うまく笑えてるかな
「じゃあ、私、青葉くん狙っても良い?」
「……え?」
今、理花なんて言った?
青葉くんを……?
理花の言葉で、私は立ち止まってしまう。それに合わせて、理花も。
マリたちがお昼行くの待っててくれてるから、早く行かなきゃいけないのに。
「梓ちゃんと付き合ってたら申し訳ないなって。付き合ってないなら、頑張っちゃお〜」
「……理花、青葉くんのこと好きなの?」
「んー、気になってるって感じ。だってね」
そう言って、理花は楽しそうに私の耳へ顔を近づけてくる。
「私、見ちゃったんだ。青葉くんの顔」
「え?」
「昨日話してる時にね、横顔がチラッと見えたの。ほら、青葉くんって前髪長いでしょう?」
「う、うん……」
「すっごい格好良かったの! 正面から見たいなあ。でも、これから一緒に生徒会の仕事やるから、いくらでも機会あるし」
「……」
そっか。
理花、見たんだ。青葉くんの顔。
「青葉くんって、ミステリアスだよね。顔隠して、年中セーター着込んで。俄然興味が出てきたって感じ」
マリから聞いたんだけど、理花って結構男子にモテるんだよね。華奢だからか、「守ってあげたい」って思わせるんだって。
きっと、青葉くんも理花のことなら気に入るだろうな。彼、守ってあげたいって気持ちが強いみたいだし。面倒見も良いし、もしかして相性抜群じゃない?
「梓ちゃん、青葉くんに彼女いる話聞いたことある?」
「……ない、けど」
「やった! 梓ちゃん、応援してね!」
「う、ん……」
……青葉くんには、このくらい可愛くて気の利く子が良いのかも。私みたいに、なんの取り柄もないギャルなんかより、何倍も。
私の脳内には、青葉くんと理花が楽しそうに手を繋いで歩いている様子が浮かんでいる。……うん、お似合いだわ。理花の方が、青葉くんを笑顔にできる。
「……青葉くん呼んでくるね」
「よろしく〜」
嬉しそうな理花を残して、私は教室へと入っていく。
青葉くんは……いたいた。眞田くんたちとテスト勉強してる。
「青葉くん」
「どうしたの?」
私が声をかけると、……いえ。近づくと、すぐに振り向いてくれた。
この笑顔が、他の人に向けられるようになるのかな。そう思うと、すごく辛い。
……いやいや。今は、伝言をしないと!
「理花が用事あるんだって。教室の前で待ってる」
「……わかった。大丈夫?」
「え?」
「元気ないから。テストうまくできなかった?」
いつも通り話しかけたんだけど。
なんで、青葉くんってこうやって気づいてくれるんだろう。
こういう気遣いできるところも、理花好きそうだな。
「……そうなの! 今回難しかったよね」
「鈴木でも難しかったなら、俺はもっとダメだ!」
「眞田は、誰がダメでもダメだろー」
「んだと! 俺、東雲よりは点数上だぞ!」
「あはは。眞田くん、東雲くん、ちょっと行ってくるね」
「おう。続きは後でな」
「行ってらー」
「よろしくね」
「……」
せっかく青葉くんと話せたのに、暗くなってちゃダメね。
私は、眞田くんたちと午後にあるテストの話を少しだけしてマリたちのところへ戻った。
そう言えば、なんか昼に用事があった気がするけど。忘れるくらいだから、きっとたいした用事じゃないのね。
午後のテストも頑張らないと。
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