知らない人……じゃなかったみたい

絶対知り合いじゃない!


 私は、その日もいつも通り双子と一緒にスーパーへ来た。

 ここ、高校から遠いからジャージで来れるんだ。間違っても、知り合いに会うことはないから気軽だわ。


「今日は、ハンバーグね」

「わーい!」

「ハンバーグ食べるっ!」


 本当、子どもってお肉料理好きよね。野菜も食べて欲しいわ。

 でも、うちのハンバーグは玉ねぎだけじゃなくてピーマンとかニンジンもみじん切りして入れちゃうんだ。そうすれば、瑞季たち食べるし。


「玉ねぎは家にあるから、ひき肉と牛乳買うよ」

「うん! 探す!」

「ぼくも!」


 いつもなら、合い挽き100グラム91円なんだけど今日は78円なの! 超お買い得!

 私たちは、お肉コーナーでひき肉を4パックカゴの中に入れる。今日2パック使って、残りは冷凍しておこう。


「おねえちゃん、牛乳!」

「あっち!」

「はいはい。行こうね」


 次は、牛乳!

 乳製品コーナーに向かうと、牛乳以外にも生クリームが安くなっていた。……たまには買っていいよね。

 他の人には言えないけど、みんな見てないところで生クリーム泡立てて食べるほど甘いものが好きなんだ。

 私は、牛乳に続いてカゴに入れるため生クリームに手を伸ばす。すると、


「あ、ごめんなさい」

「こっちこそ、すみません」

「い、いえ…………!?」


 隣に居た男性と、手が当たってしまった。その人も、生クリームを買おうとしてたみたい。


 謝ろうと顔をそちらに向けた私は、その人の格好に固まってしまう。


「…………」


 その男性、一言で表すと「ド派手」。


 だって、耳にこれでもか! ってほどのピアスつけてるし、髪だって男性にしては長めで後ろ縛りされてる。しかも、赤いインナーカラー入り。

 しかもしかも! 悔しいけど、私より脚がほっそい!!


「……あれ、鈴木さん?」

「!?」


 その容姿に見惚れていると、その男性はあろうことか私の苗字を口にしてきた。


 え!? 誰!?

 ……え、私のことだよね。振り向いて後ろを確認したけど、誰もいない。


「……えっと、鈴木ですけど」

「すずきです!」

「こんにちは!」

「兄弟?……こんにちは、元気だね」


 男性は、双子の挨拶に、腰をかがめて笑顔で返事をしている。なんだか、子ども慣れしてる感じだわ。誰だろう。

 高校の人? でも、こんな大人びた人知らないし。近所の人でもない。私、部活やってないから他の学年とか科と交流ないし。


 私の隣では、褒められて嬉しいのかニコニコする双子が。それを見た男性は、2人の頭を撫でている。……本当、子ども慣れしてるわね。


「え、えっと……」

「あ!鈴木さんごめんなさい、バイトの途中で」

「あ、そ、そうなんですか」

「じゃあ、また学校で」

「は、はい……」


 ってことは、高校生!?

 いやいや、若くて大学生でしょ。もしかして、先生とか?


 唖然とした私を置いて、その男性は生クリームを2つ手に取るとそのままレジの方へと行ってしまった。


「……結局、誰だったの?」


 私は、すっぴんジャージでいることを忘れて立ち尽くす。


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