08

一緒がいい

誰か、俺の聞き間違いだと言ってくれ……



 掃除の時間になった。


 俺は、東雲と教室の掃き掃除。ラッキーなことに、鈴木が教室外の窓拭きしてんだ。

 ……って!あいつ!青葉、ベランダの植木鉢に水やってんじゃん。代わってほしいわ。


「……て、…………」

「う……、なっ…………」


 ん?

 なんか2人で喋ってね?


 俺は窓側に移動して、掃き掃除するふりをしながら聞き耳を立てる。……断じて、盗み聞きではない。たまたま聞こえただけだ。


「青葉くん、今日は夜お仕事だよね」

「うん。22時から」


 2人は、掃除しながら視線は合わせずに会話をしている。注意して見ないと、話してるのわかんねえな。


 てかあいつ、夜仕事してんのか?

 もしかして、苦学生ってやつだったり?暑いのにセーター着てんのって、夏服買えないとか!?


「何するの?」

「今日は、シャンパンタワー作るらしい。セットの手伝いもお願いされてる」

「何それ!楽しそう」

「えー、グラス割れそうで怖い。注ぐのは楽しそうだけど、それは監督がやるだろうし」

「メイクはしないの?」

「するよ。ほら、本番中は指示あるまで動けないからその時やる感じ」

「なるほどね」


 ……!?

 え、は?……青葉って、ホストで働いてんのか!?しかも、本番って……。え、あいつ、メイクして仕事してんの?

 先生にバレたら、退学じゃんか。


「じゃあ、今日は難しい?」

「鈴木さんが良ければ寄りたいな」

「本当!?じゃあ、私の部屋で…………したいな」

「いいよ。前回…………中途半端だったから、今日は最後までやっちゃおうね」

「うん!買い物して……から、たくさんできるよ」


 ………………。


 はああああああ???!!??!!?

 待て待て待て待て。落ち着け、俺。


 え、何?

 よく聞こえなかったけど、鈴木と青葉って、そういう関係なのか?

 ……は?鈴木の部屋で何すんの!?前回中途半端って?今日は最後までって!?


 え、買い物ってゴムか?鈴木がゴム買ってきたってこと!?


「……嘘だろ」

「眞田ー、どうしたん?顔真っ青だけど」

「…………敗北感」

「は?なにが?」


 付き合ってねえって言ってたじゃん。

 勉強教えてもらってただけって。


 俺は、後ろから話しかけてきた東雲を無視して立ち尽くす。


「おーい」

「……夢だって言ってくれ」

「……?どうした、暑さでやられたんか?」


 ……鈴木、もしかして地味専?

 それとも、青葉、前髪上げたらめちゃくちゃイケメンとか?いやいや、それはないな。


 あーー!

 後で絶対問い詰める!!絶対な!!!



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