第32話 上等よ。ゾンビホイホイになってあげるわ
楓と紅葉が仲直りした後、時間も少し経ったので奏達は再び掲示板を見ることにした。
◆◆◆◆◆
現状共有スレ@1
1.
生き残った日本人のパーティーが、キングモンスターのダンジョンを踏破したため、本機能が日本人に先行して解禁されました。
只今より、生存者を”冒険者”と呼称します。
こちらのスレッドは、【
誹謗中傷等、他者を意味なく害する者は、本機能の利用停止処分とします。
不適切なコメントをした者も、同じく本機能の利用停止処分とします。
また、私は一切の質問に回答しませんので、質問しても無駄です。
以上を理解したうえで、本機能を有効活用して下さい。
◇◇◇◇◇
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55.名無しの冒険者
ゾンビが出ました
場所は名古屋です
灰色の肌に白目で、ボロボロになった服を着てます
ただ、先頭の奴だけ目が赤いです
何か情報はありませんか?
56.名無しの冒険者
>55
私も見た!
場所は横浜で、こっちは赤い目のゾンビが死体に噛みついてるのを目撃したわ
噛みつかれた死体の体の色が、どんどん灰色になってくの
そして、うーうー、呻きながら起き上がって歩き始めたわ
57.名無しの冒険者
>56,57
僕もそれ見たよ
場所は博多
赤い目の奴に噛まれた暴走族が、灰色のゾンビになっちゃったの
夜中に騒音ばら撒いて迷惑だとは思ってたけど、ゾンビになるとは予想外でしたw
58.秋葉原の
>55,56,57
赤目のゾンビは、ゾンビキャリア
死体、生存者問わず噛めばゾンビ化する
ゾンビに噛まれても、ゾンビ化はしない
でも、ゾンビになったら、STRが倍以上になる
◆◆◆◆◆
「紅葉、投稿したのか? というか、コテハン設定できたんだ」
「まあね。場所はどこどこって言うのは面倒だし、情報に信憑性を持たせるなら、Lv30以上で職業蟻って伝えた方が良いでしょ?」
「確かにな」
「でもさ、紅葉お姉ちゃん」
「何かしら?」
「
「あっ、しまった・・・」
楓の疑問に、紅葉はやってしまったと額に手をやった。
◆◆◆◆◆
58.秋葉原の
>55,56,57
赤目のゾンビは、ゾンビキャリア
死体、生存者問わず噛めばゾンビ化する
ゾンビに噛まれても、ゾンビ化はしない
でも、ゾンビになったら、STRが倍以上になる
59.上野の冒険者
>58
情報助かる!
コテハンが怪しいけど、その情報はマジで助かった!
パーティー組んでた友達がゾンビに噛まれて、パーティー内で揉めてたんだ
ゾンビ化する前に殺すか否かなんて、俺にはそんな言い争いは耐えられないよ
職業持ちってことはLv30以上だろ?
そんな経験ある人が言うなら、根拠としては十分だ!
マジで感謝!
60.横浜の冒険者
>58
一体、どれだけ戦ったのかしら?
そもそも、
61.仙台の冒険者
>60
きっと、58はキングモンスターのダンジョンを倒したパーティーメンバーなのよ
62.函館の冒険者
>60.61
熊倒したのに、Lv10までしか上がらなかったんだが・・・
あと何頭熊を倒せばLv30になれるんだろ
先が見えねえ
◆◆◆◆◆
楓が心配していた事態は、上野の冒険者のおかげで現実にはならなかった。
「良かったね、紅葉お姉ちゃん」
「そうね。上野の冒険者のおかげで助かったわ。それに、ゾンビは人が多い場所で目撃されることもわかったわ」
「確かにな。上野の方では、犠牲者も出てるみたいだし、ここもすぐ近くだ。見つかるだけ倒そう」
『ん? ゾンビを見つけたいのか?』
静かに話を聞いていたバアルだが、奏がゾンビを見つけたいとわかると口を開いた。
「見つけ方があるのか?」
『あるぜ。ゾンビってのは、音に敏感なんだ。目は白目で何も見えてねえ。ゾンビキャリアもそうだが、大きな音を鳴らしゃ、ホイホイ寄って来るぜ』
「音と言えば、丁度良いスキルを紅葉が使えたよな」
「【
「上等よ。ゾンビホイホイになってあげるわ」
拳を握り、紅葉はやってやると覚悟を決めた。
「紅葉、わかってると思うけど、無暗に物は壊すなよ?」
「大丈夫。上空を爆破するから。【
ドガァン!
