足りなかったのは、私の言葉
自ら傷つきに来る人はいない。
それに気づいた私は、青葉くんを困らせることをわかっていながら泣いてしまった。
「ど、どうしました?言葉、強かった?」
「……うぅ、違う。違う」
ここ最近、ずっと青葉くんを傷つけたことに罪悪感を抱いていた。
要も瑞季もあんなに喜んでいたのに、それを私が壊してしまった気がして。自分のせいで誰かが嫌な思いをしていたと思うと、自身が許せなくて。
謝った方が良いのか、でも、関わらない方が良いのか。マリたちとの会話で名前が出る度、教室で視界に青葉くんが入る度、あの視線をそらした日からしばらく悩んでいた。
そして、私は「忘れる」って選択肢をした。初めからなにもなかったことにして。
ズルくてごめんなさい。
青葉くんの言葉に安心して、泣き出してごめんなさい。
今日の私、瑞季たちと変わらないわ。子どもみたい……。
「誰に言われたか知りませんが、俺はそんな弱くないですよ。今日だって、声かけてくれて嬉しかった」
「……」
「むしろ、あの後の週明け、5限目居なかった時。鈴木さんが泣いてたのが気になって」
「……え?」
「メイク、朝と違ってたし、目元も赤かったし。それから、鈴木さん俺のこと避けてる気がしてずっと気になってたんです」
「あ……」
「俺は、そっちの方に傷つきましたけど」
そう言って、青葉くんは少しだけ怒ったような口調で話しかけてきた。なんで、朝とメイク違うってわかったんだろう?マリは元通りって言ってたのに。
「……ごめんなさい」
こんなことなら、初めから本人に直接聞けば良かった。
なんで、私は彼のことを避けてしまっていたんだろう。関係ないって割り切ってしまったんだろう。
「鈴木さん、とりあえず落ち着きましょう。2人が気づいたら心配しますよ。……オタマ、熱いでしょう。貸してください」
「……ふぇ、う」
「もらいますね。ほら、深呼吸して」
うずくまってしまった私に、青葉くんが話しかけてくれる。
手に持っていたオタマを渡すと、背中をさすってくれる。
そして、
「…………!?」
そのまま、青葉くんは泣き続けている私の身体をゆっくりと包み込んでくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます