視線の先には?



「……」


 青葉くん、またしても首が斜めになってる。


 なんか、クラスの人に私との関係を根掘り葉掘り聞かれたんだって。

 あの時話してた人、別に親しくもなんともないらしい。友達じゃなかったのね。


「なんか、ごめん」

「怖かった。鈴木さん、人気あるの自覚した方がいい……」

「し、知らなかったのよ」

「……はは。鈴木さんらしい」

「どうとでも言って……」


 青葉くん、なんか笑いが乾いてる。そんなに疲れたんだね、ごめん。


 私たちは、ふみかに指定された中庭へと向かっていた。……もちろん、教室出るタイミングずらしてね。

 1人で行けるって言ったのに、青葉くんってば過保護だな。


「勉強教えてもらったって言っといたから、話し合わせてね」

「……わかった」


 まさか、すっぴん姿見られたのきっかけで仲良くなったなんて言えないよね。……言わないでくれてありがとうって感じ。


「にしても、久しぶりにクラスの人と話した」

「もしかして、青葉くんってクラスに友達……」

「いるよ」

「あ、だよね」


 そうよね。流石に、クラスに話せる人いないと孤独すぎる。


「鈴木さん」

「…………」


 あ、これ聞いちゃいけないやつだ。


 青葉くん、今まで1人で学校生活送ってきたってこと?それって、すごく寂しくない?


「友達、作らないの?」

「うーん。目立ちたくない」

「あー。確かに、一緒にいる時間長いとピアスとか諸々バレそうだもんね」

「そう。高校生活は、問題なく過ごしたい……」

「……そうなのね」


 いけないいけない。

 友達作りなよ、とか私の考え押し付けるところだった。事情があるんだもん、良くないよね。


 私は、相槌を打ちながら青葉くんと一緒に中庭へ続く通路を歩いて行く。


 ……にしても、さっきから周りからの視線がものすごいわ。これも、私のせいなのかな。

 青葉くんは気付いてないから、このままにしておこう。問題起こしたくないって言ってるし。



***



「…………」


 俺には、その光景が不快だった。

 鈴木と親しそうに話す青葉。あいつ、何者だ?

 前からそんな仲良かったのか?


 俺から鈴木に声はかけるけど、鈴木から声かけられたことなんてねぇよ。羨ましいわ。


「眞田ー、定規貸して」

「ほい、5限で使うからちゃんと返せよ」

「え、5限で使うんだっけ?忘れたわ」


 自分でもよくわからないイライラをつのらせていると、後ろの後ろの席にいる東雲が話しかけてくる。

 

 こいつ、俺の後ろの席の篠田と同じく、忘れ物多いんだよな。「し」から始まる苗字のやつって、忘れ物するようにプログラムされてんのか?


「どんまい。他のクラスのやつから借りてきたら?」

「そうするわ。隣、数学あったよね」

「次数学だった気がする。終わってから借りてこいよ」

「ういー。あー、しくったー」


 青葉、スマホいじってんな。鈴木と連絡取ってたり?

 ……いやいや、そこまで親しくないって。過剰になんなよ、俺。


 鈴木は、誰にでも優しいんだよ。暗くて友達のいない青葉にも、ちゃんと平等に接してるだけ。あいつが特別なわけがない。

 そうだとも。俺とだって話してくれる。そうだ、そうだ。


「…………」


 あー!モヤモヤする!!


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