奏の確認に笑顔で応じ、紅葉は斜め上の空を爆破した。
それから、奏達が物陰に隠れていると、爆破した地点に呻き声をあげながらゾンビ達がノロノロと集まって来た。
その中には、赤い目をしたゾンビキャリアも紛れていた。
「飛んで火にいる夏の虫ってか? 【
ピカッ、ゴォォォォォッ! パァァァッ。
光り輝く炎が、わらわらと集まったゾンビの集団を一掃した。
《奏はLv43になりました》
《楓はLv41になりました》
《紅葉はLv38になりました》
神の声が、ゾンビの駆除を終わらせたことを告げた。
『おい、奏。ゾンビキャリアがマテリアルカードを落としたみたいだぜ。魔石のついでに回収しちまえよ』
「そうだな」
シュゥゥゥッ。
《バアルはLv43になりました》
奏は魔石をバアルに吸収させると、落ちていたマテリアルカードを拾いに行った。
そのカードには、煮干しの袋が10袋描かれていた。
「煮干し?」
『多分、ゾンビキャリアのマテリアルカードだな。ゾンビだったら、煮干し1袋だろうぜ』
ゾンビを倒して、煮干しが手に入るとは一体どういうことだろうか。
どちらも目が死んでいるということにかけているのかもしれない。
煮干しの絵をずっと眺めていても、何か起きることもないので、奏はそのカードを胸ポケットにしまった。
『奏、ここじゃないところに行こうぜ』
「なんで?」
『だってよ、奏が【
「なら、動かない。楽できるし」
『クソ、しまった! 奏はそういう奴だった!』
身の安全を確保できたのに、それを自分から捨てるなんてあり得ない。
バアルは奏の思考原理を忘れており、うっかり自分がそれを刺激することを口にしたことを後悔した。
楓と紅葉が奏に合流すると、楓が奏に自分の考えを提示した。
「奏兄様、あの、ここに私達の家を出せませんか?」
「出すのは良いけど、どうして?」
「そろそろ、奏兄様のお昼寝の時間ですから」
「よし、出そう」
「ちょーっと待ったぁ!」
昼寝と聞き、ノータイムでスリープウェルパレスを出そうとした奏に、紅葉が待ったをかけた。
「俺の昼寝を邪魔する気?」
「違うわ。どうせ出すなら、瓦礫をどけて平らな地面にしなきゃ駄目でしょ?」
ツッコむところはそこではないはずだが、ここにツッコミは不在だった。
「確かに。でも、瓦礫を全部しまえと?」
「違うわ。作り変えるのよ。【
紅葉がスキルを発動すると、瓦礫の山が光り始めた。
光の中で瓦礫が一体化し、壁と立法体の建物のシルエットへと変わっていく。
光が収まると、四方を塀に囲まれた立方体のクリーム色の家が姿を現した。
「ふぅ。大きい物を合成すると、かなり疲れるわね」
「お疲れ様。折角合成してくれたんだし、中に入ろう」
「そうね」
「わかりました」
奏達は、今できたクリーム色の家の中に入った。
家と言いつつ、中には何もなく何もない空間が広がっていただけだった。
雨風を凌げるのだから、それで十分かもしれないが、椅子や机がないのは寂しいものだった。
「【
3連続で、楓がスキル名を唱えると、奏達の体に付着した汗や汚れがなくなり、清潔な状態に変わった。
「【
奏は布団を取り出すと、早速その中に入った。
「奏兄様、私も一緒に寝ます」
「奏君、私も」
「2人ならまだしも、3人じゃ狭い」
一緒に寝ることについて、ツッコむところではないだろうか。
いや、既に眠気に誘われている奏に、そこまで考える力はなさそうだ。
「大丈夫です。私、奏さんに抱き着いて寝るから場所を取りません」
「私も平気よ。昨日昼寝した時だって、一緒に寝られたじゃないの」
「それもそうか。じゃ、お休み」
寝ると決めたら、奏の行動は早い。
あっという間に寝息を立て始めた。
楓は奏の寝顔に頬を緩ませつつ、奏の体に抱き着くと安心して眠った。
紅葉もこの家の合成で疲れたのか、すぐに眠ってしまった。
他の掲示板の住人達が苦労している中、奏達はしっかりと休みを取るのだった。
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