道を進んでいくと、戦闘を歩いていた響の足が止まって口を開いた。
「待った」
「ん? どうした響?」
「奏ちゃん、ここから先、地面に何かある」
「マジか。・・・確かに、これは何かあるな」
「でしょ?」
響に指摘されて奏も通路の先の地面を注意して観察すると、小さい穴が線のようにになって、通路を横断していた。
「バアル、これはなんだ? 罠か?」
『ご名答。あの穴の線を越えた途端、穴から鉄格子が出現して閉じ込められる。その後に床からモンスターが現れるぜ』
「知らせろよ」
『響嬢ちゃんが気づかなきゃ俺様が知らせてたさ。響嬢ちゃんが気づいてそうだから任せてただけだ』
バアルとしては、なんでもかんでも先回りして知らせると、奏達から注意力を奪ってしまうと思って黙っていた。
決して自分の探知の実力が劣っているため、それを誤魔化そうとした訳ではないのだ。
「そりゃすまんな。じゃ、罠を起動させてみるか」
ヒュッ。ガッシィィィィィン!
『おい!』
シュイン。
久し振りに投げられたバアルは、鉄格子に閉じ込められてすぐに奏の手元に戻って奏に抗議した。
「怒るなよ。バアルしか投げるのに都合の良い物がなかったんだ。それに、お前の言った通りだった」
『フン。言った通りだろ?』
奏達の前で鉄格子の中の地面から穴が開き、そこからスロットマシーンの胸部を持つメカメカしい石像がせり上がって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます