普通じゃなかったらしいです……



「青葉くん」

「!?」


 2限休み。

 自席に座る青葉くんに後ろから声をかけると、すごく驚いたように振り返ってきた。


「これ。昨日シャーペン忘れてたから」

「あ、ありがとう……」

「どうしたの?」


 朝、渡せば良かったかな。

 でも、思い出したのが2限途中だったから仕方ないよね。


 私は、何故かビクビクしてる青葉くんに話しかける。すると、


「……え、俺と話してて大丈夫?」


 と、小さな声が返ってきた。

 ……どういうこと?


「大丈夫って?ダメなの?」

「あ、いや。えっと……」

「なによ、変なの」


 その様子が面白くなった私が笑うと、青葉くん、下向いちゃった。本当、どうしたんだろ?


「あ、芯なかったから入れといたよ。HBね」

「……ありがとうございます」

「?」


 変なの。


 青葉くんの態度に「?」を浮かばせながら、私は席に戻る。

 ……と、ここで違和感に気付いた。


「……」

「……」

「……」

「……?」


 今までうるさかった教室が、静かになっていたの。その視線は、青葉くんと私に向いている。

 え、どうしたの?私の声、うるさかった?


「梓〜」


 困惑している私のところに、マリたちがやってきた。もちろん、ふみかもね。目は合わせてくれないけど、朝も「おはよう」って言えたわ。


「私、何かした?」


 マリが私に話しかけた辺りから、教室はざわめきを取り戻す。本当、なんだったの?


「何かしたって!梓が男子に話しかけるの珍しいじゃないの!」

「いつ青葉と仲良くなったの?」

「うわ。青葉、めっちゃ男子から睨まれてる。ウケる」

「……どういうこと?」


 確かに青葉くん、他の男子からの視線を集めてる。

 学校で話したこと、そういえばなかったよね。それが珍しかったんじゃないの?


 というか、青葉くんって他のクラスメイトと話してるところ見たことないな。友達居ないのかな。


「梓、自分が男子から人気あるの自覚した方がいいよ」

「へ?」


 なんて考えていると、マリが楽しそうにそんなことを言ってくる。

 私が人気あるわけないじゃないの。なんの取り柄もないただの女子高生よ。青葉くんみたいに、特別なことできないし。


「はあ、自覚なし!」

「あれだけ告白されてんだから、人気に決まってんじゃん」

「ファンクラブあるって噂だよ」

「普通の女子は、2週に1回の頻度で告白なんかされません!」


 そうなの?

 その頻度が普通だと思ってたわ。……なんて言うと、嫌味に聞こえるかな。これ、普通じゃなかったんだ。


「……別に、青葉くんとはそんなんじゃ」

「はーい、事情聴取しまーす」

「異議なーし!」

「徹底的にはいてもらいまーす」

「なんでよ!!」


 あ、ふみか笑ってる。よかった。


 じゃないわ!よくない!あ、いや、よかったんだけど。

 事情聴取って何よ!


「梓、男子の名前覚えないじゃん」

「そうそう。興味ないことには無関心だし!」

「青葉みたいなのが、好みなんだ。意外」

「……青葉くんとは友達で」

「梓可愛い〜、顔赤い!こりゃ、お昼休みにお話しないと!」

「あ……。ごめん、お昼先約あって」

「はいはい、青葉でしょ」

「違うっ!」


 断じて赤くなっていません!


 あ、でも、青葉くんとお昼食べたいな。

 中庭でメイクの話しながら。絶対楽しい。

 お弁当作るから、一緒に食べてくれないかな。……あ、でもさっきみたいに変な空気になっちゃうか。


「授業始めるぞー」


 ナイスタイミング!


 そこに、3限の先生がやってきた。

 茶化しに困っていた私は、ホッと一息をついてチラッと青葉くんの方を見る。


 すると、誰だっけ?……なんか、男子に話しかけられていた。

 よかった。そりゃあ、青葉くんにも男友達居るわよね。なんだか、安心したわ。


「とにかく、青葉くんとは友達なの!」

「はいはい。お友達ね!」

「うんうん、お友達ね」

「そうそう、お友達」

「本当だってば!!」


 これ、絶対信じてくれないパターンじゃないの!


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