今日の役は、オレしか居ない重要なヤツ
「無理矢理付き合わせてごめんね。今度は1人で行くから、嫌いにならないでね」
「え、あ……う、う」
あー、そういうこと。
オレは、梓のその発言で全てを理解した。
五月も和哉も顔真っ赤にして、何を考えるやら。これ、いつ気づくだろう。このまま放っておいて見てるの楽しいかも。
てか、なんで五月は気づかないんだ?
「す、鈴木さん。あの」
「なあに?」
「えっと、俺と会ってから、何回くらい1人でイってる……?」
「え、わかんないよ。日常だし」
「!?」
「!?」
笑うな、オレ。耐えろ、オレ。
そして、五月と和哉の真っ赤な顔を目に焼き付けろ。スマホで写メっていいか? いや、流石に怒られそうだからやめよう。
にしても、五月のやつ耳まで赤いぞ。こいつ、こんな純情だったか?
あれだけ女相手にしてんだから、慣れろって。
オレの方が梓の性格わかってるってどういうことだよ。
オレは、笑っているのがバレないよう一歩後ろに下がった。和哉の顔が見えねぇが、尊い犠牲だ。その分、五月の顔を堪能しよう。
「あ、え、じ、じゃあ、その。俺の前で1人でイったことは?」
「どういうこと? 青葉くんが一緒なら、1人じゃないよ?」
「……奏、どうしよ。俺、記憶喪失かもしれない」
「ぶは!? か、勘弁して、くれ」
「笑うな! 真剣なんだよ!」
「そうだよ、奏。青葉は真剣に」
「ぶふっ、ふは、ふ、ふふ……」
「「奏!!」」
もうダメだ!
泣きそうになっている五月の表情に耐えきれなくなったオレは、盛大に吹き出した。すると、赤面コンビがこっちを見ながら牽制してくる。その顔すら面白れぇ。
「こっちは、真剣なんだよ!」
「他人事だと思って!」
「2人とも、どうしたの?」
「あ、いや……。えっと……」
「青葉くん、双子ともしてくれたよね。それも嫌だった……?」
はい、爆弾投下。
五月の表情は、っと……。うん、死にそう。
和哉に至っては、ヘナヘナと床に腰を下ろしてしまった。大丈夫か?
「……え、青葉ってロリコンなの?」
「違う!」
「梓も童顔で幼めだし、そっちの気がありそうだよな」
「別に性癖はどうこう言わねぇから……」
「変な誤解やめてよ! そういうのないって!」
「そっかー、五月はロリコンだったかあ」
「違うって! 鈴木さんは、どんな見た目だっていい! 俺は、鈴木さんの全部が好きなの!」
梓に聞こえないように、ヒソヒソと話してやってたのにな。
五月のやつ、耐えきれなくなって結構大きめの声でそう発言しちまった。おかげで、赤面コンビが赤面トリオになったぜ。
これは、あと一息でさらに面白くなりそうだ。
「梓の双子も「鈴木」だぞ、五月」
「違うって!」
「……ストライクゾーンの下は小学生か。別にいいと思うぜ、うん」
「違う! 俺が好きなのは、梓さん! 鈴木梓さんだけだ!」
ほい、一丁上がり。
ふー、今日は梓の危機を救ったり五月に名前呼ばせたり、良い仕事したわ。これは、後で梓の手料理もらわないとな。うんうん。
「……え?」
「あ……。ご、ごめん急に、その」
「う、うん……」
「とりあえず、その。……す、好きです」
「うん……」
「俺が好きなのは、鈴木さんだけだから」
「……名前」
「…………梓さんが好きです」
なんて言いながら、手を重ねている。点滴の管がなけりゃあ、きっとハグしてただろうな。そんな雰囲気があるよ。
隣を見ると、和哉が「仕方ない」って顔して笑いながら2人を見ていた。
……もしかして、和哉も梓が好きだったのか? だったら、同じ失恋者同士仲良くしような。仲良く、こいつらのこと見守っていこうな。
なんてオレが笑いかけると、和哉も気づいたのか一瞬だけ驚いた顔して、すぐに笑い返してきた。やっぱ、こいつは良い奴だ。
五月、良いクラスメイトじゃん。オレも、正樹に会いたくなってきたわ。
「ってことで、答え合わせしようぜ」
「え?」
「答え合わせ?」
「奏くん、何か問題解いてたの?」
「はは、そうじゃなくてだな」
天然が3人居ると、ツッコミ役が大変だぜ。
でも、オレは役者だからな。どんな役でも華麗に演じてみせる。完璧にな。
「梓が言ってんのは……」
誤解が解けたら、こいつらどんな反応するんだろう。
その顔を見るのが楽しみだぜ。
ちなみに、五月が大声で伝えた告白は、リビングにもバッチリ聞こえてたらしい。
神田さんと梓父が、「青春だ」「ですねぇ」って会話しながらコーヒー飲んでたって話を後から聞いたよ。
五月のやつ、梓父にめっちゃ睨まれながらも「娘のこと、これからもよろしくね」って言われて嬉しそうに笑ってたんだ。
***
「……連絡が来ない」
「先輩、どうしたの?」
五月くんからの連絡を待つ僕は、途中のコンビニの前でふみかちゃんとアイスを食べていた。
あと10分待って来なければ、こちらからかけてみよう。
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